(403)契約の隙
改善策が決定したところで誰が製作者になるのかを考え始めているロイは、利益が最大限になるように検討した結果こう提案する。
「どうせなら先生達と共に考えて開発した事にできれば良くない?タッシュ先生だけじゃなくてヨーレイ先生やパーミア先生の実績にもなるしね?」
余計な事をしなければ何も問題なかったが、無断な欲をかいたばかりに破滅の道を激しく進む羽目になった国王達は間もなくその時が来る事を知らずにいる。
ロイの見解としては魔力生成の道具を作成する事は決定事項になっているのだが、作成に当たっては各先生との共同作業にする事が示されている。
王族側が貴族に対して魔力保管・供給の道具を安価に販売する事になったとしても民に販売すれば良いと考えているし、機能はどう考えても魔力保管作業が不要になる事から圧倒的にダイヤジャックが作成する道具の方が良い。
「販売金額は・・・国が販売する道具よりも少し安い位が良いかな?」
金額的にも有利になる設定とする事で場合によっては貴族側からも注文を受ける事になり、結果的に彼等はミルバに頭が上がらなくなる可能性が高くなる事も踏まえて決定される。
ダイヤジャックは魔力供給の道具に関して魔力分野クラスの夢物語と言う前提での話しを聞いていたので一般常識的に考えると規格外の道具だと理解しているのだが、主であるロイが許可をすれば作成する事は全く問題ないと考えている。
「ふははは。流石はロイ君だ。それで使用期限はどのように設定するのだ?」
「俺達はこの大陸・・・この国の事をあまり把握していないからね。やっぱりミルバ君や先生達と相談して決めるべきだと思うよ?」
ロイとダイヤジャックの間で方針が決定した事はこの場に顕現しているダイヤクィーンも理解しているので、嬉しそうに話しをしているシェーンを始めとしてヨーレイ、パーミア、タッシュ、ミルバ、そして呆けている校長を一カ所に集めている。
「皆様。今回の事情はジャッ君から聞いております。対策する事は容易ですのでこれから私の方から説明させて頂きますね?」
「流石は女神様の親戚の方ですね!本件に関してこれ程容易に対策が出来るとは・・・このタッシュ、感動しております!」
「タッシュ先生じゃないけど、私もその案を是非とも聞かせてもらいたいわ。申し訳ないけど夢物語の希望的観測に頼る案しか出てこないの。ヨーちゃんもでしょ?」
「わ、私もパーミア先生と同じですね」
先生達が希望に満ちた目でダイヤクィーンを見ており・・・本来であればダイヤジャックが説明を行うはずだったのだが、ロイの前で話しが出来る栄誉を立場を使って強制的に奪っていたダイヤクィーン。
当然ロイにはその辺りは知られていないのだが、ダイヤジャックとしても気持ちは分かるし否と言おうものなら再び容赦なく笑顔のまま強烈な攻撃を繰り出してくる可能性が高いと分かってしまい譲っていた。
「それでは・・・皆様が考えておられたのは基本的に魔力を供給する方法で、私と致しましてもその方法が最も有用であると考えております。過去タッシュ先生が独占的に作成、販売されていた道具に関しては国に譲渡されておりますので、全く異なる機能が必要になります」
「そうなのよ。っと、話しの腰を折ってごめんなさいね。私達も同じ結論になるのだけれど、どう考えても保管・供給の道具になっちゃうのよね」
「パーミア先生、ご安心ください。これからご紹介するのは魔力を保管しない道具になります。保管しなければ国に譲渡した権利に抵触しませんので、問題ないのではないでしょうか?」
「確かにそうだけれど、そこが難しいのよね?タッシュ先生。保管しないで魔力を供給できる道具って出来そうかしら?」
「今の私の知識・技術では不可能ですね。そもそも保管しなければ常に自力で生成する事になりますから、過去から現在に至る迄その様な道具は太古の道具ですら見た事がありませんしどの様な文献にも記載されていません」
「・・・と言う訳なのよ。他力本願で申し訳ないけれどジャッ君なら・・・と思わなくも無いけれど、流石に魔力を生成するなんて・・・有り得ないわよね?」
口ではこう言いながらも“ひょっとして”と言う気持ちは捨てていないパーミアは視線をダイヤジャックに向けているが、当人としてはこの場の仕切りはダイヤクィーンだと理解している事から全く反応していない。
「流石はパーミア先生です。先生が自ら解決策を示していただけました。素晴らしいですね。それにタッシュ先生?先生のお力が有れば、この場の皆様の共同研究の成果として魔力生成の道具を製作販売する事が出来ますよ?」
説明している当事者ダイヤクィーンに加えてロイとダイヤジャックを除く全人の目が点になっており、夢物語が叶ってしまう事を理解したようだ。
辛うじて校長だけは過去にダイヤジャックから渡された指輪が同じ機能を持っていると説明を受けていたので、何とか平静を取り繕っていた。
当人としては太古の道具を発見したと思っていたのだが、今の話しの流れから行けば量産できると言っているのと同義だからだ。
「発表から製作販売、在庫の管理や販売金額に至る迄決定すべき項目は多々ありますので、これからその辺りを詰めさせて頂いても宜しいでしょうか?」
最早道具作成が本当に可能なのかは全く議論する必要が無いと全員の一致した見解になっているのだが、残念な事に頭が付いてこなくなってしまったシェーンはここで脱落している。
「繰り返しになってしまいますが、流石は女神様の親戚の方ですね!私としてはその製法が気になってしまいますが、秘匿事項でしょうから私が承る作業に関して必要な部分だけ開示頂ければと思います!」
驚きよりも感動が勝るタッシュは正直道具に関しては非常に興味があるのだが、元より利益を懐に入れる様な考えは皆無な事から自分に何が出来るのか楽しみになっていた。




