(428)謁見
王都に入る人物はある程度チェックされているのでゼシューも調査対象になっており、間違いなく暫く見なかった第二王子であると認識した門番は即各箇所に連絡を入れていた。
最も早くこの一報を受け取ったのはもちろん国王であり、息子帰還を喜ぶでもなく相変わらずどこかに無駄な事をしに行っただけだと断じている事から叱責するつもりでいる。
その他の面々ではあまり接触がない民はゼシュー帰還の一報を聞いても何も思う所はないのだが、各貴族・・・特にボナン伯爵やハルバン伯爵、そして学校の関係者はもう少しどこかでゆっくりしてくれていればと言う気持ちが捨てきれない。
「陛下。私がかつてない程の実績を上げた事、ここに宣言します」
過去にない程自信満々である上に得体の知れない雰囲気を醸し出しているゼシューを前に、本来は厳しく叱責するつもり満々だった国王ステヴァンは出鼻をくじかれていた。
「どの様な実績だ?見た所・・・何をしたのかしらんが、雰囲気が一変したようだな。太古の道具を見つけたか?」
何か大きな変化があれば基本的には道具に結びつけてしまうのがミューゼ王国なのでこの質問は仕方がないのだが、過去自分自身も同じような考えだったと思いながら普通に否定するゼシュー。
「そのような道具は一切見つけておりません。コレは私が自ら得た・・・いいえ、本来の力を取り戻したと言うべきでしょうか?おい、ちょっとその盾を貸せ」
壁際に数人経っている騎士の一人に声をかけるゼシューと、言われればその通りに動く他ないので手にしている盾を渡す騎士。
「コレは御覧の通りに盾です。盾だけに相応の耐久力が求められますが、真の力を開放した私にかかれば・・・この通りですよ?」
盾の両端をそれぞれの手で持ち若干宙に浮かした状態に保持すると、一気に折り曲げてみせる。
まさかの事態に盾を渡した騎士だけではなく国王ステヴァンも唖然としているので、明確に自分の素晴らしい力を示す事は成功したと更に機嫌が良くなるゼシュー。
「この力があれば・・・本来の持っている私の素晴らしい力を覚醒しに出かけていましたが、結果は御覧の通りですよ」
出かけたのはボッシュ伯爵の件に関する調査だったはずだが結果的にこれだけの力を手に入れているので、逝去しているボッシュ伯爵の目撃情報が多数あった件については事実を把握しているがどうでも良くなっている。
現実的に全てを説明しても理解してもらえないだろうと言う多少見下した気持ちもあるので、直に本題に移る。
「私の交渉能力、そして未来を見据えた検討能力が花開いた結果ですよ。では何故このような素晴らしい力を開眼するに至ったのか・・・本来の潜在能力が素晴らしい事は言うまでもないですが、道具を頼りに引きこもったままではこの力を得る事は不可能だったでしょう」
ゼシューの物言いは潜在能力があれば誰しもが何らかの手法で真の力を覚醒する事が出来ると聞こえてしまう。
「ゼシューの力、この目で見た以上は信じる他ないだろう。強化の道具を使用しているわけでは無いのだな?」
「何度も申し上げますが、道具は一切使用しておりませんよ。コレは私の真の力を開放しただけです」
「・・・そうか。それでゼシューの言う所の実績とはその力の事か?であれば、その手法を用いれば我が国の戦力は一気に跳ね上がる事になるな」
「確かにそれは事実でしょうが、あくまで素養が有っての話しになりますよ。私が判断するに、正直該当しそうな人物は王城内部には皆無ですね」
ゼシュー以外は全て有象無象だと国王自身も含めて言われている事になるのだが、有り得ない実績を見させられた直後のために厳しい対応が出来ずにいる国王ステヴァンをよそにゼシューは勝手に演説を始める。
「ですがご安心ください。私の智謀を持って誰も知り得る事の無かった国との国交樹立が可能になりますよ。その国こそ私の真の実力を開眼させる一つのきっかけになった国ですから、有用な国家である事は疑いようがありません!」
ゼシューでこれだけの力を有しているのだから、自分自身がその国に出向けば圧倒的な力を得られると信じて疑っていない国王ステヴァンは前のめりになっている。
「残念ながらこの大陸の誰しもがかの国を知らない。つまり、逆に言えばかの国も此方の事を知らないのですよ。国交樹立の入り口として先方から使者が一人送られていますが、秘匿情報に触れるので説明できない理由によってとある場所で待機しています」
「秘匿情報は理解できるが、それは国王であるこの余に対しても秘匿すべき事なのか?」
「かの国と私の信頼関係に影響を及ぼしますので、将来的な国益を鑑みると公開すべきではないでしょう」
かつてない程に主導権を握れている事から何故かスラスラとそれらしいセリフが湯水のように溢れ出ているゼシューは絶好調だ。
「・・・やむを得んだろうな。それで、その使者殿と謁見を行うには何が必要なのだ?」
「陛下を信用してこの部分だけはお話ししますが・・・おい、お前等は少し外せ」
騎士達を下がらせて二人だけになると、ゼシューは敢えて秘匿情報である事を強調するかのように小声でステヴァンに説明する。
「実は・・・大陸の大気が肌に合わないのですよ。対策としては我らに各種の道具があるように、素晴らしい技術により人に宿る事が出来るのです」
大気と言うよりも大気中にある魔力のせいで行動できない事実を知っているが、余計な情報は少しでも秘匿する方が後々自分に有利になると考えている為に中途半端な情報しか口にしていない。
「成程。それほどの技術、今の我が国に存在する道具では不可能かもしれんな。それでどうするのだ?人に宿るのは理解したが、待機している当人を前にしなければ勝手な第三者が演技でもされては余に見分ける事は出来んぞ?」




