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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(443)移動

 息も絶え絶えになっている王への配慮など不要なので、刑が終了した今この場にいる必要がない事から四つん這いになっている王に移動すると告げるハートクィーン。


 残念ながら直に動ける状態にはならないのだが、そこも含めて罰だと思っているのか容赦がない。


「遅れた場合は再度湯船に浸かって頂きますからね?希望があれば今すぐにでも再開してあげますよ?温度調節も可能です。温度を上げると匂いも増しますが、それも経験です!」


 脅しを加えた話しを笑顔で告げた後にダイヤジャックを伴いさっさと行ってしまうので、王は何とか食らいつく様に震える足に活を入れて追随する。


 ここからは地下の国に続く通路に向かうのだが、一応地上を移動する為に匂いや雑菌を撒き散らしては迷惑になる可能性を考慮して魔法で処理している。


 森に到着すると既に王はふらつきが抑えられなくなっており、正直目も虚ろで嘔吐物にまみれている状況になっている。


「では先導して頂けますか?」


 多数の罠がある事は把握しているし全ての罠を起動しようが全く問題なく進めるのだが、折角ならば強引に進むのではなく地下の国の技術を把握する為に王の進行速度に合わせて移動しつつ罠を観察しようと思っている。


 これまでの王の態度から素直に地下の国に向かうとは思えないので、王自身に害はないがハートクィーンやダイヤジャックに対してのみ害がある罠を起動するのは間違いないと思っており、その辺りの行動についても知識として得るつもりだ。


 侵入直後は周囲の森と変化はなく道など無いのだが、王は決まった順路を進んでいる。


 実は走って逃亡すれば追随できなくなる可能性があると考えていたのだが、今の自分の状態では振り切る事は不可能だと感じているので実行していない。


「なれば・・・あの場所が最も適切か?」


 侵入者対策は万全に万全を期しているので今の状況の様に止む無く侵入者と同行せざるを得ないケースも考えて罠が仕掛けられているが、その程度はハートクィーンとダイヤジャックは既に看破している。


「ジャッ君?道具に関しては貴方の方が詳しいでしょう?あちらにはどの様な仕掛けがあるのでしょうか?」


 罠は仕掛けによって起動し、起動に必要な仕掛けが道具による物なのか魔力なのかは不明だがその辺りも含めてハートクィーンよりは遥かに知識があるダイヤジャックに問いかけている。


「どうやら地下で生活している面々の魔力がトリガーになるようだな。魔力を感知してその存在が一定距離移動した直後に起動開始する。実際の崩落までは起動後10分程度だな」


 現地に赴かず共調査場所がわかればある程度の距離であっても全て把握する事が出来るので、理解した事実を告げている。


「起動は分かりましたが、具体的にはどの様になるのでしょうか?」


「恐らく追跡者の抹消と対策の時間を稼ぐために暫く道を潰す事が目的なのだろう。天井が完全に崩落するはずだ」


「・・・これも捻りがないですね。全く面白くないですが、その辺りどう思いますか?」


 どう思うと言われても特に何も感想等ないダイヤジャックだが、ジャッ君として行動をしながらも格上である事から無下には出来ずに普通に答える。


「確かに指摘の通りだな。自称王にもう少し危機感を持たせる様に、敢えてこちらが配慮して様々な経験をさせてやるのはどうだろうか?」


 これから追随している二人を始末しようと最後の気力を振り絞って移動している王にこの会話は拾われておらず、秘策と考えている新設された罠すら看破されているとは夢にも思っていない。


「面白そうですね。どうするのでしょうか?ここまで無駄な作業を行う羽目になったのですから、少しくらいは楽しませてもらっても罰は当たりません。仮に王の四肢がもげても私の方でしっかりと対処しますので、宜しくお願いしますね?」


 頭脳を使って作戦を考えるのもダイヤ部隊の方が優れている事は明白なので期待に満ちた目で普通ではあり得ない事を平然と告げているハートクィーンと、同じ感性なので違和感なく受け入れるダイヤジャック。


「そもそも自称王が通過して離脱しなければ罠は起動しない。そこに大きな油断がある。つまり・・・起動する状況であの男だけを戻すのはどうだろうか?」


「成程!大賛成です。あの程度の罰では少々不足しているかと考えていましたので、物理的な痛みや恐怖を与える必要がありますよね」


 そうこうしている内にいよいよその場所に到着したので、罠の起動をキャンセルする措置を取らずに逸る気持ちを抑えて王はこう告げる。


「小さくはあるがこの空間が休憩場所になっている。これ以降は罠が多くあるので事前に解除してくる。少しここで待っていろ」


 こう告げれば普通であれば言われた通りに休憩するはずなので、空間から出た瞬間に全速で移動して地下の国に戻り逆侵攻の準備を整えようと思っている王。


「ジャッ君、お願いしますよ?私は真面に会話をするのも疲れました。あの程度の実力で地上に粉を掛けようとするとは井の中の蛙も良い所です」


 王の言葉がこの場に二人を留め置く事は理解しているハートクィーンだが、疲労困憊で休憩が必要なのは王だけの状況になっている事から口にして良い内容ではないだろうと心底呆れている為、多少投げやりになっている。


「王とか抜かすそこの臭い奴!解除程度は自分でもできるので配慮は不要だ。それに自分達は全く疲れていないのでな。早速向かうぞ!」


 ダイヤジャックもハートクィーンと同じ事を思っているので真面に対応する事も面倒だと言わんばかりに、提案を切って捨てて自らズンズン進みだす。


 王としては思惑が外れたのだが罠はまだあるので、警戒させない様に黙ってついて行く。


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