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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(419)ハルバン来る

 今尚パーミアがハルバン伯爵の家臣だとは公にしていないので、その辺りに気を配りながら話し始めるハルバン。


「実は・・・錬金に対して非常に優秀なタッシュ先生の力を借りる時だと思い、急遽戻って来た。先生は例のブツを見つけたのだろう?」


「え?例の・・・ブツとは何でしょうか?」


 タッシュはかなり高い確率で見つけてしまった悍ましい存在の事を指していると思っているのだが、この場で肯定してしまえばパーミアやヨーレイも強制的に巻き込んでしまうととぼけて見せたのだがハルバンには通用しなかった様で、知っている事を大前提として話しが進んでしまう。


「あははは。その様子であれば発見したのは間違いなさそうだな。どうやら先生は嘘をつくのが苦手になっているらしいが、配慮できるその姿勢にも好感が持てる。実はあの存在について私はかなり前から把握していたのだが、国に報告すると碌な対処が出来ない状態で暴走しかねない・・・いや、功を焦った人物が暴走する未来が確定しているので私の独断で秘匿の上解決策を模索していた」


 実は事前にハルバンはヨーレイとパーミアに知っている事実と状況を説明済みの為、タッシュの配慮は無駄だったりする。


「今回魔力生成の道具に関する情報は私の元に入ってきたので、それだけの道具が作成できるのであれば例の存在にも対処できる可能性が高いと急ぎ戻ってきたのだが・・・色々と状況は複雑になっているようだな?」


 直接パーミアから報告を受けたわけでは無いので戻って事実を確認すると、実際に道具を作成したのは別の存在だと聞かされて少々驚いていた。


 具体的に告げては話しの出所を問われると問題になるし、信頼関係にも影響を及ぼす可能性がある事から非常に曖昧な表現に留めている。


「話しが少しそれたが、あの存在が何なのかは未だに掴み切れてはいない。タッシュ先生もそうだろう?」


 確定的な問いであれば隠せないと観念したのか、真実を告げる。


「ご指摘の通りです、ハルバン伯爵。日々錬金の技術を磨いて道具を開発しておりますが、その道具のテストで不思議な存在を感知して現地に赴きました。いいえ、赴く途中で背筋が凍り引き返しています」


「そうか。正しい判断だっただろう。あの存在が何者なのか不明なのは今を持って変わらないが、良い影響を与える存在ではない事だけは確実だ。海を渡って異国で情報収集をしても何も得るものが無く、解決策が見いだせずに困っていたのだ」


 有り得ない道具を練成したのはダイヤジャックと聞いているハルバンなので最終的には当人に対処法について相談したかったのだが、パーミアとの繋がりを秘匿する必要があるので中々直接的に言及できずにいる。


 全ての状況を把握しているパーミアは当事者でもある事から、何とかその方向に誘導するべく切り出す。


「ヨーちゃん。タッシュ先生。折角学校の環境も良くなって生徒達もやる気に満ち溢れているこの状況、私達が守る必要があると思わない?」


「そ、それはその通りですね。で、でも私に何が出来るのでしょうか?」


「私もパーミア先生の意見には大賛成ですが、今更ながら正直に申し上げますが・・・あの存在を認識した時点で足が竦みましたよ?何とかしたいですし何とかしようと考えていましたけど、私にも何をどうすれば良いのか分からないのです」


 タッシュは自らの無力を嘆き流れる様に懐から女神像を出すと、机の上に置いて拝みだす。


「・・・本当にタッシュ先生は変わったな。ところで、その素晴らしい細工は誰がしたのだ?その造形は目を瞠る所しかないが」


「やはりお分かりになりますか!そもそもコレは素晴らしいと言う言葉でしか言い表せない女神様の像になるのです。当然女神様の素晴らしさを余すことなく表現するには中途半端な造形などで許されるわけがありません!」


「先生、タッシュ先生!素晴らしいのは分かっているけど、ハルバン伯爵が固まっているわよ?」


「!?・・・こ、これは失礼しました。女神様の素晴らしさをお伝えしたい気持ちが溢れ出てしまった様です」


「そ、そうか。確かに造形も素晴らしいが、モデルの方も素晴らしいのだろう」


 申し訳ない気持ちはあるが、この流れで行けば想定通りに何とかダイヤジャックを巻き込めると思ったパーミア。


「そうなのですよ。その像を作成した人物も豪快で素晴らしい存在です」


 女神と女神像を作成した人物を褒めているので、絶対にタッシュが少し暴走すると確信していたパーミア。


「やはりわかっていますね、パーミア先生。この像は魔力分野に所属のジャッ君が作成しています。彼は女神様の親戚になるのですよ。あぁ・・・是非ともハルバン様にも女神様を直接その目で見て頂きたいですが、私もここ暫くお会いできていないのですよ」


「そ、そうか。そこまで言うのであれば是非ともお会いしてみたいな。少なくともジャッ君か?彼には会えるのだろう?」


 完全にパーミアの想定通りになったのだが、一つだけ配慮できていないことがある。


 実はタッシュ・・・この像について有り得ない程の数と技術が必要になる注文を別途ダイヤジャックにしていたのだが、その中で像を通してなるべく女神と繋がっていたいと言う要望を非常に強く主張していた。


 面倒だし正直猫を被っている存在と繋がりたいとは・・・と思っているが、一応ロイから像の作成について許可が出ている以上はある程度希望を聞く事にしていた結果、この会話は直接カードの者達に聞かれている状態になっていた。


 こうしてその日の朝、ダイヤキングが全ての事情をロイに説明して事態が急速に動く事になる。


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