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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(425)増強

 魔力の質に関してはヨーレイだけは知識があるのでゼシューの魔力が淀んでいる事には気が付いているのだが、本人を前にして真実を言えるわけもないしより深く理解する為に研究させろとも言えないので状況に変化はない。


 ゼシュー自身も質が良いと言われているだけで淀んでいると言う否定的な言葉は使われていないので、今自分の力が上昇していることを実感してこの世界に来る選択は正解だったと思っている。


 実際に魔力を吸収して力が上昇しているが同質の魔力である事から体に若干違和感を覚えるだけで害がある訳でもなく、その違和感も時間経過と共に消失する。


 通常の魔力を持つ者が同じ環境に居られるかと言えば否であり、この世界からミューゼ王国に赴いた存在も魔力の質が大きく異なる事から順応する為に長い時間を要して対応しているのだが未だに順応できていなかったのだが、その手順を含めて間もなく完了する。


「お前・・・ゼシューと言ったか?我が王に謁見してみるか?」


「それも悪くないな。だが、ここがどこなのかもう少し具体的に教えてくれるか?」


 今のゼシューでは国と国との盟約を結べる立場ではないが、近い将来その立場になる事は確実だと思っているので先行してこの国の国王に顔を売っておけば後々役に立つだろう程度の考えでいる。


「ゼシューがいた国の地下深くだと思ってくれれば良い。ある意味異なる世界だろう?」


「するとあの方向に大陸があるのか?」


 地上と同じ空の様なものが見えるので首を上に向けているゼシュー。


「そうだな。まさか上の世界も同じような景色だとは思わなかったぞ。こちらとしてもその事実は新しい発見だった」


 自然現象や環境、そして景色について問いかけても無駄だと感じているのかゼシューはそれ以上の質問をする事も無く、意識は国王との面会に向いている。


 始めて来た場所の為にこれまで同様勝手に動く事は控えており、案内されるまま気が付けば謁見している状況になっていた。


「お前があちらの世界の住民なのか。どうやら随分と魔力の質がこの国と合っているようだが、全員がそうなのか?」


「いいえ、王よ。この男・・・ゼシューと言うこの男だけが特殊なのだと思います。自分も単独で動けたわけでは無いですが、意識を飛ばして調査をした段階ではゼシュー程質の良い魔力を持っている存在はおりません」


 ここでも質の良い魔力と言われているので非常に機嫌が良いのだが、今尚力が上昇している感覚がありながらも目の前の王と呼ばれている存在には手も足も出ない事は理解できてしまう。


 ある程度の力があれば相手の力量もわかるようになるのが一般的なので、ある意味漸くその域に達する事が出来始めているとも言える。


「成程。貴様であっても意識だけしか飛ばせない様な環境なわけだな?」


「恐れながらその通りです。事前予想の通りに魔力の質が大きく異なっているので、強行突破は出来ますが応分のダメージを負う事になる可能性が高いと判断して控えておりました」


「良い。英断だ。それでゼシューよ。貴様は何を望む?」


 話しの流れは見えないが、聞かれた事には素直に応える他ないし深く考える事が出来ないので反応するゼシュー。


「余の望みはミューゼ王国の国主となる事だ。その為には力が必要になるが、この国にいるだけで力が増しているのは理解している。当然次期国王として、この借りはしっかりと返させてもらおうと思っている」


 最後まで言い切ったが目の前の王とやらにも遜る態度ではなく同格としての対応をしてしまった事から少々後悔しているのだが、その心配は杞憂だった。


「ははは、なるほどな。ゼシューが持っている魔力の質の良さの原因がわかったぞ。その望みが貴様を大きく変貌させ、そして強さを得るに至ったのだろう」


 この国で欲望は非常に好まれるので王の態度に関しても納得できるが、ゼシューはそこまで理解できないが同格として対応した結果何もされなかった事に内心安堵している。


「ゼシューの希望は理解した。見た感じでは魔力を受け入れるのにもう少し時間がかかりそうだな。その後は貴様の世界に関する情報を開示してもらおう」


 あっという間に謁見は終了して個室を与えられたゼシューは、この対応こそが本来自分が自国でも受けるべき称賛なのだと思っているといつの間にか寝ていた。


「王の命で彼方の世界・・・地上調査を行いましたが、中途半端になってしまった事をお詫びします。一応地上での魔力順応手法も殆ど確立てきている状態です」


「良い。魔力が異質である事は事前調査で分かっていた事だ。そこに加えて情報源まで入手してきたのだ。これ以上ない程の成果だろう?」


 欲望が支配しているこの世界だが明確に序列は存在しており、王と呼ばれている人物はこの世界最強である事は自他ともに認めている。


 仮に少しでも弱みを見せれば他者がその地位を脅かしに来る事は間違いなく、今目の前で従順にしているゼシューを連れ帰ってきた存在でさえも即座に態度を変えるだろう。


 これがこの世界の標準的な考え方なので王自身も事前に脅威を刈り取る様な事はしないし、実際に自分自身も先代に仕えていたが弱った際に一気に滅して今の立場となっているので違和感も覚えていない。


 当然の様に欲望は留まる事を知らないので異なる世界・・・地上への侵攻を考えて調査を行っているのだが、事前調査の通りに行動すらままならない可能性が高い事が立証されてしまうと同時に改善の糸口が見えていた。


「ゼシューをどのように使うのかが難しい所ですね。自分達もあっちの世界で行動できるようにする必要がありますが、体感では戦闘行為レベルだと相当時間が必要になります」


「時間は無限にあるのだ。焦る必要はないだろう?だがゼシューの寿命は短そうだな。地上の存在は皆似た様な者なのだろうな」


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