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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(411)家探しから

 一人教室を偉そうに出て行ったゼシューは、過去に何度も通っていたタッシュの私室に迷う事無く向かっている。


 普段ヨーレイ達やロイを始めとした面々のたまり場になっている事は知っているが、今は授業中の為に誰もいない事を確信している。


 徐に扉を開けて中に侵入すると、内部から鍵をかけて邪魔が入らないようにした後に悠々と家探しを始める。


 一応何があっても言い訳が出来る様に荒らすような事はせずに、単純に受け取り拒否した自分のテストの答案を改めて貰に来たと言えば良いと考えて慎重に探している。


 この言い訳が通用するか否かは全く別の話しだが、立場があるのでこれ以上の言い訳は必要ないと思い道具が仕舞えそうな場所を探している。


「接続部分を考えるとある程度の大きさ・・・いや、生成の道具だけを保管している可能性が高いな。だとすると相当小さかったから、保管できる場所は相当増えるな。クソッ!ボナンがいれば二人で作業できたのだがな!」


 子飼いのボナンは今回の道具練成に関する技術の報告を行う為に継続して授業を受けているのでこの場にはおらず、今更他の子飼いに声をかける訳にはいかないので継続して一人で探している。


 その様子を既に部屋の内部で待機していたダイヤクィーンは余すことなく観察しており、気配を消さずに視界に入らない様に動いているだけでゼシューの意識の外に居続けている。


 今声を掛けないのはゼシューが想像した通りに既に量産品用として作成した品が複数保管してあり、それを見つけた際の行動を確認する為だ。


 ダイヤクィーンとしては間違いなく持ち帰ると確信しているのだが、ロイの性善説によって思い直す可能性を排除せずに観察する様に指示があったからだ。


 あちらこちらを必死に探しているゼシューを見ているダイヤクィーンは非常に無駄な時間を過ごしていると感じているので、どう考えてもそこにはないだろうと言う場所を探し始めているゼシューを誘導する事にした。


 今は床に隠し空間があると想像したのか無駄に足を踏み鳴らして空洞がないのか音を聞いており、何処からそのような無駄な知識を得たのか聞いてみたい気持ちを押し殺しながら敢えて魔力生成の道具近傍で魔力可視化の道具を起動させておく。


 この品は既に大量に出回っているのでゼシューも容易に手に入れる事が出来るはずで、生成の道具を探すのであればこれ以上ない程に有用な道具であるはずなのだが・・・ゼシューの頭脳ではこの程度の事も思い浮かばないのだろうと諦めの境地に至ったダイヤクィーンは黙って成り行きを見守っている。


「この部屋にはないか。無能で裏切り者のくせに、無駄に幾つも部屋を持っているなど許して良いのか?」


 ブツブツ文句を言いながら次の部屋に向かっているゼシューは、何となく部屋の一角に見える模様に違和感を覚えた。


 これこそがダイヤクィーンが敢えて起動しておいた魔力可視化の道具による模様で、正に魔力生成の道具から発せられている魔力を可視化している。


「む・・・こんな所に模様?おぉ、あったぞ!やはり品は一個ではなかったのだな。フム・・・結構な量があるではないか。なるほど。コレはタッシュの為にも余がしっかりと有効活用しておくべきだろうな。いくつかは陛下に献上し、授業の結果をしっかり報告出来た暁にはボナンにも融通してやろう」


 勝手な言い分を垂れ流しているのだが今尚盗難を実行していないので黙っているダイヤクィーンは、ロイから言われていた有罪の判定について思い出している。


 品を持ってタッシュの部屋から廊下に完全に体が全て出た時点でアウトだと聞いており、その基準の根拠などカードの者達には一切関係ないので言われた基準を逸脱するか否かだけを見極めようとしている。


 割と近くにダイヤクィーンがいる事など分からないゼシューはいそいそと小さな球体状の道具を自分のポケットにしまい始めており、両方のポケットが相当膨らんだ段階で全てを回収したのか何故か笑顔で私室を後にする。


「ふー。これで俺の使命は果たせたな。後はボナン待ち・・・か」


「いいえ、違いますね。貴方の使命はこれから肥溜めに再び投げ込まれる事ですよ?その上今回は罪を重ねた事から、暫くゆっくりと浸って頂く予定です」


 突然背後から声がしたので“誰だ”と叫びたくなっているのだが、聞き覚えがある声に加えて内容が内容の為に問いかけずとも相手が誰だかわかってしまう。


「ま、待て!何故余が再びあのような地獄に赴かねばならんのだ!貴様は見かけだけが良い悪魔か?余は王族であるぞ!」


「その偉そうな王族が、先生方の努力の結晶を平然と盗み出すのは良いのですか?貴方の様な汚物と会話をするのも嫌なので、話しかけないで頂けませんか?」


 明確に盗みを働いた自覚があるし、目の前の女性は露骨に膨らんだポケットを見ている事から冤罪と騒いでも強制的に物的証拠を示されてしまうだろうと考えたゼシュー。


「こ、これは余の方でも更なる改良が出来ないかと思い借りたのだ」


 何とか必死に捻り出した言い訳がこれだが全てを知っているダイヤクィーンが納得するわけも無く、相手をするのも面倒になったのか口から出てくる言葉は極めて短かった。


「で?」


 正にこれ以上ない程に拒絶を含んだ言葉になっており、最早逃亡するしか助かる道は無いと一気に走り出すのだが・・・過去に経験した浮遊感に襲われて首元が苦しくなっている事から襟首を掴まれて高速移動している事だけは理解した。


 何かを話そうにも苦しくて言葉にならず、どの道何を言おうがダイヤクィーンは止まらないのであっという間に刑執行の場に到着する。


「う・・おぇ。お、オイ!待ってくれ!余は・・・うわー!」


 即投げ込まないのは敢えて肥溜めが近くにあると認識させただけなのでこれ以上不快な声を聞きたくないダイヤクィーンは一気に放り投げると、近くの長い棒を二本上手く使ってゼシューの首から下を宣言通り肥溜めに完全に沈めて見せた。


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