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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
396/427

(395)見分け

「き、今日の授業はここまでになります。皆さん、今日の内容を時間のある時に自宅で反復してみてください」


 一日の授業が終了して何時もの通りにヨーレイの私室に集合しているのだが、この場にミルバはいない。


 ミルバ本人は町の散策が楽しくて時間が経つのも忘れているのだが、そこに好まない来訪者がやってくる。


「・・・おい。ミルバは何処だ?朝から外に出たと聞いているぞ。大した学問ではないから授業を受けず共問題ないのだろうな。お前等は気楽で良いな?」


 ゼシューは獣人二人を国王の前に連れて行く必要がある事から、二人の目的であるミルバに釘を刺すつもりでこの場に来ている


 まさか昨日の内に接触済みで、今は人に姿を変えて街中で観光を楽しんでいるとは夢にも思っていない。


 相変わらず無駄な行動力だけは有るな・・・と思っているダイヤジャックが対応しようとするのだが、それよりも早くタッシュが立ち上がる。


「ゼシュー()。君は他の人にとやかく言えるレベルではないでしょう?課題の提出期限はとっくに過ぎていますよ?」


「お前・・・何度も言うが随分と偉くなったなぁ?それにその目は節穴か?余は誰よりも早く提出しただろうが!」


「こちらも何度も伝えていますが、過去の模範解答を丸写しした・・・いいえ、筆跡から丸写しさせた(・・・)提出資料は採点の対象になりません。当然これから出す課題に対しても、内容が過去に提出済みの資料と同じであった場合には採点しませんよ?」


 指摘の通りにゼシューは自分で何かをすると言う事が無いので手下に提出物を用意するように告げているだけで、受け取った資料を中身など一切確認せずに出している。


 これまでは立場や教官であるタッシュがゼシュー派であった事から全く問題なく過ごせていたのだが、最早タッシュは教師の鑑とも言える存在になっているのでフザケタ手口は通用しない。


「ふはははは。おい!そこの木っ端。お前はどうしようもない奴だな。どうせお前の事だから提出した資料の中身も知らないのではないか?」


 余りにも情けない内容だが事実だと確信しているのでダイヤジャックが割り込むと、本当に困ったような表情でタッシュが応じる。


「そうなのですよ。私の誤解によって生徒の努力を踏み躙る訳には行きませんから一部質問をしてみましたが・・・結果は想像の通りですね」


 完全にバカにされている上に目的のミルバもいない事からこの場に居ても碌な事にはならないと踵を返すと、廊下の先から女性二人を伴ったミルバが見えた。


 警戒度合いは過去と異なり相当下げているのでミルバの近接を直近で知る事になってしまったダイヤジャックを含むカードの者達は、この場をどうやり過ごすのかをあっという間に話し合い総意をロイに確認している。


 その結果三人の後ろにもう一人の人影が見えており、微笑を携えたダイヤクィーンが顕現していた。


「ミル・・・」


 ゼシューは直にミルバに命令を出そうとした所でダイヤクィーンに気が付きその美貌に言葉を失っており、正にカードの者達の作戦がこれ以上ない程成果を出している。


 事情は把握しているダイヤクィーンなので三人を軽く抜かしざまに軽く挨拶をしており、そのまま少しだけ早足でヨーレイの私室入り口に到達して綺麗なカーテシーを見せる。


 ロイに見てもらいたいその一心で無駄に高い基礎能力を使って優雅な姿勢を意識しているおかげか、誰よりも近接している状態のゼシューは半分口を開けたまま何も反応できていない。


「皆様ご歓談中失礼します。随分と場違いな汚物が来ているようですので、匂いが気になりはせ参じてしまいました。ジャッ君?この汚物は私の方で処理しても良いですよね?」


「うむ。肥溜めにでも突っ込んでおけば良いと思うぞ?」


 流石にコレは冗談で比喩表現だろうと思っているロイは一切口を挟まないのだが、言われたゼシューは流石に看過できない事から意識を取り戻す。


「・・・おい。余が寛大になれるのにも限度があるぞ?理解できていると思うが、余はこの国の王太子だ。どれだけの力があるのか理解しているのだろうな?」


 一般的な貴族や民であればこの一言で震えあがってしまうのだが、カードの者やその影響を受けているタッシュが怯える訳も無い。


 とは言えこの場には打たれ弱いヨーレイもいる事から何かしらの対策は必要だと直に動くダイヤクィーンは、少し前に話しが出ていた提出物が丁度良いネタになると考えた。


「タッシュ先生?先程話されていたこの汚物の提出物。今見せて頂く事は出来ますか?」


「はい。少々お待ちください」


 走り去っていくタッシュを見ているダイヤクィーンはこれまでの情報からふと気になった事があり、思わずダイヤジャックに確認する。


「ジャッ君。タッシュ先生は私達の事・・・いいえ、少なくとも私がスペードクィーンでない事は理解されているようですね?」


「え?」


 召喚者であるロイでさえも首元のチョーカーを見なければ判別できないので、思わず声が出てしまった。


「ふははは。驚く事にその様だな。タッシュ先生はスペードクィーンの事だけは女神さまと呼びが、今は全くその素振りを見せていないからな」


 突然訳の分からない話しになったので口を挟めなかったゼシューだが、間もなく嫌でも喚き散らす事態に陥る事になる。


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