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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(394)面会

 ミルバ一行がヨーレイの私室に入るとハルカとエリューンがソファーから立ち上がり、ハルカはドアの方向に数歩移動した後に深く頭を下げながら挨拶をする。


 エリューンは侍女らしく一歩引いた位置にいるのだが、主であるハルカ同様に深く頭を下げている。


 ミルバとしては獣人族がこの場に来ていると告げられていたのだが、何処をどう見ても人に見えるので多少の困惑は有る。


「えっと、私がミルバです。お二人とは何処でお会いしましたでしょうか?」


 ミルバはその性格から困っている人を放置する事は出来ずに結構人助けをしていたのだが、その大半が人族の為に全員の顔を覚えているわけでは無い。


 しかし種族が異なれば相当記憶に残るはずなので今回の相手も難なく思い出す事が出来ると思っていたのだが、どう見ても獣人族には見えない為に当てが完全に外れている。


「・・・あっ!あの、コレを外しても大丈夫でしょうか?」


 ミルバの言葉を受けて今は人族に見せる道具を使用していた事を思い出したのか外したいと告げるハルカは、この場にはこの道具を直接渡してくれたダイヤクィーンがいないので彼女の仲間と判断しているダイヤジャックに問いかける。


「もちろん問題ないぞ?」


 成り行きを黙って見ているロイは、道具を一つ外すのにも許可を得る律儀な人物だと感心している。


 当然の様に獣人としての姿が露わになるので流石のミルバも過去に助けた事がある人物だと思い出した様だ。


「あ!思い出しました。態々このような所に来ていただいて、ありがとうございます!」


 お礼を伝えに来た存在が逆にお礼を言われているので暫くは互いがお礼を言い合う時間が経過している。


 ダイヤジャックは一連の様子を見ながら人としての行動について学んではいるが、これまでの実績を見るにあまり成果は出ていないので今回も有益な結果となる可能性は低いだろう。


「ミルバ様。あの時は本当にありがとうございました。おかげで無事に祖国に帰る事が出来ました。今日はお会いできて嬉しかったです。宜しければ、今後もご都合の良い日にお話しをさせて頂けますでしょうか?」


 ハルカもこれ以上お礼を言い合ってはこの場にいる他の面々が余計な気を遣うし時間も無駄にしてしまうと思い至ったのか、今後の話しに移行している。


「それは嬉しいですけど、ハルカさんは国に戻らなくても大丈夫なのですか?」


 獣人族が住む国は隣接国家であるが、そもそもその国のどこに住んでいるのかも分からないし立場も不明・・・とは言え侍女のように見えるエリューンがいる時点である程度の地位を持っているのだろうと把握はしているが、どの立場であったとしても個人で異国に居続けては問題があるのではないかと思っているミルバ。


 ミルバ自身も容易に出国できないのは立ち位置としては非常に悪いながらも一応王族である事から、他国に対して身分が明らかになった際に何らかの大きなトラブルの発端になりかねないし国に残す事になる唯一の支えであるハルバン伯爵にも迷惑をかける事になるからだ。


「数日であれば問題ありません。ご配慮有難うございます。正直に申し上げますと、これだけ早くミルバ様にお会いできるとは思っておりませんでした。事前調査で派遣した者からの報告でやはり簡単に入国できそうにないと伺っておりましたので、予想外に時間が余っています」


 ロイは何となくこの会話を聞いて・・・この流れで行けば帰国までの期間はミルバとハルカは共に過ごして学校や周辺を案内するのだろうと漠然と思っている。


 正直誰もが同じ事を考えているので既にその流れになっており、宿泊はタッシュの部屋の一つが使用される事まで決定した。


 残念な事に明日は平日で授業があるのだが、普段真面目に授業を受けているので先行して学習できているし場合によっては補修を行う事で遅れが出た場合には簡単に取り戻せる事を知っているヨーレイが気を利かせて二日ほどは休んで良いと告げている。


 この国でも日中の町を歩くには休日よりも平日の方が人ごみは少なくて済む事から、少ない労力で色々な場所を訪問する事が出来る。


「ありがとうございます、ヨーレイ先生。申し訳ありませんがお言葉に甘えますね?」


 授業を休むと明言しているので非常に申し訳ない気持ちになっているハルカだが、当人のミルバを始めとして教官のヨーレイも全く気にするそぶりを見せてはいない。


「あの・・・本当に申し訳ありません。ご迷惑ではありませんか?」


「いやいや、そんな事は有りませんよ。せっかく来ていただいた方に何もせずにお帰り頂く事はできませんし、私も一緒に町を見て回りたいですからね!」


 ミルバは王城での生活も厳しく自由な時間がなかったし余計な指摘を避けるために外に出る時は殆どが学校に向かうだけの非常に大人しい生活をしていた事から、観光目的で町を散策した事は無い。


 時折ゼシューや国王から無駄なお使いを頼まれる事は有り町に向かう事もあったが、それだけだ。


「ミルバ君もこう言っているし、折角だから楽しんでくれば良いのではないか?ミルバ君はヨーレイ先生から認められるほど優秀だからな。正直数日授業を休もうが何も問題はないぞ?」


 ミルバの事情を知っているロイが背中を押す為にこっそりとスペードキングを通じてダイヤジャックに指示しており、意図を酌んで懸念点を消しに行った結果提言が受け入れられる。


 翌日はミルバとハルカ、そして従者のエリューンはタッシュの私室で生活をしている為に朝学校から出て町に繰り出す際には生徒達から目撃されているのだが、一部は魔力分野のミルバを未だに見下しているし他の女性二人は見た事も無いので気にも留めていなかった。


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