(415)対策
国王ステヴァンだけではなく一般常識として魔力生成が可能な道具など有り得ないと思っており、自らが検証する為に魔力が供給されていない温風を発する道具を持ってきている。
ここに魔力を供給すれば温風が発生する事になるのだが、一般的な人々は自分自身の魔力で実行するには魔力に関する知識や技術が不足しているので実行不可能だ。
その道具にダイヤジャックから渡された道具を接続すると・・・当然の様に道具が即起動して温風が出続けている。
その様子を暫く観察しているのだが、一定の温度の温風が継続して出続けている事からしっかり安定している魔力が供給され続けている事を認める他ない。
「陛下。コレは本物と見て良いと思います。何せこれだけ小さな球体である以上、仮に事前に魔力を保管してあった道具であった場合にはこれほどの時間道具を起動し続ける事は不可能です。つまり確かに魔力を生成しています」
これも一般常識で魔力の保管量は道具の大きさに比例するのだが、ダイヤ部隊であればその常識を完全に無視した道具は作成可能だ。
現在知り得る一般常識を含めて考えるとボッシュ伯爵の言葉を否定する要素が何もなく、今目の前にある小さな球体が魔力生成の道具である事を認めざるを得ない国王ステヴァン。
「確かに事実のようだな。して、三人の教官はこの成果をどのように活用するのだ?常識的に国民として国に対して応分の成果を収める必要があるだろう?そもそもこれだけの道具だ。一次練成は生徒でもできたようだが、それ以降の練成にも応分の費用が発生しているのは間違いない。そこを踏まえると相当な金額になる以上は税もそれなりになるぞ?」
魔力生成の道具が完成している事実を認める他ない以上、今在庫となっている魔力保管・供給の道具は不要となる可能性が高い事から問いかけと言う名の徴収を行おうとしている。
仮にここで目が飛び出るほどの金額で販売すると告げられれば、応じた税を徴収するだけで魔力保管・供給の道具は現行価格のまま継続して販売できると判断していた。
「確かに一次練成は素材も貴重ではないし生徒が仕上げた事も事実だが、それはヨーレイ先生のしっかりとした魔力操作に関する指導があったからだぞ?そこに加えて効率的な練成方法やその他の素材の適切な管理方法・・・タッシュ先生とパーミア先生によるお力もある。その努力の結晶に関して、お前程度が何を偉そうにしている?お前は少しでもこの道具の開発に寄与したのか?」
何度目になるのか不明だが再びダイヤジャックが割り込み、こうなる事を確信していた三人の教官は我関せずの姿勢を維持している。
「き・・・貴様・・・不敬が過ぎるぞ!学生だからと見逃してやるにも限度がある。そもそも税とは民の義務だろうが!」
「義務である一点に関しては自分がどうこう言うべきところではないが、暴利を貪ろうとしている愚王が口にして良い言葉かと言うと・・・大いに疑問が残るな。聞くところによると、お前が大量に保管しているタッシュ先生からの譲渡品・・・販売価格の異常な上昇で在庫が減少していないようだな?」
「だ、だから何だ。貴様は何が言いたいのだ!」
「単刀直入に教えてやろう。お三方の素晴らしい民を思いやる慈愛の心でこの道具の販売価格が決定した。聞いて驚け!タッシュ先生が作っていた道具の売価の半額だ!」
「はっ?過去の価格の半額・・・だと?そのような事が出来てたまるか!今の道具でさえ赤字になるだろうが!」
「そんな事は愚王が関知する事ではない。そして税は売り上げに対して応分にかかるのだったな?その結果、この道具の売り上げに関して国に入る税は極めて少額になる訳だ。ふはははは、素晴らしいではないか?」
波に乗っているダイヤジャックを止める術はないと理解している三人の教官はこの一件に関しては全く対応する必要が無いと確信し、一応国王の前なので不遜な態度はとれないながらもコソコソと他の話題で盛り上がっていたりする。
「そのような勝手な理論が罷り通る訳がないだろうが!貴様では話しにならん!そこの三人は当然応分の税を収める必要が・・・」
ダイヤジャックを相手にしてはこのまま押し切られる可能性が高いと思ったのか、当初の交渉相手である三人の教官に矛先を変え始めた所を引き戻される。
「愚王よ!そろそろ自分も大人しくしていられなくなるぞ?本来愚王がしっかりとタッシュ先生の道具を適正価格で販売しておけばこのような事態にはなっていない。欲をかいた挙句に全ての利益を失う典型的な昔話しと同じだな。その上在庫だけが大量に余っている・・・精々何かの遊びに使えないか考えておけ!」
国王ステヴァンはここまで来ては引くに引けないと熱くなり始めているのだが、横に控えていたボッシュ伯爵が漸く冷静になり口を開く。
「陛下。これだけ素晴らしい道具を民にまで安価に供給できると宣言しているのですよ?最終的には生活がこれまで以上に向上して各人に余裕が生まれ、景気も向上する事は間違いないでしょう。長い目で見れば良いことだらけです」
「ボッシュ・・・貴様何を言い出すのだ?そもそも大量の在庫をどのように処理する!無駄なゴミになる可能性が高いのだぞ?」
「それこそ研究者に対して技術を開示すると同時に現物を教材として与えれば、技術者達の技術向上に繋がります。利益に関して言えば、事前にタッシュ先生からこれまでの利益分の供与を受けたと理解しておりますが?」
余りにも正論なので国王はまさかのボッシュ伯爵の裏切りに何も言えずにいるし、傍で聞いているダイヤジャックも敵の一人と認識していた存在が真面な事を言い始めているので面白そうに観察している事から黙っている。
「正論だけで政はできぬ!ボッシュ、貴様には頭を冷やす時間が必要だ。暫く謹慎しろ!」
権力者に対して幾ら諭そうが真摯に意見に耳を傾ける可能性は極めて低く、当然ステヴァンもその部類に含まれる事から容赦なく謹慎を言い渡される。
一気に極論に触れてしまい二の句が継げないボッシュ伯爵を残し、国王ステヴァンは不機嫌であると主張する様に大きな音で扉を閉めて出て行った。
「やはり愚王に成長や変化を求める事は間違いだが・・・予想しない素晴らしい変化を目の当たりにして驚いているぞ?」




