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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
394/433

(393)相対

 獣人二人に対して壁に向かって歩くように告げるダイヤジャック。


「ふははは、お二人もダイヤクィーンに続くと良いぞ?」


 自信満々である事や事実直前にダイヤクィーンがこの壁を通過した事から一歩進み始めるのだが・・・思わず疑問に思った事を口にしてしまう。


「あの・・・私達がこの壁に見える場所を潜れるのであれば、外敵も容易に侵入してしまうのではないでしょうか?民が危険に晒されませんか?」


 事情を説明していないので外敵進入に対する疑問は当然なのだが、そこに加えて民を案じる言葉がすんなりと出てきている事からダイヤジャックはこの二人を非常に好意的に受け止めている。


 日々人々の思惑、行動、そしてあまり知りたくはないが王侯貴族について学ばざるを得ないと思っているので、ダイヤジャックは立場のある存在が二極化していると判断していた。


 一つは権力に媚び諂うが自らも権力を追い求めて周囲の被害を一切考慮しないタイプと、もう一つは目の前のハルカと呼ばれていた存在の様に稀ではあるが民を思いやる慈愛の心を持っている存在か・・・だ。


「成程。ミルバ君と接触できる人物であるのは納得だ。疑問にお答えしよう。コレはとある制御を行っているので普通の存在では侵入する事は不可能だ。もちろんお二人は該当しないので進んでもらいたい」


 ミルバとも直接的に触れ合い友人としての意識があるのでセリフの前半部分は勝手な賞賛が出てしまい、やはり通常の人々が備えている一般常識がない為におかしな内容になっている。


 単純に道中助けてもらっただけなのに、何故かミルバと接触できる素晴らしい人物と称えているのだから・・・


「え?あの・・・はい。わかりました。行きましょう?エリューン」


 どのような回答が正解なのかわからないが進めと言われているので否とは言えずに、侍女と共に目をつぶって壁に向かって歩き出す。


「目を開けて頂けますでしょうか?」


 優しいダイヤクィーンの声が聞こえたので二人共目を開けると目の前には大きな宿らしき建物が見え、建屋の横にある脇道からは大きな海が見える。


 これはミューゼ王国に入国しなければ絶対に見えない景色である事から、慌てて振り返ると・・・間違いなく防壁が見えた。


「これほどの技術をお持ちとは・・・」


 エリューンとハルカは不思議な事象を自ら体験してしまった以上は現実を認める他なく、この国がどれほどの技術を持っているのか考えて恐怖すら覚えている。


 確かに人族と獣人族の交流はゼロではないが限りなくゼロに近いと言っても過言ではなく、その環境から大多数は互いを敵と認識している。


 ハルカやエリューンが該当するかと言われればそのような事は無いのだが、だからと言って人族も同じ意識かと言えばそのような事も無いと知っている為に攻められた際には防ぐ術がないと不安になっていた。


 実際にはカードの者達だからできる事なのだが、そこまで理解できるほどの情報も無ければ知識も無い。


 その後脇道から表通りに出て普通に学校に入るのだが、事前にダイヤクィーンは離脱している。


「彼方に見えるのがミルバ様のいらっしゃる学校になります。ここからはジャッ君がご案内いたしますので、私はこちらで失礼いたしますね?」


 再び余計な騒動が起きないように配慮して離脱を宣言しており、目的地が見えていれば大きな問題は起きないだろうと美しい所作で一礼すると返事を待たずに踵を返して雑踏の中に消えて行く。


 残念ながら今は授業中の為に三人は普通に学校に入るが教室には向かわず、ヨーレイの私室でミルバが来るのを待っている。


 ロイにはスペードキングを通して情報を流しているし、ダイヤジャックは警報の対応をするために欠席する旨ヨーレイに伝えているので魔力分野の教室では普通に授業が進んでいる。


 やがてチャイムが鳴り学校全体がざわついていると、ダイヤジャックは間もなくミルバがこの場に来ると二人に告げる。


「間もなくミルバ君がこの場所に来るだろう。もう少しだけ待っていてもらいたい」


 ミルバ、ロイ、シェーンがヨーレイと共に話しながら魔力分野の教室を出てヨーレイの私室に向かっていたのだが、タッシュに呼び止められる。


「あ・・・皆さん。お疲れさまでした。女神様からの伝言をお伝えします。過去にミルバ様に助けられた獣人の方がお礼に来ているそうで、ヨーレイ先生の私室でジャッ君と共に待っているそうです。今回の警報の要因となってしまった方々ですね」


 この場にパーミアがいれば獣人を難なく入国させてヨーレイの私室に連れて来たのはスペードクィーンだと判断してダイヤジャック一族が漏れなく有り得ない力を持っていると把握する事が出来るのだが、この場の面々は改めてミルバは懐が深い人物なのだと思うだけだった。


 タッシュに至っては女神であるスペードクィーンの言葉を伝えているだけなので、その内容に対して深く詮索する意識は全くない。


「ミルバ君。俺は他種族との関係は良く分からないけど、ミルバ君が流石だって事は改めて理解したよ」


「え?えっと、どの様な人だったかは思い出せないけど、当たり前のことをしただけだよ?」


 褒められ慣れていないのかミルバはアワアワしながらも、定例の流れに逆らわずにヨーレイの私室に向かう一行。


「あ!ミルバ様!!やっとお会いする事が出来ました!!」


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