(439)理不尽
理不尽な攻撃を受ける羽目になったダイヤジャックなので実は少し機嫌が悪く、反論してくる小者の対応が面倒くさくなり始めているので回答は非常に雑だ。
結果的には王自身もクィーンズに吹き飛ばされてみればその力を理解すると極論に振れており、確かに力は理解できても道具の有無については確認できないので何も疑問に答えられていない。
その程度は把握しながらも説明が面倒になっているので事実だけを述べており、これ以上何かを言おうものなら本当にクィーンズに吹き飛ばされれば良いと思っていた。
結構投げやりになっており、その程度は理解できるクィーンズなので仕方なないとハートクィーンがダイヤジャックに変わって対応を始める。
「貴方は道具がどのような物か理解していない事は分かっています。ですから一つ現物をお見せしましょう」
ハートクィーンは収納魔法から道具を一つ取り出しただけなのだが、王を始めとした地下の世界に住む住民からしてみれば何処から出したのか不明な品が突如として目の前に現れた事になる。
これだけでもあり得ない程の脅威だと感じているのだが、ハートクィーンは相手の状況など知った事ではないので説明を続けている。
「例えばこの道具ですが、今の皆さんに非常に有用な道具になります。私の質問に嘘偽りなく答える事が出来れば青く光り、嘘や偽りがあれば赤く光ります。早速試してみましょう」
「ま、待て!そもそも攻撃に必要な道具を持っているのではないのか?何故突然このような道具を出したのだ!それにその様な機能・・・信用する事は出来ない。お前が勝手に操作する事も可能だろうが!」
「・・・煩いですね!」
ハートクィーンは真実だけを述べているのだが、唾を飛ばす勢いで勝手な事を言っている様にしか聞こえないので一気に機嫌が悪くなっている。
見た目きゃしゃで美しくも、有り得ない力を持っている気配は継続しているばかりか怒気まで感じてしまったので一気に大人しくなるが小声で文句は継続している。
「その有り得ない気配を発している道具を見せろと言っているのだ」
「はぁ・・・この程度の力は道具に頼らず共どうにでもなるでしょう?この程度で道具に頼る必要があるのですか?」
これまた真実を述べているのだが、王としては相当バカにしていると感じているので強者の気配を消したハートクィーンに対して一気に沸騰してしまう。
「ば、バカにしているのか!自分が指摘した瞬間に気配が消えた。道具の起動を停止したのだろう?小癪な真似をするな!」
「面倒ですね。もう説明の必要も無いのではないですか?」
「は?何を言っている!」
突然ハートクィーンが誰かに問いかけるような事を口にするので再び条件反射で文句を言ってしまうのだが、コレはカードの者・・・今回の作戦を立案しているダイヤキングに問いかけているので王からしてみれば普通の疑問になっている。
怒りの対応をしている最中でも流石に地下の世界の王だけあって既に地上の魔力に順応しているのだが、冷静に考えれば何故順応に意識を向けている状況で会話が普通に成立しているのかに思い至るべきだった。
地上の状況は使者から説明を受けていたはずなのだが、差し当たり順調に事が進んでいると勘違いして重要な違和感を見逃していた。
「面倒な来訪者と普通に会話が出来る様にこちらで調整していましたが、その程度も理解できていないようですね。ついでに周囲の魔力もある程度調整していたのですが、此方に対しては作業を止めましょう」
ハートクィーンの宣言直後に再び周囲の魔力による行動阻害が起こり始め、この状況から間違いなく目の前の存在が大気中の魔力を大幅に軽減していた事を知る。
逆に言えば大気中の魔力を平然と操作する事が出来る傑物であるとも言えるのだが、やはり事前の情報からこれも道具によるものだと断定される。
「貴様もあの女と同様に周囲の魔力を吸収するのか?それならば継続して接触しても無事なのは理解できるが、その様な害にしかならない存在が二人もいる訳がない。やはり何かしらの道具とやらを使用しているのだろう!」
現状は王とハートクィーンが言い合っているような形になっているのだが、秘密の通路側で待機している使者を含めた地下の世界の住民は何かしら行動を起こそうとしても他のクィーンズやダイヤジャックの視線だけで全く動けずにいる。
「学がなければ品も無い。挙句に配慮も出来ないのであれば生存している意味があるのでしょうか?」
これまでは辛うじて会話が成立していたが・・・全く成立しなくなったばかりか内容を理解すれば極論に振れているので、急に黙ってしまう王。
一方のハートクィーンの視線は一瞬だけ王女・・・ダイヤクィーンが今尚優しく抱きしめている王女に向けられており、今の反応から全く声が届いていないと理解したのかアイコンタクトをダイヤクィーンに送る。
直後にダイヤクィーンは何かを王女に確認していたのだが直に返事を得たのか、そっとこの場から共に去っていく。
「ま、待て!何処に行くのだ!」
王の視界にもその様子はしっかりと映っていたので、この作戦で最も重要な魔力を吸収する娘がいなくなってしまえばこれ以上出来る事は無いので撤退する他なくなる為に慌てている。
「煩いですね。あの方は私達がしっかりと面倒を見る事が決定しました。本人の希望もありますから異論は認めませんよ?」
「はぁ?何を言い出すのだ。何もその様な事を口にしていなかっただろうが!貴様らは身内を切り離す事を是とするのか?地上の存在はその程度か!」




