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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(389)見た目で判断

 ここは王城である為に自らの手コマともいえるクラスメイトは皆無であり、時間的にも彼らの邸宅に訪問して引きずり出してから門に向かうことはできないゼシュー。


 せいぜい自らの護衛騎士を連れていく程度しかできないのだが、ここで不安な表情や態度を見せようものなら前回の報告に対する疑念を与えることになり今後の立ち位置が怪しくなることから珍しく素直に国王の提言を受け入れる。


「わかりました。このゼシュー・・・次はないとしっかりと警告をしてきましょう。おい、行くぞ!」


 これほど明確に第三者がいる中で国王の命令によって出動する以上は前回のように門の上から様子を見てやり過ごすことなどできないと理解している騎士は、自信満々な態度を維持しているゼシューに僅かながらの期待を持って同行する。


 王城を出て門に近づいており・・・敵対する可能性が高いと思っている存在との対峙前に、目の前を歩いている主であるゼシューの背後から恐る恐る真意を問いかける。


「ゼシュー王子。その・・・今回はどのように対処するのでしょうか?」


「それはお前次第だ」


「え!?・・・え!?」


 何故か一介の護衛騎士次第と言われてしまい全く何が言いたいのかわからない騎士は当然の反応を示すのだが、ゼシューはそれ以上何かを告げてくることはなかった。


 騎士としては不安しかない中で何をどうすれば良いのかを考えながら動いているが、出てくる考えは纏まりがなく現実逃避の案ばかり。


 やがて門をくぐる位置にまで到達すると、夜にもかかわらず周辺の民が不安そうに屯しているので視線を集めてしまう。


「ゼシュー王子が来られた。これで安心だろう」


 無駄に自らの偽りの功績を広めていたためにこのような言葉が漏れ聞こえてしまい逆に自分自身を追い詰める結果になっているが、その声を聞いて尚ゼシューは顔色一つ変えずに獣人二人に近接していく。


「そこの二人。余は第二王子のゼシューである。何をしに来た?入国するでもなく・・・いや、できないのは理解できるが、こちらの民も不安になっているのでな」


 第三者から見ると通常の対応ができており、全てを丸投げされると思っていた騎士も内心では相当驚いている。


 では何故ゼシューが直前まで騎士に対応を丸投げすると明言していたのに行動を変えたのかといえば、周囲の民からの期待の視線が有ったことも僅かにあるが・・・獣人二人が前回とは大きく異なり見た目可愛らしい女性二人だったからだ。


 仮に何かしらトラブルになっても自ら装備している道具の力でどうにでもなると思っているところもあるが、それ以上に自らの権威を見せつけて手の内に入れたい邪な気持ちが勝っている相変わらず薄っぺらい存在のゼシュー。


「それは・・・その、とあるお方を探しておりまして」


 一人がオズオズと口を開き、聞かれたことに対して素直に答えている。


「それは人族なのだな?そこについては後で詳しく聞くとして、前回同じようにこの場に来た連中の用件は何だったのだ?」


 頭の回転が速い人物がこのセリフを聞けば前回は全く交渉をしていない可能性が高いと気が付かれるセリフを吐いているのだが、流石に交渉中の第二王子に近接するような存在はいないので情報の漏洩も無い。


「同じ用件で、私の探し人が本当にこちらにいらっしゃるのかを調査していました」


「フム、理解した。その調査の結果対象者がいると確定したので、用件がある当人がここまでやってきた。合っているか?」


 視線は会話をしていないもう一人の獣人に向けられているので、女性はそこも踏まえた回答をする。


「はい。ご指摘の通りです。そしてこちらは私の従者です。先に調査をさせていただきました面々は、国内での仕事があるために今日は同行させておりません」


 この言葉だけ聞けば獣人族国家においてある程度の地位を確立していることは把握できるのだが、ゼシューが理解できるのかは別になる。


「理解した。だが直接入国していないところから把握できていると判断するが、人族と獣人族間の交流は無いと言って良い状況なのは知っているな?その上での探し人となると、どのような経緯なのか余としても把握する必要がある」


 言っていることは正論だが、ゼシューの内心では探し人の相手によっては具体的な手法は後々考えるにしても基本的に立場を使って強制的にこの獣人を奪うことを目的として聞いているだけで、決して民や国民、ましては目の前の獣人の為に聞いているわけではない。


 この時点で獣人族の目的を予想していたパーミア達は見当違いのことを言っていたことになるのだが、あくまで同一人物が襲来したことを前提とした推測になっているので仕方がないだろう。


 その間にも話しは進んでおり、なぜかゼシューの表情には怒りやら呆れやらが見られるようになっている。


 この国の国民は大半がオッドアイで透き通るような白髪をしているのだが、その中でも体格やら顔の特徴を聞いているうちにどう考えても相手がミルバだと思えたからだ。


「・・・それで、その男を何故探している?」


 場合によっては獣人族に情報漏洩した疑惑によって確実に追い落とせると思っているので、いつもとは異なり直ぐに切れ散らかすことなく慎重に問いかけている。


「お恥ずかしい話しになりますが、道に迷って食料も尽き・・・道行く人々にお願いすることもできずに木陰に隠れていたのですが、休憩をされるためかそこで出会い助けて頂いたのです。あのお方の優しい笑顔を忘れることができません」


 惚気まで始まってしまったので流石に自分に靡くことはないだろうと思うとともに、その行動も含めて間違いなく対象がミルバであると確信した。


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