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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(385)襲来

 女神の親戚であり道具作成において間違いなく自らとは格別した実力を持っている存在のダイヤジャックに師事できる可能性が示されて目を輝かせているタッシュだが、どう考えても学校の状況が安定しているとは言い難いのでロイがカードの者を通して条件を伝えていた。


 その条件こそ学校の安定だったのだが、本来は学校といった非常に限られた領域ではなく国家が安定するべきだ。


 ロイはこの国に入国してから積極的に国家規模の騒動に関与することは避けると決めており、結果的にミルバと友人になってはいるが強引に王位を継がせるような行動をとっていない。


 そんな中で国家平定ではなく学校を安定させた後であればタッシュの技術力を上げても良いと思っており、そうすることで間違いなくタッシュがゼシュー派から離脱した事もあってミルバの立ち位置もある程度確保できるだろうと考えていた。


―――ウゥ~・・・ウゥ~―――


 錬金分野の教室にいても本来の生徒が誰もいないので全員揃って移動すると突如いたる所からサイレンが鳴り、ロイは初めての経験なので何が起きたのか多少動揺している。


「ロイ君、ミルバ君、ジャッ君、ヨーレイ先生とパーミア先生や生徒の皆さん!この学校、そして各教室は私の道具で補強してあるので問題ありませんよ」


 タッシュが魔力分野にいる生徒達に安心してもらうために安全であると説明しているが、この話しだけ聞けば危ない状況に陥っていることだけしか理解できないロイ。


「あの、タッシュ先生?このサイレンって初めて聞きましたけど、どのような意図があるのでしょうか?」


「そうか。ロイ君は理解できない状況だったね。申し訳ない。このサイレン、種類や相手は不明ながらも何らかの攻撃を受ける可能性や受けてしまった際に鳴る事になっているんだよ。私の感覚では、何も破壊されたような音はしないから攻撃を受ける可能性に対する注意喚起だと思うよ」


「・・・それって、危ないですよね?」


「そうは言っても、実際には頻繁ではないながらもある程度の頻度で鳴っているんだ。直近では、ボッシュ伯爵家に海の方向から攻撃が着弾した直後に鳴っていたね」


「あー、あの時!私もよく覚えているわよ!あまりにも攻撃が早かったから、ボッシュ伯爵家が破壊されてから少しして鳴っていたわね」


 タッシュの説明にパーミアが追随しており、過去の経験からそう危険はないのだろうと口調や表情から読み取ることができたロイ。


「ロイ君。タッシュ先生たちの言う通りにそれほど珍しいことではないから安心してほしい。事実ロイ君が来てから、大きく被害を受けた場所は見当たらなかったでしょ?それこそがある程度安全を確保できている証拠だと思ってほしいな」


「わかった。ありがとうミルバ君。先生達もありがとうございました」


 ミルバ達の説明を聞いているロイだが、同時にジョーカーがロイの安全を確保するために勝手に顕現して得た情報・・・取るに足らない外敵が城壁の外に屯しているとの情報を展開している。


 ロイからすればこれ以上ないほどに信頼できる情報なので、とりあえず今回は全く問題ないと確信することができて安堵している。


 そのまま教室でどのように三分野に分かれている学問を効率的に学ぶのが良いのかについて話しが始まり、ロイやミルバも生徒の立場として意見を求められている。


「お前ら!何を悠長にしている!サイレンは聞こえていただろうが!!」


 そこに勝手な事を言って教室を後にしていたゼシューが移動済みのタッシュを探していたのか突然乱入しており、口調は非常に焦っている。


「ゼシュー()。どのような時でも落ち着いて対応することが求められますよ?」


「く、君?・・・お前、突然ずいぶんと偉くなったなぁ?余の立場を忘れたわけではあるまいな?」


「存じておりますよ。第二王子であることは理解しておりますがここは学び舎。全ての生徒が等しく知識を得て経験を積む場所です。そうする事で生徒が切磋琢磨して実力が上がり、結果的に国力も上がるのですよ?当然そこに立場による区別はあり得ません。ご理解いただけますよね?」


「それは詭弁だろうが!いい加減に目を覚ませ!」


 隔絶した力を持つ黒い存在に乗っ取られたタッシュだがカードの者達によって結果的に救われた際に悪意もすっかり分離されており、正に教師の鑑となる存在になっているのでゼシューの言葉は過去とは異なって一切響かない。


「寝ているわけではありませんから、ご心配には及びません」


 ゼシューの言葉の真の意味を理解しつつも一般的な受け答えで流すように回答しているが、これ以上は何を言っても無駄だろうとタッシュはゼシューから視線を外す。


 完全に相手にされていないことを理解してしまったゼシューは相当怒りの感情に支配されているが、こちらも非常に重要な用件でこの場に来たことを思い出したのか普段とは異なり再び口を開く。


「おい!聞け!!城壁外に獣共が来ていやがる!常にミューゼ王国に粉をかけている連中だ。何をするのかわからない以上、最大限の警戒が必要だろうが!」


「え?獣?」


 ロイが足元のスペードキングから受け取った情報では獣など一言も出てこなかったので、獣なのか魔獣なのか、何等かの危険な存在が様子を窺っているのかと思っている。


 冷静に報告された内容を思い出すと取るに足らない存在がいるとの報告であったため、その判断基準がカードの者達になっていることを今更ながら思い出して少々焦っている。


「ロイ君。実はこのミューゼ王国に隣接している国は他種族が住んでいて、一部獣人と呼ばれる存在もいるんだ。海から得られる利益を欲しているのか、隙を見せれば乗り込まれる可能性があるらしい(・・・)よ」


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