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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(388)再度襲来

 ロイやダイヤジャックは獣人族が魔法を避けると聞いても驚く事は無い。


 魔法によっては非常に遅い魔法がある事も事実ではあるが、ロイは魔法を避ける以前に魔法を認識する事もできない為にその凄さがピンとこない上、攻撃を受けたとしてもカードの者達によって意識の外から完全に守られる事になる為に避ける必要性を感じていない。


 当然ダイヤジャックを含むカードの者達は同格が行使する魔法であれば話しは別だがそれ以外の有象無象の魔法など仮に直撃してもダメージを受ける事は無いと自負しているので、脅威となり得ない魔法に対して何も思う所は無い。


 獣人の特性についての知識が得られたと思っている程度なのだが、ミルバやシェーンはミューゼ王国の危機に繋がる所まで一気に話しが広がっている。


 仮に王族だとしても学友だとの意識があり、またそのように接する事が望みだと伝え続けていたおかげかシェーンも今は素のままで話し続けている。


「何をしに来たのかは知らないけど、外見だけで相当な強さだと分かる人だったらしいじゃない?仮に・・・本当に仮にだけど、私達の生活が脅かされたりしないかな?」


「うーん、シェーンさんの心配は良く分かるよ。私ももう少し情報を集めたい所だけど、今更王城に戻っても碌な情報を得られないばかりか二度と出られなくなる可能性すらありそうで、正直に言えば今知っている以上の情報を得る事は出来ないんだ」


 推測を基に話している教師側と生徒側の会話を黙って聞いているコームは自ら調べ上げた情報から彼等(獣人)が何らかの調査だけを行って帰還したのでゼシューが交渉した事実はない事を知っているが、シェーンの心配事を解消するような情報は持っていない。


 パーミアには既にその旨伝えているのだが、説明する前に絶対にゼシューは真面な交渉などできる人材ではないと正しい予想を告げられていた。


 今この場でもコームの情報を知りつつ独自の見解だけを話しているパーミアなので、余計な事は言わずに黙ってこの部屋に飛び交っている言葉を聞いているコーム。


 最近では放課後の集いはこの話しでもちきりになっており、ロイとダイヤジャックは半歩引いているように見える。


 ロイはこの様な話しが続いた際に少しだけ調査する様にカードの者達に命じた結果、ミューゼ王国周辺に侵攻してくるような存在は現時点で発見できない上に、仮に獣人族が襲ってきても全く脅威にならないと報告を受けていたので安心している。


 改めてカードの者基準の判断を鵜呑みにしてしまっているのだが、そもそも自らの能力である上に常にこのような状況に晒されている為にこの状況が改善される事は無いだろう。


「ロイ君、ジャッ君。お暇でしたらこちらは如何でしょうか?」


 数日この状況が続くのを見ればロイとダイヤジャックがこの話題に興味がないと判断できるので、コームは二人にそっと話しかけてお茶を勧める。


 結果的に三つのグループとなり、各自が勝手に盛り上がっている所に再び警報が鳴り響く。


「ヨーレイ先生、パーミア先生。恐らく獣人が再び来たのだと思いますが、今回もそのまま帰還すると思いますか?」


「うーん、ちょっとそれは無いんじゃないかしら?タッシュ先生もそう思って聞いているのでしょう?実は彼等、前回何らかの調査をして帰ったらしいのよ。でしょ、コーム?」


 突然話しを振られたコームだが、流石に特殊な店の店員を長く経験して生き残った実績から難なく反応する。


「はい。何を調査していたのかは不明ですが、何かしら調査の上で去って行った事だけは間違いありません。結構な時間調査をしていた事を考慮すれば、再調査の為にこの場に来るとは考え辛いのではないでしょうか」


 これだけ聞けば危機的状況に陥りかねないので、ヨーレイは焦ってしまう。


「そ、それは大変な事態になりませんか?パーミア先生、な、何か対策は有りませんか?」


「落ち着いて、ヨーちゃん!何れにしても今すぐ騒動が起きる訳じゃないと思うわよ?」


 教師陣はこのような感じで、その様子を静観しているロイとダイヤジャック。


 一方の生徒二人・・・ミルバとシェーンもヨーレイ同様に焦っている様だ。


「ミルバ君!どうしよう!!家族が心配だから私家に帰るね!」


「・・・それが良いかもしれない。でも、家も安全とは言い難い状況に陥った事を考えると、皆さんを連れてこの場に来た方が良いと思う。ヨーレイ先生、大丈夫ですよね?」


 シェーンの家族はリンド子爵一家だが彼女の性格を考えれば数は少ないながら使用人も保護対象としてこの場に連れて来る可能性が高い為に、この部屋の主であるヨーレイに確認をしている。


 同時刻・・・当然王城にも警報に加えて再び獣人族襲来の報告がなされているので、前回しっかりと対応して撤収させたと言い切っていたゼシューが国王に呼ばれている。


「ゼシューよ。何故この短い期間で獣人が再び来ているのだ?お前の報告では我が国の技術を調査しに来た連中にしっかりと言い聞かせて、撤収させたのだろう?」


 まるで嘘の報告を上げていたので、比較的短いスパンで再び襲来されてしまっては言い訳の内容が浮かんでこない。


 形だけ錬金分野の生徒として学校に通っていたが、王族という権力を笠に真面に技術を磨くようなことはせずに錬金以外の勉学も一切していないので頭の回転も遅く良い案が浮かぶわけもない。


「そ、それは・・・あいつ等はこちらの言い分を聞いて納得したのかと思いましたが、おそらく見かけと同じく頭脳も筋肉でできているのかもしれません。つまり、すっかりと忘れて同じことをしに来ている可能性が高いのではないでしょうか」


 必死に捻りだした回答がコレで誰がどう考えてもこの言葉に同意できる人物はいないが、何かしらの対処をしなくてはならないのは共通認識のために国王はゼシューに対応を一任する。


「・・・ゼシュー。ならばお前が再びしっかりと言い含めてこい。三度同じ事が起こらないように対処するのだ。当然その程度、お前ならばできるな?」


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