(442)執行
地下の王であっても地上と同じような施設があるのか肥溜めに関しては理解しており、匂いや環境からこの場所がどのような場所なのかを明確に理解したようだ。
「こ、このような場所に連れてきて何をするつもりだ!」
罰が執行される事だけはハートクィーンの言葉からは理解できるのだが、この場で行われる罰について内容が良く分からずに非常に不安になっている。
「貴方はお風呂に入った事がありますか?」
突如として訳の分からない事を言われてしまうのだが、王であるが故に普通の民以上に良い環境で生活できる事から入浴も相当豪華な湯船でゆっくりと楽しむ事が出来る環境にある。
「王と言う立場である以上は当然だ。だがその事に何が関係あるのだ?」
得体の知れない不安に押し潰されそうになるので敢えて強気に出ているのだろうが、ハートクィーンは質問に答えるつもりがないのか全く意に介さずに自ら知りたい事を連続で問いかける。
「湯舟にしっかりと浸かるのは素晴らしい事ですからね。その程度であれば理解している事がわかりました。何時もどの程度の時間浸かっているのでしょうか?」
全く成立していない会話だが周囲の匂いにもやられているので質問の真の意味を考える余裕がない事から、ありのままを答えている。
「その時の状況にもよるが20分程度だろう。だから、ここで何をするつもりだ!おぇ」
「そうですか。20分ですか。その程度ではゆっくりしているとは言い難いですね。当然体も洗い、洗髪もしっかりとするのですよね?」
「う・・・おぇ・・・そうだ」
何をどう言おうが自らの質問には全く答える気がないと漸く理解したのか、それならば少しでも会話を少なくして余計な呼吸をしない方が匂いに対して防御できると今更ながら考えた王。
「当然貴方程度でも王ともなればお付きの者がしっかりとお世話をする。私があのお方に何時かはさせて頂けると信じているのですが・・・コホン。使用人が入浴についても対応していると言う事で良いですね?」
部分的に本当に訳の分からない事を言われたのだが、事実なので黙って肯定する。
「わかりました。それでは時間がもったいないですから早速始めましょう。あっ、服はそのままで結構ですよ?汚らしい体等見たくもありませんし、無駄に豪華なその服に関しても罰の対象に入っていますので」
更に訳が分からないのだが、何故か突然体が宙に浮く。
これは周囲の風を魔法で操作して王を浮き上がらせているのだが、熟練の域に達している存在でも王だけをこのような緻密な制御で浮き上がらせる事などできはしない。
「な・・・何をするのだ!おい!王に対してこの暴挙!我らが国家と国際問題を起こしたいのか!最終的には戦争だぞ!聞け!おぇ・・・おい!!」
全く手も足も出ない状況に陥っているのでこの暴言は最も口にしてはいけない内容なのだが、罰の執行に時間がかかり過ぎたと反省しているハートクィーンはどの道地上への通路も潰すので戦争など起きないと理解している為か無反応。
軽く空中に浮きながらも体が拘束されているわけではないので藻掻けるのだが、状況に変化はなく徐々に肥溜めの上に移動する。
「おい、おい!!待て!待ってくれ!!まさか・・・知っているだろうがこれは肥溜めだ!ありとあらゆる汚物がある場所だぞ!当然雑菌も多い!おい!」
「あら?少しは真面な知識をお持ちのようですね。雑菌ですか・・・そこに最も悪さをする巨大な菌を加えるのですから問題は有りませんよ?」
「あり得ない事だと思うが、敢えて聞く!その巨大な菌とは・・・」
「当然貴方の事ですね。そこにゆっくりと20分でしたか?浸かって下さい。当然頭髪に関してもしっかりと対処させて頂きますので、貴方が何かをする必要は一切ありませんよ?これは特別待遇です!」
これ以上押し問答をしては進まないと思ったのか、未だに喚き続けている王を完全に無視して徐々に浸漬させている。
これも風を利用しているのだが、浸漬後も首から上だけが肥溜めから出る状態を維持し続けられるのがカードの実力だ。
暴れれば暴れる程波打つので、口や鼻から汚物が流入してくることに気が付いた王は生気の抜けた表情になり大人しくなっている。
「面白くありませんね。それではしっかりと体を洗いましょう!」
藻掻く様を見て留飲を下げていたハートクィーンだが、大人しくなってしまった事で面白みが無くなったと次のステップに移る。
当然顔や頭髪を含めて汚物を掛けて強制的にこすりつけており、流石に大人しくなっていた王も言葉にならない声を発して蠢いている。
「フフフ。素敵なハーモニーですね。正にこの場所に相応しい程に醜い王が身の丈に合った待遇を受けている。はい!最後は全身を解す意味でもしっかりと頭の上まで湯船につかるのですよ?わかりますか?潜りますよ?」
敢えてこれから全身を浸漬させると告げているので親切な対応だと自画自賛しているハートクィーンだが、王はそれどころではないので全く聞こえていない。
「モガ・・・ゲホ・・・モガガガ!」
突然息が吸えない程に体が沈んだので慌てふためいているのだが、少々であれば命に別状はないと知っているのかハートクィーンは容赦なく刑を執行した。
「オォエェー・・・グオェー・・・」
「これで浸漬の刑は終了として差し上げます。それでは早速向かいましょう!」




