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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
424/425

(422)接触

 子飼いの筆頭とも言えるボッシュ伯爵嫡男ボナン・・・これまでの情報を纏めると間違いなくボナン伯爵になっているのだが、どう見ても過去の様に歓迎している様には見えていない。


 昔であれば開口一番ゼシューを何かしら褒め称える言葉が出てくるのだが一切なく、表情も暗い。


「どうした?噂では聞いていたが、伯爵の逝去によるモロモロで疲れたのか?」


 一般人であればもう少し言い方があるだろうと言いたくなるような物言いではあるが一応次期国王になる可能性が高く、貴族当主になった直後に反旗を翻すわけにもいかないので当たり障りの無い回答をするボナン。


「ご指摘の通りに色々ありまして、おかげで学校にもあまり通えていない状況なのです。もう少し仕事に慣れれば出席できる日数も増えると思うのですが」


「そうか。ボッシュ伯爵は優秀だったからな。その後を突然継ぐことになったお前は負担が大きいだろう。余も助力してやろう」


 助力と言われても冷静になった今思い起こせば邪魔しかできないし、頓珍漢な理論で我を強引に通そうとするので非常に質が悪い。


 周囲の者達は過去の自分も含めて咎める事も指摘する事も出来ずにいた結果がここまで増長してしまった事は間違いないが、今更余計な事をするつもりも無ければその余裕も無いので普通に断る。


「お気持ちだけ頂いておきます、ゼシュー王子。今日は弔問有難うございました。それでは私は他の仕事が残っておりますので、これで失礼します」


 一気にまくし立てるようにここまで言うと直に邸宅に入って行ってしまったため、ゼシューとしては過去にない程塩対応であった事から何も反応できずにいた。


「王子・・・ありがとうございました。ご指摘の通りに新たに伯爵になったばかりですのでボナン様にも余裕がないのです」


 さり気なく門の方向に誘導しながら当主のそっけない態度の理由を敢えて説明している使用人だが、言葉の通りに来客に対して対応できないほど余裕がないかと言えばそのような事は無いと知っている。


 事実数日前にミルバやロイ一行が訪ねてきた時には同じくアポなしではあったが笑顔で出迎えており、暫く共にお茶をしながら歓談していた事実を把握しているからだ。


 何となく納得できない表情をしながらも邸宅を後にして王城方面に歩いて行くゼシューを見送りながら、使用人は思わず呟く。


「ふー。ボナン様も良い方向に変わられたと言うのに・・・何故ボッシュ様は突然逝去されてしまったのか。本当に残念ですよ。変わったボナン様のお姿を見たい心残りがあって、噂の様に町で見かけてしまうのでしょうか?」


 ボッシュ伯爵が目撃されている噂は聞き及んでいるのでその理由について願望を含めて口にしているが、当人としては邸宅で謹慎中のボッシュ伯爵逝去はその目で確認しているので有り得ない事だと分かってはいる。


「余が暫く表に顔を出していない間、相当な変化があったようだな。ボッシュやボナンを含めて・・・な」


 一方で半ば強引に追い返されるような形になっているゼシューは一先ず王城に戻ろうとするのだが、ボッシュ伯爵逝去は間違いない事を確認してしまった事から日々噂になっている存在するはずの無い伯爵の目撃情報について気になり始める。


「正にこれこそ太古の道具による何らかの現象ではないのか?仮に余がその道具をしっかりと入手する事が出来れば、場合によっては過去の英雄を召喚して支配する事も出来るのではないか?」


 そもそも魔力制御も覚束ない上にまるで知識も実力も無い以上は太古の道具を制御する事など不可能と言って良いが、自分の力を誤認できる能力は人一倍の為に有り得ない未来を想像して太古の道具かボッシュ伯爵を見つけようと踵を返す。


「目撃情報は色々あるが、仮に太古の道具による復活であるならば術者は目立たない場所にいるはずだろう。となれば王都の中ではなさそうか?」


 自らの推理能力にも謎の自信を持っているので、何となく理にかなっていそうな言葉が出た事から更に気分が良くなり王都から出て行く。


 目的地を決めているわけでは無いので適当に進んでいるが、怪しい雰囲気がしそうな方向に向かっているので必然的に人は少なくなっていき・・・やがてゼシュー一人が周辺を探索している状況になっている。


「やはり余の推測は正しいのだな。全てが掌の上だ!」


 結構歩き回った結果とある不思議な状況が起きている場所を偶然見つけたので、まるで初めからこの状況がわかっていたかのような口ぶりで自画自賛しているのだが・・・周囲には誰もいないので無駄な独り言になっている。


 この場所は・・・ハルバン伯爵や直近ではタッシュが発見していた悍ましい何かがある一定の空間から出られない状況になっている場所で、残念ながらゼシューはその魔力のおぞましさや雰囲気を感じ取る能力が極めて低い事から平然としている。


 学校に通っている低学年の生徒でも危険を感じて近づくような事は無くある程度の能力を得ている存在であればタッシュ同様に近接する前に逃げ帰るのが普通なのだが、平然としたまま境界がありそうな場所まで到達している。


「何処に道具があるのだ?」


 流石のゼシューも内部に侵入するのは憚られたのか境界内部にあると思っている道具を探す素振りを見せると、何やら不思議な声が頭に響く。


<お前は随分と心地よい魔力を持っているな。なるほど・・・親和性が影響するのか?>


 言葉は分かるが意味を理解するには少々不思議な部分があるのだが・・・心地よい魔力と言われている事に気分が良くなっている。


「当然だな。余は次期国王のゼシューだ。応じた魔力を持っているのは当然だろう?」


 心地良い魔力は悍ましい存在から見て心地良い魔力と言う意味であり、一般的な人物ではそこまで魔力の淀みを感知できないだろう。


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