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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(397)ダイヤクィーンの活躍

 ゼシューはこの場に獣人の二人がいない前提で嘘を並べているので、このまま放置しては二人に余計な心労が加わって折角楽しかった思い出が無駄になってしまうと判断したダイヤクィーンはゼシューをこき下ろす事を優先する事にした。


 ゼシューが提出した事になっている資料は過去の資料を参考にしているのだが、その過去の資料も良い内容とは言えない。


 提出資料作成を強制的に命令された子飼いの貴族は嫌々ながら作業を行っているので一部分ではあるが理論的に少々問題がある事を把握しながらも、どの道ゼシューでは理解できないと思っていた事もあって訂正する必要が無いと判断していた。


 写すにも労力が必要になる事から露骨に手抜きをしているので、最終的に提出されている資料は更に出来が悪くなっている。


「ここで無能の汚物に質問です。パール山脈からとれる鉱石を使用して練成されている発熱の道具があります。何故パール山脈の鉱石に拘るのでしょうか?」


 この資料のタイトルは練成の効率化で、具体的な例としてパール山脈からとれる鉱石を練成する際には発熱の道具にする事が最も有用だと結論付けていた。


 その理由はパール山脈自体が活火山で常に高温に晒されている為、熱に対して敏感な状態の鉱石を収集できる事が大きな要因とされている。


 事実か否かはさておき、資料提出者が最も重要な部分の知識を持っていないはずがないので敢えて教官の前で声に出して問いかけており、聞かれたゼシューは理由を考え始める。


 自ら資料を仕上げていれば考えるまでも無いのだが、そもそも提出した資料の中身を一切把握していないのでこの質問の意図が分からずにいる。


 冷静になれば資料を読んでこき下ろしている事から関連する質問である事は明白で、事実ゼシュー以外は質問の意図を理解していた。


「何故そのような質問に答える必要があるのか不明だが、余は寛大だからな。今回は特別に答えてやろう」


 少々体が痛むので走って逃げる事は出来ないし、これだけ周囲に敵がいるのであれば一応素直に応じる方が得策だろうと思っている。


「誰の得にもならない無駄な自分語りは不要ですから、早く回答をお願いしますよ?どの様な回答が出てくるのか非常に楽しみです」


 何となく馬鹿にされている事だけは分かるが、一先ずそれらしい事を言えば窮地を脱せるだろうと考えてひねり出した答えがこれだ。


「それは獣人共の国に近い鉱山だからだ。あいつ等は魔法を使えない。つまり熱が必要な際にも道具が必要になる事は明らか。その道具になり得る鉱石を我が国が率先して活用する為に選択しているに過ぎない!」


 ゼシューの中では大局的な視点からの模範解答だと自負しているのだが、第三者が聞くと何を言っているのか理解できない。


「はー。この提出された資料とは随分と見解が異なりますね」


 敢えて結論が書かれている部分をヒラヒラとゼシューの目の前に持って行くダイヤクィーンと、その部分だけは嫌でも見えてしまうので反射的に言い訳を述べているゼシュー。


「・・・コレは数ある理由の一つに過ぎない」


「ぶはは。随分と想像力が豊かなのだな。数ある理由をもう少し問い質したい所だが、此方はお前と違って忙しいのでな。訳の分からん話しを聞く時間がないので退室願おうか?」


 ダイヤジャックに言われず共最も伝えなくてはならない獣人族の王城への登城命令は伝えたので、最後に念を押す形で去る為に立ち上がる。


「誰が好き好んでこんな部屋に来るか!ミルバ!獣人の謁見の件は確かに伝えたぞ!お前の命運は間もなく尽きる!はははは、楽しみだな」


 完全に冤罪だが国家反逆罪も有り得ると思っているゼシューはその時が楽しみになったのか少しだけ痛みから解放されて立ち上がり、さっさと廊下を歩いて行く。


「それでは私もこれで失礼させて頂きます」


 ダイヤクィーンが優雅に一礼してゼシューの後を追う様に退室するのだが、ロイにしてみればこの場でカードに戻る訳にはいかないので出て行ったと思っている。


 実際には・・・直にゼシューに追いついて再び襟首を掴んで強制的に連行していた。


「な・・・誰だ?余は王太子のゼシューだぞ!無礼な!」


 背後からの接触の為に全く相手がわからずにヨーレイの部屋に居た時と同じように藻掻いているのだが、全く状況に変化がないばかりか周囲の景色も高速で流れているので何が起きているのか分からずに困惑している。


「ぐぇ・・・」


 再び放り投げられたゼシューは周囲を確認すると、無表情のダイヤクィーンが見える。


「また貴様か!余を放り投げるとは何事だ!」


「先ほども申しましたが、貴方は淑女に投げ飛ばされる程度の力しかないのでしょうか?」


 こう言われてしまうと自らの弱みを認めるようで何も言えなくなってしまうのだが、そもそも何故この場・・・非常に不快な匂いのする場所に連行されたのかがわからない。


「・・・お前は何故余をこのような場所、具体的な場所がどこなのかは分からないが不快な匂いの充満する場所に連れて来たのだ!」


 容赦なく連行して放り投げたのは間違いなく目の前の女性だと確信しており・・・そもそも他に人がいないのでダイヤクィーンが犯人である事は確定するので理由を問いかけると、想像もしていなかった答えが返ってくる。


「相変わらず頭がスカスカですね。ジャッ君がヨーレイ先生の部屋で貴方に何をするべきか、明確に口にしていたでしょう?」


 確かに肥溜めにでも突っ込んでおけと言っていた事は記憶に残っているのだが、まさか王族を本当に肥溜めに落とすわけがないと思って油断していた。


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