(440)王以外撤退
地下の世界の王であってもカードの者達による意思疎通状況など分かる訳も無く、当然想像もできないので勝手な理論を振りかざして娘を連れ去ったと確信している。
正直娘がどうなろうが知った事ではなく同行していた存在は間もなく行動不能になるはずだと確信しているのだが、逆に言えばこの場に残っている存在達の戦力低下が一切見込めずに今後の作戦に支障をきたす。
事前情報では一人だけが道具を持って有り得ない強さを誇示したと聞いており、その情報を基に作戦を実行したのだが現実は非常に厳しい。
「娘を拉致するような存在が偉そうな事を言うな!」
「娘・・・ですか。それでは自称父親の貴方に質問です。貴方が言う娘の好物は何ですか?」
突然ハートクィーンからこのような事を言われてしまうが、何と答えようが証明する手段がないと思っているので何故このような回答をしなくてはならないのかと言う不満はありながらも回答する。
「肉だ!」
「・・・馬鹿にしていますねぇ。少しの調教で済ませてあげようと思いましたが、今の回答で考えが変わりましたよ」
余りの豹変に保身に意識が全振りされてしまう王と、もう地上はどうでも良いので地下に戻って大人しく過ごしたいと思っている使者を含めた侵攻組。
「ま、待ってくれ!何故馬鹿にしていると思うのだ!事実を伝えて・・・」
「煩いですよ。黙りなさい!」
ダイヤクィーンは王女を落ち着かせるために一般的な話しをしており、その中で好物についても情報を得ていた事から絶対に正解を口にする事は無いと思いながらも質問した結果・・・ハートクィーンの予想以上にふざけた回答をされた事から怒りが増してしまい、強制的に首を掴まれて持ち上げられているので言葉が続かない王。
「ハートクィーンに言われず共、何も話せないのではないか・・・と自分は思うぞ?」
切れているハートクィーンに正面から文句を言うと流れ弾を被弾する可能性が高い事から及び腰になりつつも、このままでは次になぜ黙っているのかと理不尽な文句を言いながら王と呼ばれている人物を消滅させかねないと感じたダイヤジャックが嫌々介入している。
当然正論を述べているのだが、少々歯切れが悪いのはハートクィーンからの理不尽な攻撃を恐れていた為だ。
「・・・そうですね。ジャッ君からの指摘である事には少々納得が出来ませんが、今回は譲歩しましょう」
ドサッっと音がした直後に王が咽ており、最近似たような事象を耳にした事があると漠然と思っているダイヤジャックは成り行きを見守っている。
少し冷静になったのでこれ以上の障害沙汰は起こらないだろうと安堵しているのだが、一方で何故自分がこれだけ精神的苦痛を味あわなければならないのかと言う不満もある。
そのダイヤジャックの目の間で、咽ている王の頭を容赦なく踏みつけているハートクィーン。
「この男では話しになりませんからね。使者と呼ばれている貴方。私は、私達は戦力を増強する道具など不要なのです。そこは理解していますね?」
証明する手立てはないが現実的に手も足も出ない程の強者である事は明白である為に反論する余地はなく、首を上下に動かしている使者。
「漸く理解した様ですね。無駄に時間がかかり過ぎではないですか?」
そう言われても・・・と言う思いはあるが何がきっかけでハートクィーンが豹変するのか不明な為、刺激を避けるべきだとの判断から下を向いてしまう使者達。
「少し前にこの場から去ったダイヤクィーンから貴方は警告を受けていたはずですね。次はない・・・と。ですが私も鬼ではありません。同行させられていた王女をこちらに引き渡すのであれば、今回に限り見逃してあげましょう」
正直王女がどうなろうが知った事ではないし、仮にこのまま地上で王女が普通に生活をするのであれば時と共に地上の魔力は枯渇して目の前のハートクィーンもやがて行動不能に陥ると信じている事から異論はない。
寧ろ願ったり叶ったりである事から肯定の意を示そうとした所で、ハートクィーンの言葉に阻害される。
「同時にこの男も預かります。地下の世界に対する知識が私達にはありませんので、その辺りを教えて頂こうと思います。ある程度知識を得る事が出来た段階でお返ししますよ」
ここで使者の男は再び欲が出る。そう・・・自分が地下の世界の王になると言う欲望であり、このまま地上で王が生活をするのであれば他の面々と同様にやがては王女の特殊体質による魔力枯渇か得体の知れないハートクィーン達の機嫌を損ねて存在が消える可能性が高いと思っている。
「理解した。王であれば相当な知識を有しているので、しっかりと地下の世界に対する情報を知る事が出来るだろう」
知識を伝えるのにも相当な時間が必要になるので、ここで王が不要だと明言するよりも長い時間地上で生活する事による魔力枯渇か機嫌を損ねた代償かは判断できないが自然な流れで王を地上に放逐する方が有用だと判断した使者。
「ご理解いただけて何よりです。当然この通路はこの男を送り届けた後に完全に潰します。それではさっさと消えてください!」
誰しもが地上は侵攻してはならない魔の巣窟だと思っているので我先にと秘密の通路に殺到しており、動けずに周囲の状況も確認できない王はハートクィーンと使者の言葉は聞こえてしまうので命の危険だけは無いと少々安堵している。
やがて逃避による騒音が消えると静寂が訪れ、同時に後頭部からの圧も消えた事から起き上がり周囲を確認する王はクィーン三人とダイヤジャックに四方を囲まれている事実を知る。
「じ、自分をどうするつもりだ!知識云々と言っていたが、あれはまやかしか!地上の小汚い人物がしそうなことだ!」




