(445)到着
王が必死になっている様を見て少しだけ鬱憤が晴れた二人のカードの者達。
「ふはははは。随分と必死だな。ホレ、早くしないといよいよだぞ?間もなく天井のシミ・・・いや、地面のシミになるのか?汚らしいまま散るのがお前の最後になりそうだな!」
「その箱はジャッ君の大切な品ですからね。しっかりと無傷で持ち帰ってくださいよ?」
勝手な事を口にして煽りながら王の行動を見て笑顔になっている二人だが、どうあっても王の力では分離する事が出来ずにその時がやってくる。
「ウ・・・ウワァー」
一際大きな音がして間違いなく崩落すると感じた王は今いる場所から入口や出口に向かっても間に合わないと理解しているので、蹲って頭を抱えて悲鳴を上げている。
そこで再び浮遊感を感じた直後に床に叩きつけられると、痛みは感じているが逆に生きている実感を得て安堵している。
「自称王よ。無駄に慌てふためく無様な様、随分と楽しませてもらった。これで理解できたか?お前がどの様な策を練ろうが構わんが、実際に被害にあうのはお前自身だぞ?」
何故全てを把握しているのか分からないが地上の存在が持っている不思議な力・・・所謂道具によるものだろうと誤認しているのだが、対処できる術がないので痛む体に鞭を打って歩き出す。
「つまらんな。もう少し反撃でもするのかと思ったのだが、あのレベルではここが限界か?」
「そうですね。正直飽きてきたので、さっさと済ませて戻りましょう」
カードの力があれば関係ないが一般的な感覚で言えば経路が崩落して地上に戻れる状態にはないので、ここまで来てしまえば個人で対応するのではなく国に戻りある程度二人を滞在させた上で全戦力をぶつける事にした王。
屈辱の時間も間もなく終わると思えば何とか堪えられるのだが、王は一つ大切な事を忘れている。
カードの者達の実力を含めると二つになるのだが、実際に地上侵攻しようとして撃退されて一人取り残されたのが現状であり、王自身を囮にするかのようにして逃げ帰った存在がいる事を失念している。
彼等は地上の存在は手に負えない悪の巣窟を構成する一人と認識しているので、今の状況で王が何を言おうが戦力としてカウントする事は出来ないだろう。
王としては道中の罠ではなく自国に引き入れて・・・と、実行可能かは別にして方針変更をしたので非常に大人しく、罠もしっかりと事前に解除している為に何も障害無く地下の国に向かっている。
「随分と歩くのが遅いですね。それに匂いも更に惨くなっていませんか?ここには淑女がいるのですよ?全く・・・それで王を名乗る。自称であっても恥ずかしくないですか?身の程を知った方が良いですね」
匂いは誰のせいだ!と言いたいのだが、ここで反撃してもより一層帰国までの道のりに困難が増えると理解したので悔しそうにしながらも謝罪している王。
「も、申し訳・・・ない。一国の王としてあるまじき行動だった!」
「あら?本当に珍しく殊勝な態度ではないですか?心底気持ち悪いですね。変な物でも口にしましたか?っと、そうでした。雑菌だらけの液体を口にしていましたね?その影響かもしれませんが、良い変化なので感謝して頂きたいですね」
言いたくも無い謝罪をしたのだが理不尽な感謝まで要求されるので、流石に悔しさから黙り込んでしまうとダイヤジャックが助け舟を出したかに見えた。
「ハートクィーンよ。その程度で今は勘弁してやったらどうだろうか?その内泣き出してしまうかもしれないぞ?」
見えただけでこちらも相当バカにしているのは間違いなく、これ以上は自分のプライドが完全に折れてしまうと思ったのか黙り込んで進んでいる王だが疲労と屈辱で進行速度は非常に遅い。
道中に設置している致死性の罠解除にも手間が必要になるのである程度遅くなるのは仕方がないのだが、そこを把握しながらも許容する事はない二人。
「あまりに愚図なので見ていられん!もうお前は後ろに下がっていろ!これからは自分が解除もしてやる!」
罠の設置場所だけではなく順路も教えていないのだが、何故かズンズンと先行し始めるダイヤジャックとハートクィーン。
仮に異なる道に向かうか罠の解除を失敗していれば儲けものだと思いながら追随している王だが、全ての道順は合っているし罠の解除も適切である事から思い通りに行かないとイライラしている。
「一体どのような道具を使用すればこの状況になるのだ。逆に・・・その道具を研究できれば防衛力だけではなく攻撃力も上昇するに違いない」
受けた屈辱以上の益を得られると自分を強制的に納得させながら移動し、やがて目的地に到着する。
「ほー。自称王が統治している国とは思えない程の素晴らしい景色だな」
「そうですね。それにこの石・・・少々頂いて行きますが、そこそこの素材ではないですか?」
「む?確かにその様だな。一応自分の方でもある程度保管しておくことにしよう」
地下の淀んだ魔力の影響を全く受けていないように見える二人が勝手に話し込んでいる中で、どの様にこの場に留まらせるのが良いのか考えている王なのだが・・・ダイヤジャックとハートクィーンとしては目的を達成したので後は帰るだけ。
「おい、そこの自称王よ。手間暇かけて自分達が送り届けてやったのだ。今回の罰によって身の程を知っただろう?今後も余計な事は考えない事だな」
「地上で異変があり貴方の関与が判明した瞬間、この国を滅ぼしますので悪しからず!」
最後の最後で恐ろしい事を告げられると恐怖から一瞬目をつぶってしまうのだが、再び視線を戻すと既に二人は存在していなかった。




