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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(432)追い出す

 本来ゼシューしか知らない地下の国の使者が隠れている場所なのだが、何一つ情報を伝えていないダイヤクィーンが迷いなくその方向に向かっている事実を把握して何とも言えない感情に支配されている。


 容姿や態度、声まで美しい存在が起こしてきた数々の非常識な行動が思い出されており、今も間違いなく不思議な力を持つ使者の元に向かっているので二人が相対した瞬間に未曽有の大惨事が起きる可能性が高いと思い始めている。


 国王ステヴァンはダイヤクィーンが何を言っているのか分からないのだが、何やら態度がおかしくなっているゼシューの姿を見て不思議そうにしている。


「ゼシューよ、どうしたのだ?お前は移動先の目的地を知っているのか?」

エラー! ハイパーリンクの参照に誤りがあります。

「かなり高い可能性で、余・・・私が言っていた異国の使者がいる場所に向かっています」


 すっかり高圧的な態度は鳴りを潜めて自称も変化しているゼシューは、これ以上何も説明できずに只管進んでいる。


 かなり強化されているゼシューなので人気がない場所でも難なくダイヤクィーンについて行く事が出来るのだが、国王はそもそも非常に重い服を着こんでいる上に年齢も重ねており、更に言うならば普段からの運動不足が祟って息も絶え絶えになっている。


 辛うじてついてきている事は分かるので敢えて速度を落とすような配慮などするわけも無く、脅しをかけるように振り向きもせずにこう告げるダイヤクィーン。


「愚王は随分と歩くのが遅いですね。ついて来られなくても良いですが、この辺りにはお腹を空かせた獣や魔獣がいる事だけはお伝えしておきます。大きく遅れた場合には、私達が戻る際には変貌した姿になっているでしょうね」


 生きたまま獣か魔獣に食われると告げられているので今更戻る訳にもいかないし、護衛を呼ぶ手段も無いので生き残る唯一の手段は遅れずについて行く事だけ。


 獣や魔獣の姿を視認する事は一切ないのだが、ダイヤクィーンが得体の知れない強さを持っている事は把握しているのでその不思議な力で排除しているのだろうと思っている。


 何とか肥溜め浸漬による悲劇を回避しようと策を練った結果、匂いを我慢する事とは比べるまでも無い命の危険に直面している国王ステヴァン。


 過去であればゼシューも同じ立場であったはずだが今はまるで別人のように普通に進めている上に物理的な力を持っている事は間違いなく、一人残されては確実に死亡すると思い必死になっている。


「到着しました。貴方方の無駄な説明は不要です。私の方で情報は仕入れさせて頂きました。そこに隠れている方・・・指摘するのも面倒ですから降りてきていただけますか?」


「・・・ゼシュー。何故これだけの人がいるのだ?想定とは異なるが?」


 待機していた男は依り代を持ってくると思っているので、そもそも生きている存在が複数この場に来る事は想定していなかった。


「こちらが現国王陛下で、私の父になる。そしてそこの女性はお前が必要とする存在だ」


 直接的な表現を避けておけば仮にダイヤクィーンと地下の国の使者が戦闘になってダイヤクィーンが生き残ったとしても、生贄に差し出すとは口にしていないので問題ないと思っているゼシュー。


 そもそも不思議な力を持っているのはダイヤクィーンだけではなく地下の国の使者も同じだと感じているので、良い勝負になるのではないかと言う期待がある。


 国王ステヴァンも同じ考えでこの場に移動したので黙って成り行きを見守っているが、逆にここまで近接した状態を維持して良いのか不安になり無意識で距離を取り始めている。


「初めまして。私はダイヤクィーンと申します。貴方は依り代を探しているようですね?少し前にはボッシュ伯爵に入り込んで情報を仕入れていたそうですが、そこに関しては特段被害がなかったので見逃しますよ」


「お前・・・ゼシュー。口が軽いのは頂けないぞ?」


「ま、待て!余は何も話してはいない。この女が異常なのだ!」


 焦りから国王の前で再び“余”と口にしているが、逆にこの焦り具合からゼシューが本当に何も伝えていない可能性が高いと判断した使者はダイヤクィーンに視線を向ける。


「お前は何者だ?普通の存在ではなさそうだな」


「その質問は失礼ですよね?どこをどう見ても淑女ですが?それ以外にどの様な回答をお望みでしょうか?」


「き、貴様の様に王族を肥溜めに容赦なく落とす淑女がいてたまるか!ふざけるな!」


 何故か使者ではなくゼシューが切れ散らかしており収拾がつかなくなり始めているのだが、喚いているのはゼシュー一人で国王ステヴァンは少々距離をとっているし使者はダイヤクィーンの得体の知れない力をしっかりと認識しているので視線を外せない。


「今の所特段害意がなさそうなので余計な行動をしないのであれば見逃しますよ?私を依り代にできない事は理解できているのでしょう?そもそも依り代は生物では不可能。となると私をこの場で始末する必要がありますね?ご自分の力に自信があるのであれば試してみるのも良いでしょう」


 可憐な女性が攻撃しても良いと告げている時点で異常だが実際に強化されたゼシューも少し前に全く抗えなかった事実があるし、使者も相当な経験をしているのかダイヤクィーンが口にしていた通りに非常に危険な相手だと確信している。


「・・・今日の所は大人しくしておこう」


 何とか口にしたのはこのセリフだが、期間限定である事からそのまま受け入れられる事は無い。


「それでは何時頃騒ぎ出すのでしょうか?敢えて教えて頂かなくともこちらで容易に把握できますが、騒ぎの内容によってはそれなりの対応をさせて頂きますよ?」


 圧倒的強者からの威圧を感じているのでここで抗う事は死を意味すると確信した使者は、地上を容易に侵略する事は不可能である事実を伝えるべきだと方針を変更する。


「理解した。自分は一旦国に戻ろうと思う。そこにいるゼシューや国王だったか?その二人は最早自分とは何も関係の無い存在だと言う事は伝えておこう」


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