(399)報告と
今は一般的には朝食を食べ終えた時間になっており、二つの場所で報告が行われている。
一つ目は王城ともう一つはロイの部屋で、ロイとしてはこれから学校に行こうと思っていた所でダイヤキングから報告があると告げられて相対している。
通常報告は夜に行われている事が殆どなので少々訝しんでおり、嫌な予感が的中してゼシューの大惨事を知る。
「え?本当にゼシュー王子を肥溜めに落としたの?あれって何かの例えで、本当に実行するとは思っていなかったんだけど?」
過去の行動を思い起こせば常識が完全にぶっ飛んでいるので警戒すべきところだったのだが、ロイも世間一般とは相当ズレてきているのでまるで気にしていなかった事がこの結果になっている。
「やり過ぎだとは思うけどやっちゃった事は取り返しがつかないから仕方がないし、確かにあの王子は相当だからきつめの罰はやむを得ないと思うようにするよ。一応大丈夫なんだよね?」
「はい。残念ながら健康ではありますが、匂いが中々取れないらしく難儀しているようです。最新の情報では王城に匂いが籠る様で、愚王の命令で学校に追い出される可能性が高いです」
「えっと、魔力分野や知能分野の教室が臭くなるのは嫌なんだけど、対処できるかな?」
「もちろんです、我が主。匂いの元を完全に消去すれば万事丸く収まります!」
容赦なく消すと平然と言い切るダイヤキングは少し前の自分の話しをまるで理解していないと思っているロイなので、もう少し具体的な対策を付け加える。
「錬金分野以外の場所で匂いを感じない様に対応してもらいたいかな。勿論匂いの元はそのままだよ?寧ろ錬金のクラスにいる方が生徒達の罰や警告にもなるでしょ?っと、タッシュ先生にはその対策をしてあげてくれると良いかな」
「承知しました」
曖昧な事は口に出すべきではなかったと今更ながら反省しているロイだが、慣れとは恐ろしいものでそう時間が経過していない段階で同じ過ちを繰り返す事になるだろう。
一方の王城では露骨に嫌な表情をして嫌悪感を隠そうともしていない国王と、流石にそこまで態度には出せないが少々鼻をつまむか布で覆っている貴族が多数いる。
「ゼシューよ。お前は歩く汚物か?平然とその匂いを王城に撒き散らすその神経が信じられん。もう少し何とかならんのか?」
「も、申し訳ありません、陛下。急ぎご報告したい事がございまして馳せ参じました」
「それ程急ぎの用件か?正直馳せ参じず共問題ないと思うが、余程の内容なのだろうな?」
「そ、それは・・・実は獣人の件ですが、ミルバと接触した様子も無く現在に至っており、陛下の命である登城させる事も現状は非常に難しい状況です」
本来は命令が遂行できないと告げているので国王の機嫌は一気に悪化して叱責される可能性も有ると思っていたのだが、事前の予想に反して全く気にするそぶりを見せずにあしらわれていた。
「そうか。わかった。お前は今日は登校の日だな?しっかりと学んでくるが良い」
ゼシューとしては拍子抜けだが国王としてはこれだけの匂いを発するゼシューと時間を共にしたくない思いから流しており、そもそもミルバに獣人が接触しようが何もできる事は無いだろうとの思いもある事からそう重要な事だとは思っていなかった。
ある意味怪我の功名とも言えるのだが、当然の様に王城に留まって何時もの様にサボる訳にもいかずに登校する羽目になる。
馬車に乗れば狭い空間の為に自ら発している匂いによって気分が悪くなり、嫌々徒歩で匂いを撒き散らしながら歩いているので・・・まるで海を割るかのように人が左右に避けて行く。
最終的には錬金分野の教室に到着するのだが、普段ゼシューが入室した瞬間に忠誠心を示そうと走り寄って挨拶をするボッシュ伯爵の息子ボナンを始めとした貴族達も余りの悪臭に眉をひそめてしまった。
事情が事情だけにロイは少し早く登校してヨーレイの私室に行くと、既に朝食を食べ終えたヨーレイ、パーミア、ミルバ、タッシュ、コーム、ハルカ、エリューンに加えてリンド子爵令嬢のシェーンもいた。
「おはようございます。少し早く来たのに全員いるとは・・・」
「ふはは。丁度良いぞ、ロイ君。今日は少し説明したい事があるからな」
ダイヤジャックはロイが入室した直後に扉を開けてこう告げており、何時もの通りに視線を集めている。
「実はあのバカ王子、不慮の事故で肥溜めに落ちたようだ。性格と同じく非常に薄汚れた場所だったらしく中々匂いが取れていない状況で登校してくるので、間違いなく悪臭が漂うだろう。最も被害を受けるのはタッシュ先生なので、一先ずこれを渡しておく」
もちろん匂いを遮断する道具なので、道具の解析は出来なくともその程度は話しの流れから理解できる為に有難く受け取るタッシュ。
「ありがとうございます。ところでジャッ君?最近女神様をお見掛けしていませんけど、ご健勝ですか?」
「心配する余地がない程に元気だな。寧ろもう少し・・・いや、口は禍の元と言うからな。やめておこう。タッシュ先生が心配していた事は伝えておこう!」
思わず本音でもう少し大人しくして猫を被り続けて欲しいと言いそうになったのだが、当然自分がカード状態の面々に連絡しなくともロイの足元にいるスペードキングから状況報告がなされる可能性が高い事に思い至って言葉を飲み込む。
間に合ったか否かは別の話しだが、その後順にこの場にいるメンバーに匂いに対処できる道具が渡される。
「教室についてはこちらで対処するが、この部屋を含めた各場所はその道具を設置しておけば問題ない」




