(449)商人と接触
「始めまして。お食事中に突然申し訳ありません。私はロロニアド・・・しがない商人をしておりますが、少々お時間宜しいでしょうか?」
デザートを敢えてロイとミルバが会話している机の上に置きながら、腰を低くして話しかけているロロニアド。
突然の来訪者に驚くミルバだが、ロイは害意の無い第三者が近接している事だけは事前にスペードキングから報告を受けているので平然としている。
とは言え突然どの様な理由で?と言う気持ちは両者ともに思っているので言葉が詰まってしまうのだが、その隙にロロニアドは再び口を開く。
「少々お話しが聞こえてしまいまして、失礼とは存じますが貴方様は王族の方ではないでしょうか?そしてそちらのお方はその御友人。正しいですか?」
「は、はい。私はミルバと言います。一応第一王子ではありますが、王位継承は厳しい状況になっていると考えています」
何故か素直に返事をしてしまうミルバだが、豪商なだけあって人との会話に関しては非常に優れているので答え易い様に問いかけている結果だ。
「俺はロイです。ミルバ君とは学校の友人です」
「おぉ、そうでしたか。友人同士のお食事中にお邪魔して申し訳ありませんが、少しだけお時間を頂けませんか?」
ミルバの王位継承に関する話しを聞けば彼の立ち位置は把握できているはずで、その上で相変わらず腰が低い事から悪い感じはしないのでロイとミルバは互いを見て頷いている。
「わかりました。どうぞお座りください。どの様なお話しが聞きたいのでしょうか?恐らく・・・私の事を詳しく知らない上に商人と仰っていたので、他国の方ですよね?一応前もってお伝えしておきますが、今の私を相手にしても良い商いはできませんよ?」
ミルバが事実を告げる事で先制攻撃をしているのだが、ロロニアドとしては冷静な対応だと感じているので逆にミルバの能力の高さを一段高く見積る必要があると感じている。
「ご指摘の通りに他国・・・ご存じかは分かりませんが、ハロゲン連邦から来ております。このミューゼ王国の錬金技術の高さを肌で感じており、その辺りに関して商売をさせて頂こうと伺っているのです」
「その様子ですと、陛下とは既に面会後だと見受けられますね?合っていますか?」
高速思考の影響か第一王子の自分の立ち位置を理解して尚態度に変化がなく、極めて冷静なロロニアドを見て口にしていた通りに商売に関してはある程度話しを進めていると判断している。
道具自体は大半がタッシュ作成になり、現時点でタッシュは表に出てこないので交渉相手は限られる事から国王と接触済みだと判断している。
「流石の御慧眼です!ステヴァン陛下との面会は既に実施済みでして、ご挨拶として宝飾品を献上させて頂いたところです」
調査するまでも無く兄弟の仲は良くないと理解できるのでここでも敢えてゼシューの名前は出さずにいるロロニアドと、一方のミルバも配慮してくれている事は理解できているので・・・この場で状況があまり良く分かっていないのはロイだけになる。
「その結果の手応えについてお伺いしても大丈夫ですか?」
ロロニアドが相当やり手に見えるので、仮に国王との交渉が上手く行ってしまうと今後魔力生成の道具に関しても無理な要求をしかねないと思ったミルバは情報を得ようとする。
「そうですね。手始めにご挨拶をさせて頂いただけですので現時点で明確な回答は出来かねますが、悪い印象をお持ちではなかったと思います」
益を横取りするでもなく単純に教官達に迷惑が掛かってしまう事を危惧しただけなので、一先ず問題はなさそうだと安堵したミルバ。
「わかりました。ありがとうございます。ロロニアドさんから見てもこの国の道具に関しては認めて頂けているようですが、貴国ではどの様な道具が使用されていますか?」
「あ、俺もそこは興味があるよミルバ君!正直この国の状況しか知らないから、教えて頂けると助かります!」
ロイも興味のある話しに移行したので介入しており、ロロニアドもこの席に敢えて来た目的を達成する為に口を開く。
「そうですね。私の国では道具の故障が多く、そして機能もこの国の品と比較するまでも無く悪いですね。何と言いますか、燃費が悪い上に効率も悪い。道具の機能によっては無い方が良いケースもある程です」
二人が興味を示している事をさり気なく確認しながら、本題に移行していく。
「しかし燃費が悪くとも、資源の無駄になってしまうかもしれませんが道具の起動に必要な魔力生成の道具があれば大きな変化が見える事は間違いありません。勿論道具自体を改善する必要があるのですが・・・しかしこの道具は素晴らしいですね」
入手済みの小さな球体の道具を敢えて机の上に取り出すロロニアド。
「自国に持ち帰っても直接つなぐことはできない可能性が高いですが、接続部分の変更程度であれば改修する事は出来るかもしれません。この辺りについて皆様は何か知識がおありですか?」
「申し訳ないですが、私にはよくわかりません。ロイ君はどう?」
魔力生成の道具は起動したい道具に接続する必要があるので、ミューゼ王国で流通している道具に合致する様に作成されている。
他国の規格がわからないながらも高い確率で直接つなげることは不可能である事から、実際に接続するにはその部分を改修する必要がある。
当然部分的にはなるが道具を改修する事になるので、その行動自体が道具の機能を損なう可能性が否定できずに問いかけている・・・と言う体で、製作者にまで接触できればと思っているロロニアド。
「俺もわからない・・・かな。ジャッ君であれば知識が豊富だから、その程度は教えてくれると思うけど?」




