(407)道具の練成
「ぶはははは。予想を外さんと言うか想定通りと言うか、何とも情けない結果だな!」
タッシュの私室に集合しているダイヤジャックを始めとした一行は、今日のテストについてダイヤクィーンから概略を聞いている。
「ダイヤクィーン様!あの・・・一応生徒の個人情報になるので具体的な点数までは開示しないでいただきたいのですが」
人としての常識スラ勉強中の為に個人情報だのと言われてもピンと来ていないが、タッシュの指摘を聞いたロイが軽く頷く仕草をしていた為に素直に謝罪するダイヤクィーン。
「大変申し訳ありません。その方面の知識が皆無の為にご迷惑をおかけしました。ご指摘ありがとうございます」
「む、そう言われると自分も大笑いしてしまったからな。謝罪しよう。とは言え・・・なぁ?」
全員が一桁・・・名前を綺麗に書けた加算があって最高得点が5点となると今迄の授業はまるで無駄になっており、またこのまま卒業されても何も得る事が無い結果だけしかない。
現実過去の卒業生も只管独学で錬金を行って来ただけなので基礎すら真面ではないが・・・有り得ない程の競争を勝ち抜いた実績がある事から、一部有用な道具を作成できる錬金術師になってはいる。
「これまで基礎をおろそかにしてきた弊害ですね。改めて明日から基礎を仕込み直す必要がありそうです。教官として頑張りますよ!」
「タッシュ先生。意気込みは感心するばかりだが、そうは言ってもこのまま同じ事をしても・・・この場に来た数人はある程度学習意欲がありそうだが、ゼシューを始めとしてハロンだったか?アイツも期待はできそうにないと思うが?」
ダイヤジャックの問いに明確に反論できないタッシュを見て、パーミアがその頭脳をフルに活用して助け舟を出す。
「ジャッ君。それならば、例の道具に絡めて授業を行うのはどうかしら?」
「例の道具とは・・・これか?」
使用限界を設定した品に敢えて改悪した魔力生成の道具を何処からともなく取り出したダイヤジャック。
「そうそう。って、もう出来ていたの?はぁー、相変らず規格外ね」
外観だけは決定していたので見ただけで魔力生成の道具だとは理解できているのだが、まさかこれだけ早くに練成が終わっているとはパーミアですら想像できていなかった。
「その話しは別にして、具体的にはどうするのだ?」
頭脳集団であるダイヤ部隊のNo.3だがパーミアの頭脳には驚かされる事が多いので少し前のめりになっているダイヤジャックと、その話しを聞いてこちらも興味津々のダイヤクィーン。
「一応タッシュ先生が私達と共同で開発した品とするのでしょう?正直それだけの道具の権利を全て横取りするようで未だに納得できないけれど、また同じ事を言っても仕方がないから話しを進めるわね」
一般的には魔力生成は本当に夢物語と言われており、この場の教師陣も同じ考えでいた所にダイヤジャックが平然と作成可能と告げた挙句に全ての権利や製作者としての名乗りすら放棄した事で少し揉めていた。
ダイヤジャック側からすればこの程度の道具作成は容易だし、ロイの指示もあってなるべく・・・正直もう手遅れだが、なるべく目立ちたくない事を踏まえて全ての権利や名誉を放棄している。
自分達では何もしていないのに権利や名誉をかすめ取る様な結果となる事から納得がいっていなかった共同研究者として発表される予定のパーミア、タッシュ、ヨーレイだが、何とか説得されて折れた過去がある。
「改めて・・・この練成は四段階になっているのでしょ?一段階目は極めて基礎的な素材を使った基礎練成である事から、彼等にも実際行ってもらえばどうかしら?二次練成以降はジャッ君やダイヤクィーンさんが提供してくれた道具を使った練成が必要だから秘匿する必要がある訳だけど、それ以前の練成を行えばこの道具をある程度融通できると伝える事でやる気も出るのではないかしら?」
「か、過去にタッシュ先生が魔力分野の生徒達に道具を報酬とした手法ですね?」
「その通りよ、ヨーちゃん!二番煎じで申し訳ないけど、コレが最善の手だと思うの。ついでに言えば、その場で私達が新たな道具を共同で発明した事を告げる事で勝手に情報が広まっていくはずよ?」
販売時期や金額は事前に決定されており、タッシュがこれまで販売していたルートを使う事は国王との約束に反しないので直ぐにでも実行可能になっている。
時期はもう少し後でその間状況を継続して確認し、仮に国王が今の売価を下げに行けばもう少し猶予期間を設けるつもりでいたのだが・・・これまでの経緯からその線はないので当初想定していた時期に販売する事になるだろう。
当然利益を独占しているゼシューや同じ穴の狢である伯爵家子息ボナンは反抗して練成すら実行しない可能性が高いが、二人の我儘によってクラス全員の知識が不足する事は許容できないとタッシュが判断した事から、反発した人物は相手にしない事が決定されている。
練成には魔力の流れが非常に重要になる事から魔力分野の知識と技術も習得する必要があり、そう言った事情もあってゼシューとボナンが態度を改める可能性は無いと判断されている。
「それともう一つあって、できればダイヤクィーンさんにも最初の授業には参加してもらいたいのよ。良いかしら?」
カードの者達は自分達がどのように見られているのか・・・ロイだけの視線は過剰に気になるが他の有象無象はどうでも良いと思っているので、今回の様にダイヤクィーンの余りの美しさに周囲の者達が性別問わずに虜になっている事を全く気にしていない。
故にそこを利用した作戦など一切思いつかないのだが、今回は貴族の子息達を半ば強制的に黙らせる作戦としてダイヤクィーンの同席を求めているパーミア。
「私で良ければ喜んで。授業はタッシュ先生がなされるのですよね?」




