(429)対峙へ
精神を乗っ取られているか否かは判別しようがないので、ゼシューの過去を考えると手駒に演技をさせて都合の良い事を述べさせる可能性が捨てきれずにいる国王ステヴァン。
言われたゼシューも逆の立場であればその通りだと単純に納得したので、今回に限り嘘ではないので余計な策を弄する必要もない為に目の前で乗っ取る様を見せれば納得せざるを得ないだろうと思っていると同時にとあることを思い出している。
「思い出しました。私はボッシュ伯爵の件で調査をしていたのですが、伯爵の亡骸もかの国の技術で乗っ取られていた存在でしたよ」
ここまで言われるとゼシューの言葉は真実なのかと感じているが、どの道これからその人物に会う事になるのでそこで全ては把握できると思っている。
「そうだ!陛下。実はその乗っ取られる側の存在ですが、精神が残っていると上手くいかないと言っていました。この意味は理解できますね?」
相手が死亡している必要があると暗に告げているのだが、ここまで直接的に言われれば聞かれず共言っている事は理解できる。
「それがどうしたのだ?特段性別や年齢に制限はないのだろう?条件が緩ければ如何様にでもやり方は有るぞ?」
「そこですよ。例えば・・・不要で不敬な害にしかならない存在を対象とすれば、これ以上ない程に我がミューゼ王国の繁栄は約束されるのではないですか?」
生ある存在も国家繁栄の為に亡き者にすると告げているゼシューと、対象によっては大賛成の国王ステヴァン。
この程度の王なので同じ血を引いているミルバは突然変異なのかもしれないが、地下の国から見ればこの国王ステヴァンの魔力も相当良く見えるだろう。
「余は全て理解したぞ。それで?誰が対象になるのだ?」
「当然忌々しく不敬なジャッ君とかぬかす存在以外にはあり得ないでしょう?今の私の力があれば、あの程度の雑魚を取り押さえた上で痛めつける事は容易です!」
ジャッ君と聞き確かに恨みは相当あるのだが、その親戚や姉と認識しているクィーンズがあまりにも素晴らしい存在である為に事を起こしてその事実が明らかになった際、嫌悪される事が心配になっている。
実際には嫌悪ではなく全く興味の無い道端の石コロと言う認識になっている事など分かる訳も無く、思わずその辺りの懸念を聞いてしまうステヴァン。
「確かにジャッ君とか言う存在が不敬で不要なのは認めよう。だが、あの男の親類縁者の女性はそうではないだろう?その辺りはどう配慮する?」
一方のゼシューとしては、肥溜め投下の刑に加えて肥溜め浸漬の刑にまで処されているので、幾ら見た目や雰囲気、そして所作や声まで美しくとも嫌悪の対象に成り下がっている。
「配慮など全く必要ないでしょう?不敬な存在に罰を与える。それが普通ではないですか?親類は親類であり全くの別人。いや、その親類も不敬なのは間違いないので近似した罰を与える事も有り得るはず!」
これ以上この話しをすると相手にされてはいないが愛しのクィーンズにも手が伸びかねないので、慌てて話題を変えるステヴァン。
「差し当たり来ているのは一人だろう?つまり今回の対象はジャッ君だけで良いのではないか?他を準備しても無駄に終わるだろう?」
忌々しそうな表情のままだが言われている事は事実なので反論できないゼシューは、気持ちを切り替える為か軽く頭を振ると再び国王ステヴァンと向き合うが態度は少々悪くなっている。
「わかりましたよ。どうせ早いか遅いかの違いでしかない。では時間がもったいないから早速行きましょうか?」
「む・・・使者殿の所に向かうのか?」
「はー・・・精神を乗っ取る所を確認するのでしょう?ならば、学校に向かってジャッ君を連れて行くのが先でしょう?」
「そ、そうだったな。では向かうとするか」
相当不敬だが、ここでゼシューの機嫌を損ねては暴れられる可能性が高い上に存在すら知らない国に対する面会も不可能になる事から何とか取り繕っている。
ゼシューもこのままイライラしては直接的に目の前の国王ステヴァンに攻撃しかねないと思っているのか、未だに手にしている盾を強引に小さく潰している。
――ガランガラン――
小さな鉄塊になり果てた元盾をこれ見よがしにステヴァンの近くに投げ捨てると、ついて来いと言わんばかりの態度で部屋から出て行くゼシューと黙って後を追うほかないステヴァン。
完全に立場が逆転しているので、尊大で不機嫌な態度のゼシューは内心小躍りしている。
「へ、陛下?護衛はどうされたのでしょうか?」
王都内部と言っても国王が護衛を付けずにウロウロしているように見えるので、学校に到着した際に警備の者が慌てて近寄っている。
「この私ゼシュー王子がいるので問題ない。お前はすべきことをしておけ!」
本来すべきことの中に今の国王に対する護衛対応も含まれているのだが、ゼシューの宣言を否定しないステヴァンを見てしまいこれ以上何も言えずに黙って本来の業務に戻る。
体力的には戦力が上昇しているゼシューが圧倒的に有利な中で、そう遠くないとは言っても結構な速度で移動していた事から既に息が上がっている国王の状態を把握しながらも止まる事はせずに魔力分野の教室を目指している。
丁度授業中の為に廊下には生徒はおらずに各教室内部で真剣に授業を聞いている状態の為に、廊下に意識を向けている存在もいない事から一切騒がれる事は無い。
こうして到着した魔力分野のクラスだが予想以上に楽しそうな声が聞こえてくるので、思わず休み時間か確認してしまったゼシューだ。




