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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(400)環境の変化

 その日の学校は一部では非常に騒がしく、また一部では非常に大人しかった。


 大人しいに該当するのは錬金分野の面々で常に鼻を布で押えるか口で呼吸をするほかなく話す余裕がないばかりか、有ろう事かゼシューと同じ1組に至っては目も痛み始めて涙が出ている者もいる。


 この環境でも授業は行う必要があると真面目になっているタッシュは登壇して何時もの通りに錬金に関する話しをしているのだが、最近では半ば強制的に練成時の魔力に関する話しも織り交ぜている。


 過去強制的に魔力分野との交流やヨーレイの授業を受けさせようとして失敗しており、急激な変化は反発を招くだけで解決しないと考えた知能分野教官のパーミアから普段の授業の中でタッシュの言葉で説明する事を提案されていた。


 生徒の貴族側としては当時ゼシューを筆頭に結束して異なる学校を作ってやろうと意気込んでいたのだが、ミルバ派の最大の脅威となり得るタッシュの権力や財力基盤である魔力保管・供給の道具に関する全ての権利譲渡が終了した今では逆に学校を乗っ取る方が得策だと考えを変えていた。


 つまりゼシュー派の生徒もしっかりと登校して授業に出席しているのだが、今日に限っては早退し始める者が相当数出てしまう。


 ゼシュー本人は早退したくとも絶対に夜になるまで帰ってくるなと釘を刺されており、最悪は子飼いの貴族の家にでも行こうかと思っていたのだが・・・食後にはゼシューを除く全員が既にいなくなっている。


「これでは授業になりませんね。折角ですからゼシュー君。先にお伝えしていた提出資料についてしっかりと向き合いましょうか?」


 ゼシュー自身も自らの匂いに耐えながら嫌々登校しているだけで、そもそも錬金の授業など真面に聞いた事も無ければついて行けるだけの知識がないので放心状態でいた。


 只管時間が経過するのを待っているのだが、そこにタッシュからこのように言われて拒否反応が反射的に出る。


 真剣に生徒と向き合う気概のある教官に生まれ変わっているタッシュなので、例え王族とは言え一生徒と割り切って接している以上は暴言を吐かれ様が気にしておらずに淡々と説明が始まっている。


「まるでジャッ君と話している様だ・・・」


 余りにも響かないのでこのように告げてしまうゼシューをよそに、タッシュの熱い個別指導は続いていた。


 一方で非常に騒がしいのは魔力分野のクラスで、この国において魔力保管・供給と言うタッシュが作成していた道具の有用性はある程度理解していたのだが、その権利を完全に放棄した事から代替道具作成についての案を募集していた。


 ダイヤジャックの非常識な行動や道具の作成をある程度目の当たりにする機会があるこのクラスでは、夢物語と思っている話しでも実現する可能性があると感じているので全員が我先にと案・・・ではなく欲望を口にしている。


「ふはは。中々の案が出ているな。自分としては魔力生成・供給の道具が非常に気に入っているぞ」


 何と言っても権利を譲渡してしまった道具のさらに上を行く道具である事から市場も改めて独占できるし、約束していた魔力保管(・・)はしていないので抵触する事は無いと考えている。


 国王もまさか魔力生成・・・各道具の起動に必要な魔力を生成して供給する道具など想像も出来ないので制約に入れておらず、生徒が本当に夢の道具として口にするレベルになっている。


 実は太古の道具探しの騒動時に魔力生成道具の指輪を校長に渡していたのだが、余りにも効果が高く管理が難しいと判断したのか何故かダイヤジャックに返却されている。


 校長は相当な切れ者なのでこの道具を作成したのはダイヤジャックである可能性が高いと思っており、特段指摘する事なく渡していた。


 一方のダイヤジャックとしても校長に機能の説明をした際の驚き様から一般常識では相当な道具に該当すると判断し、返却された後は特に使用する予定も無いので逆練成して素材に戻している。


 正直タッシュの権力を増加させる必要性を感じていないし資金に関して言えば全く問題なく準備できることから、今の所ゼシューや国王と正面から喧嘩をするつもりも無い。


 基本的にはロイの指示に従ってこの方針としているが、逆に言えば相手が余計な騒動を起こしたり喧嘩を吹っ掛けてきたりすれば半ば強引にダイヤキングがロイを説得して強烈な反撃を受けるだろう。


 幸運な事に今のゼシューはそのような余力はなく、何を置いても付着したこの強烈な匂いを何とかする方に意識の全てが向けられている。


 国王に関してもタッシュの成果に加えて補償として過剰な金銭まで得ている以上は脅威になり得ないと考えており、その様な存在に対して特段何かをするわけも無い。


 今のところ民に対しては各人が購入済みの在庫がある事から大きな変化はないが、やがて在庫が切れて新たに購入を始める際に騒動が起きる可能性がある。


「これまでの、そしてこれからの発展の為にこの金額で販売する事は有り得ないだろう?効果に対して利益が少ない」


 結局より一層儲けたい一心による国王の鶴の一声で売価の上昇が決定され、練成させられているのはタッシュよりもはるかに技術が劣っている王城務めの錬金術師なので効率が悪い事に加えて低賃金で働く羽目になっている。


 慣れていなければ当然手際も悪いわけで、想定している以上の利益を出そうとした場合に効率を上げる事を完全に無視して販売価格に一気に転嫁する手法をとった事から・・・近い内に混乱が起きる事になる。


 そうこうしている内に一瞬だけ騒動になりかけた原因である獣人の二人は今後も定期的に連絡を取るとミルバと約束をして国に戻り平穏を取り戻したかのように見えるのだが、学校内部でも各種道具を使用している事から常に魔力保管・供給の道具を使用しており、使用頻度の関係で劣化も早く新たに購入する時がやってきている。


 過去はタッシュがそのまま設置して費用を請求していたのだが、今回は異なる。


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