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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(380)お祝い

 現在のミルバ派において最も危険な存在と認識されているジャッ君ことダイヤジャックだが、その当人が・・・何故かミルバ派にタッシュが加わった状態での今後の活動において最も有用と思われる道具の権利を譲渡する様にアドバイスしている。


 当然勝手に独断で話しているのではなく、裏でしっかりとダイヤキングやロイと相談のうえで行動している。


 貴族や国王ステヴァンから見てもまさかの行動に見えているのだが、タッシュが持っている最大の権力基盤を難なく手放せると思えるほどの考え無しなのだろうと判断したのか、余計な事を言っては翻しかねないと何も反応していない為に静寂が訪れている。


「え?ジャッ君・・・それでも良いのかな?ミルバ様はどう思いますか?」


 言われたタッシュも困惑しているのが分かる程の口ぶりであり、最終的には権利を譲渡すると明言した相手であるミルバに判断を委ねている。


 急転直下でこのような環境になったミルバもどのように答えるのが正解なのか全く分からずに黙ってしまうと、スペードクィーンが助け舟を出す。


「ジャッ君のアドバイスの通りで良いかと思いますよ?過去の実績は過去と割り切って、新しい品を開発する方が意欲的ではないでしょうか?」


「その通りです女神様!分かりました。明日にでも全ての在庫と作成方法をお渡しします!」


 ミルバの回答を待つまでも無く崇拝するスペードクィーンの言葉に肯定の意を示しているタッシュと、道具が手に入るのであればタッシュが敵に寝返っても大きな影響はないと安堵しているゼシュー派。


 本来の目的が達成できたのかはさておきそのまま何となくパーティーはお開きとなったのか徐々に人が少なくなっており、国王が退場しているので誰に挨拶するでもなくミルバ一行も学校に戻る。


 ミルバは最早王城に住む事は諦めているようで、同じくタッシュも学校の私室を生活の拠点とする様だ。


「ミルバ様。私はこれからヨーレイ先生にも謝罪をしなくてはなりませんので、ここで失礼します。彼方の部屋を自由にお使いください」


 ヨーレイの部屋と比べると圧倒的に広いタッシュの部屋なので、何故か一室を譲渡する形でミルバの生活場所が決定した。


「あ、ありがとうございます」


 タッシュの余りの激変に未だに感情が付いて行かないミルバだが、実はタッシュ・・・少し前には自らの努力が認められた事や魔力が非常に少ない事を克服できた喜び、更にはゼシューに認められた事もあって少し道を踏み外す行動をとっていたが、基本的には真面目で努力家だった。


 故にあれほどの道具を開発できており、きっかけは微妙ながらも元のタッシュに戻ったとも言えるのだが・・・元の状態を知らないミルバとしてはやはり少し鳥肌が立っている。


 タッシュは宣言通りにヨーレイの私室に向かって行った様でもうこの場にはいない為、ミルバはソファーに座って気持ちを落ち着けようとしていた。


「ふははは、お邪魔するぞミルバ君!」


 心底強い味方でありながらも暴走すると何をしでかすかわからない存在であるダイヤジャックの声が聞こえ、この環境に慣れていないミルバとしては沈む素振りが全くない助け舟が来たと笑顔で腰を上げる。


「お、お邪魔します」


 どう考えてもヨーレイの声がしており、足音やざわつき具合から他にも来訪者がいる様だ。


 与えられた部屋の扉を開けると予想通りにダイヤジャック、ヨーレイ、パーミア、ロイ、シェーン、スペードクィーン、そして部屋の主であるタッシュがいた。


「今日はタッシュ先生が生まれ変わり、ヨーレイ先生やパーミア先生と教官として新たな関係が出来たお祝いだ。このジャッ君が準備をしたので是非とも楽しんでもらいたい!」


 一般の男性とは異なってタッシュはスペードクィーンを崇拝しているので邪な気持ちなど湧き出るはずも無く、自ら進んで空の皿を下げたり飲み物を注いだりと精力的に接待している。


「あははは、タッシュ先生もすっかり変わったわね!ジャッ君から聞いた時には正直信じられなかったけど、今なら信用できるわ!スペードクィーンさんのおかげなのよね?私としては昔のタッシュ先生に戻ってくれて嬉しい限りよ!」


 蟒蛇ながらも早くも酔っぱらっているパーミアはタッシュの過去を知っているようで、今の姿を見て殊の外喜んでいる。


「わ、私もびっくりしました。ほ、本当に驚きました」


 パーミアが聞いてくれているのかは不明だが相槌を打っているのはヨーレイで、彼女は突然タッシュが部屋に来て土下座をしていたので固まっていた。


 何が何やら分からない状態でいた所にダイヤジャックが侵入して事のあらましを説明したおかげで、かろうじて謝罪を受け入れる事が出来ていた。


 ロイ一行はこうなるだろうと予想していたので宿に戻らず共に学校に向かっており、良い流れになったと安堵していた。


 ロイ一行で学校に向かわなかったのはクラブクィーンとリンド子爵夫妻だけであり、クラブクィーンは存在を隠蔽して邸宅に戻るリンド子爵夫妻の護衛を行っていた。


 今日の今日で何か仕掛けてくるとは思えなかったが手遅れになって後悔するよりも先手を打っておく方が良いとダイヤキングがロイに進言した結果、顕現しているクラブクィーンがそのまま任務に就く事が決定されていた。


 同時刻・・・ワイワイと騒がしくなっているタッシュの私室とは裏腹に、王城では非常に緊迫した会議が開催されている。


「タッシュめ・・・余を裏切ったか!この第二王子であるゼシューを裏切り、無能のミルバを公に担ぎ上げるとは!あってはならない事だ!」


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