(452)探り
タッシュが持ち込みゼシューが無駄に起動してしまった道具・・・太古の道具と断定してもおかしくない程に悪い方向に効果を発揮していたのだが、今回の要求は人一人に対しての効果があれば良いので練成にそう大きな難題はないだろうと安易に判断している国王ステヴァン。
当然自ら練成する技術も無ければ知識も無く、国家に所属している者に作業させれば良いと気楽に考えている。
「ゼシューはいるか?」
本当に保険の意味もあって学校内部で行動しているはずのミルバとダイヤジャック、ついでにロイがどのような行動を起こすのかを監視させるとともに、場合によっては立場を使って教官に練成を指示しようとしている。
直にゼシューがこの場に到着し、ミルバやダイヤジャックが対抗馬である事に加えて民にもこの依頼に関する情報が漏れている事を含めてある程度の情報が開示される。
「全て理解しました、陛下。このゼシューの力があればミルバ程度の情報を得る事も容易ければ、無能な教官に作業をさせる事も容易です!」
「あまり公に行動すると民にも知られているから、後々問題になる可能性が捨てきれない。そこを踏まえて行動する様に」
無駄な自信だが戦力的な実力は何故か跳ね上がったままなので、余り刺激しても良い事はないと理解しているのか国王ステヴァンはあくまで保険だと割り切って退室させる。
続いて呼ばれたのは国家に所属している錬金術士で、機能についてゼシューに対して行った説明と全く同じ事を口にした際に質問が出る。
「陛下。魔力を吸収又は消費させる道具である事は理解しましたが、その量に関してはどの程度になるのでしょうか?装着している段階で常に機能を発揮する品となると、吸収か消費かは別にしても量によっては比較的早く寿命を迎えてしまいます」
実際に練成する側としては詳細な情報を得る必要があるので無暗にできるとは言えずにある程度条件を詰めに来ているのだが、国王としてはその辺りは全く知識がないまま安請け合いしてしまった事から適当に回答する。
「人が使用すると言っていたからな。大した量ではないだろう。逆に一月程度継続してある程度の量を消費する道具として作っておけ!」
具体的な数値が何もないので作る方としては非常に困ってしまうのだがここで更に質問を投げかけても具体的な回答を得られるわけでもないばかりか機嫌が悪くなる可能性が高い事を知っているので、体内の魔力を消費させる方法は如何様にでもできる事から仮定の元で作成を始める事にしている。
「承知しました。魔力吸収は保管させる機能を付与する必要があり、道具としても寿命が速くなる事から消費させる方向で作成を行います」
消費と言う事は魔力を何らかの力に変換する事になるので、例えば常に身体強化をさせる事や無駄に水やらを排出する事も可能になる。
装備者の生活環境だけではなく性別や年齢も不明である事から、差し当たり当人に大きな害がないと思われる身体強化に吸収した魔力を使用する方向で決定される。
こうして一週間時間が空いたロロニアドは宿でロイとダイヤジャック、そしてミルバと食事をしながら現状の報告をしている。
「・・・と言う事で、何やら道具の練成には自信がありそうでした」
「ふははは、あの愚王が道具に関する知識などある訳がないではないか?どの道中途半端な情報を部下に丸投げして何となくそれらしい機能を持つ品を作るだけだぞ?」
「残念だけどジャッ君の言う通りだよね。私としても同意せざるを得ない状況です、ロロニアドさん。確かに国家お抱えの人材には素晴らしい技術を持っている人もいるでしょうが、指示をする側が微妙ですから過度な期待はしない方が良いですよ?」
ミルバの立ち位置もしっかりと理解しており、その当人からこのように言われているので・・・確かに謁見の場でのやり取りを見れば納得できてしまう。
「ここにいたか!お前等、少し話しを聞かせてもらおうか?そっちの・・・お前もいたのか
ロロニアド。陛下に道具の依頼をしたようだな・・・お前まで居たのか。おい、ミルバはロロニアドの件、タッシュに依頼をするのか?」
突然なだれ込んできたのはゼシューで、本来学校内部である意味秘密裏に調査する事を提言されていたはずが最近の側近や自らを支持していた面々の態度がそっけない事もあり、直接的に情報を得る方針に変更した結果がこれだ。
散々痛い目を見ているのだが、想像以上に自らの力が上昇した事を唯一の拠り所として暴挙に出ている。
当然この場には肥溜め浸漬の刑に処した人物の身内であるダイヤジャックがいるので一瞬怯むのだが、当事者がいない上に第三者の視線もあるので普通の質問程度で暴挙には出ないだろうと考えた。
「私はまだ何も決めていないけど?」
かなり余裕の態度である事から過去のゼシューであれば一気に切れ散らかして暴れかねなかったのだが、ここにはダイヤジャックがいる事から大人しい。
「フン。その余裕、何時までもつかな?」
何をしに来たのか分からずに去っていくゼシューの背中を見送る一行は誰ともなく食事を再開しているのだが、この時を境にゼシューは暫く消息不明となる。
「何故余を拉致した?それに・・・タッシュがいるのは何故だ?」
ここは地下の国で本来の通路は完全に破壊されているのだが、幾ら破壊されてもそもそも通路を作れる技術を持っているので再度作成する事は容易である事から再び地上の異なる場所と繋げて暗躍し、ゼシューとタッシュを拉致している。
ゼシューの言う通りに何故タッシュがこの場にいるのかと言うと・・・地上の面々からの手痛い仕置きは道具による強化だと誤解ながらも確信しており、その道具について短時間で調査をした結果タッシュが最も優れた技術を持ち実績もあると知ったからだ。
ゼシューに関しては地上の新たな情報を得るには顔見知りの方が楽だと言う一点で拉致しており、それ以外に何かを期待したわけではない。




