(434)準備
欲望に忠実な国である事から地上侵攻については諦めておらず、差し当たっての脅威に対しては対策できる可能性が高いと言い切っている王。
「王よ。今回は例の者を使用するのですか?」
「そうだな。奴に使い道は無く害しかないと幽閉していたが、漸く国家の為に働ける時が来たのだ。今使わずにどうする?」
使者も王の言葉の意味を理解しているようで、どうやら不要な存在として幽閉されている人物を使用する事で道具に対する対処を行えると確信しているように見える。
「確かにこれまでの情報から、地上の魔力によって行動が阻害されてしまう部分と不思議な道具に対する対処に関しても問題ない可能性が高いでしょう。しかし情報に齟齬が有った場合、相応の反撃を考慮する必要があります。あの女は隠し通路の存在も把握しておりましたし、脅しとして地上にこちらから侵攻すれば逆侵攻するとも口にしていました」
「はははは。面白い。地上にも傑物がいるのだな。そうでなくてはな。良いか?そもそも通路まで明らかになっている以上侵攻される可能性が高い前提で動くべきだぞ?叩かれる前に叩く。まさか地上の連中も道具対策がこれほどまで早くできるとは思っていないだろう。まぁお前の言う通りに情報の齟齬と言った部分は賭けの要素があるが、その程度は地上侵攻のリスクとして飲み込むべきだ!」
欲望の国である事を理解するには十分な国王の言葉で、使者も確かに多少のリスクは有っても道具を抑え込める・・・勘違いではあるがダイヤクィーンに対して完全に対処できる可能性が高いと思っている事から、作戦がそのまま進行する事になる。
「それでは自分は奴に指示を出しておきます。今回の作戦が上手くいけば、そのまま地上で放逐すると言えば良いですか?」
「良いだろう。そもそも地上の魔力は我らの行動に悪影響なのだろう?その影響が取れる程度までは生かしておく必要があるからな。束の間の自由を満喫させてやれ」
地下の国にも地下があり、相当深い位置にある重厚な扉を開ける使者。
「おい・・・お前にいよいよ任務が与えられる。地上侵攻に関する任務だが、差し当たっては事前調査で脅威となり得る道具を持っている存在の対処になる。その後侵攻が上手くいけば、そのまま地上で暮らせるぞ?」
使者からこのように言われている存在は説明の中に意味が分からない所が有った様で不思議そうな表情をしており、使者もその表情を見て説明不足だった事を把握する。
「道具が何かわからないのだろう?自分も驚いたが、地上では道具が非常に重要になっている様だ。道具によって有り得ない程に自分自身を強化できるのだが、起動には魔力が必要になる。ここまで説明すれば何故お前に声がかかったかは理解できているな?」
この女性はコクリと頷くと、自らの希望を告げる。
「今の言葉に偽りがなければ私が地上にいるだけでお前達には有利になる。その道具とやらも起動できなくなるのでしょう?そこは良いとして、その後・・・私はそのまま地上で好きに生活をして良い。ここは違えないと誓えますか?」
「あぁ。王にも確認している」
「王・・・ですか。一応私の父でもありますけどね」
立ち位置的には王女のようだがある意味幽閉されており、コレはこの女性の特異体質による影響を排除する為に強制的に実行されている。
その特性とは・・・種類によらず周囲の魔力を何故か無駄に吸収してしまい吸収した魔力が彼女に何か影響を及ぼすかと言えば全くそのような事は無く、仮に戦闘能力の上昇や新たな能力の発現でもあれば有用だったのだが結局は害にしかならないと判断されている。
当然地下にも地上とは異なる魔力が充満しているので、その環境で生活をしている存在からしてみれば王女がいる事によって現代人で言う感覚の酸素が無くなる様な環境に陥る可能性が高いと判断されている。
実際に命の危険までは行かないが明確に体調不良を訴える存在が多数いたし、魔力を利用した力を一切使えなくなっている事からこの王女の面倒を見ている存在はすでにおらずに・・・一人で孤独に耐えながらこの場で生きながらえていた。
王女は同族がそのまま地上にいては真面に動けない魔力がある事など知る訳もないし、今の説明ではこの特異体質によって地上で使用されている道具の使用を阻害する事が目的と言われているのですんなり受け入れている。
本来の目的は地上の魔力をある程度排除するための生贄のような形であるのだが、使者はその事実を伝える事はしない。
特段戦闘するわけでもない上に自由も手に入ると考えているのだが、侵攻する事が目的である事を知っているので地上が破壊されてしまう可能性が高い事も理解している。
王女は破壊後であっても今この場で幽閉して孤独に耐えて生活するよりも遥かに良い環境に違いないと思っているので、侵攻される立場の面々に申し訳なさを感じながらも否定的な事を言ってはそもそもの話しすら無くなりかねないので黙っている。
「他に聞きたい事はあるか?」
「いつ実行に移すのですか?」
「それはこれから王に確認するが、どれだけ遅くとも数日以内だろう。場合によっては報告後直ぐに動くかもしれないので、今から準備だけはしておけ」
王が口にしていた通りに道具に関する対策が不可能だと思われる時間であればあるほど地上侵攻が容易になる可能性が高いので、使者も恐らく報告後直ぐに侵攻が開始されるだろうと思っている。
予想通りに報告後直ぐに侵攻する事が決定され、再び王女が幽閉されている空間に訪れている使者の男。
「これから侵攻を始める事になった。もう準備は出来ているな?」
例え準備が出来ていないと言われても悠長に待っているわけがないと王女も理解しているし、そもそも私物など無いので準備する必要も無い。
予想していた通りだが返事を待たずに空間から出て行く使者なのでその後ろを距離を開けて黙ってついて行き、大きな部屋に入るとそこには父である王を始めとして準備万端になっている多数の国民が目に入っていた。




