(377)覚醒?
見た目人でなければ完全に始末しても問題ないだろうと思っており、ジョーカーの結界もあるので断末魔は聞こえないし殺気も漏れないと確信している為にスペードクィーンは徐々に霧を削っている。
細切れに分離して都度光魔法で浄化しているのだが、コレは鑑定によって弱点が光魔法や聖魔法であると把握した結果だ。
クラブクィーンと同時に放った炎魔法は鑑定結果によれば効果は少なかったので、弱点が明らかになった今・・・どの様な理由であったとしてもロイを手に掛けると口にした目の前の存在を許すべきではないと判断し、恐怖を与えるために本当に徐々に削り取っていた。
やがてその存在は完全に消え去り、同時に結界も不要になるのでジョーカーもカードに戻っている。
「ロイ様、ミルバ様。すべて無事に終了いたしました」
ロイだけに限定しないのは自らとの関係を疑われないようにする為で、事は全て終了したとスペードクィーンは報告している。
ロイにはスペードキングから報告が行っているのは知っているが、それでも話しかけたいので敢えて直接伝えていた。
「お疲れ様・・・で良いのかな?」
褒めて欲しそうな表情なので、取り敢えず労っておくロイ。
「何だか霧が薄くなったように見えたけど、完全になくなったと考えて良いのかな?ロイ君にはどう見えた?」
「ふははは、ミルバ君!全くもって心配ないぞ。具体的に説明すると、あの黒い存在は小悪魔でそこの無様に倒れているタッシュ先生を乗っ取っていたようだ。何故そのようになったのかについては後で説明するが、もうあの小悪魔は存在しない」
小悪魔小悪魔と連呼されているが、実際には相当力のある黒い存在・・・悪魔であり、人族程度に後れを取るような立ち位置ではない。
当人が懇願していた通りに魔界と呼ばれる特殊な異次元に生息しており、極めて稀にこの世界に召喚されて好き勝手に暴れて戻っている。
力があり過ぎるが故に自らこちらの世界に望んでくることはできない様で、今回の様に大量の生贄を与える事で召喚されるその時を待ち続けている。
戻りは問題なく帰れるのだが一度戻ると再び召喚されなければこの世界に来る事は出来ないので、召喚者の望みを叶えた後は召喚者を含めて簡単には復旧・復興できない程の被害を与えて帰って行く事が殆どだ。
悪魔としてはほんの遊び気分だったが今回はそこに人ならざるカードの者達がいたおかげで全く楽しむ事は出来ず、また同格の悪魔を召喚する道具も偶然だが完全に事前に廃棄されており、魔界に戻る事無くその存在は消滅されている。
真実を話してしまうとミルバやリンド子爵が怯えてしまうと考えたロイは、足元のスペードキングを通して今が安全である事を説明する程度に留める事を命じていた。
そのおかげで召喚した存在はタッシュである事も含めてこの場で公になる事は無かったのだが、最早この会場は継続してパーティーを行えるような環境になっていない。
謎の黒い存在が消えた事を理解した国王は安堵したおかげで余計周囲に目が行く事になり、自らが良い顔をしようと思い少々無理をして準備した各種道具や装飾品が見るも無残になっている事を嫌でも理解してしまった。
「あぁ・・・何故ここまでの被害に!」
想像を超えるショックだったために賠償云々の話しがこの場で口に出てこなかったのは幸運で、仮にここで余計な言葉が漏れていれば苛烈なお仕置きが待っていただろう。
別格の黒い存在である悪魔が討伐された史上初の快挙ではあるが音に加えて殺気やら攻撃の余波やらは全て遮断されているのでその力を肌で感じる事も無く、一部の面々を除いていつの間にか騒動が収束していた感が強いこの場の人々。
「ジャッ君!君の従妹って凄いね!私、ファンになっちゃった!」
ミルバを支持すると理解させるため・・・参加条件を満たす為に自らの危険を顧みずにこの場に同行してくれているリンド子爵家の令嬢シェーン。
初見からあまりの美しさに見惚れていたのだが、そこに加えて凛とした強さを持っている所を見せつけられたので大ファンになってしまう。
気絶している第二王子ゼシュー、装飾品を見て嘆いている国王ステヴァン、現状を把握できずに呆然としている第二王子派筆頭のボッシュ伯爵、この国の生活を支えていると言っても過言ではない道具や錬金に関する権威と言われているタッシュ、並み居る格上を全く意識せずにロイに話しかけている。
「そうだろう?自分としてはこの程度で収まって安心している所だ。流石にパーティーだからな。これならば許容範囲と言えるだろう」
一般の感性で言えば全く許容範囲には含まれないが、ダイヤジャックに対して冷静に突っ込める人物はこの場にはいない。
全ての報告を受けたロイですら、悪魔が顕現してしまったこの状況であればその通りだなと内心同意している程だ。
「め、女神様!」
そこに漸く精神と肉体が一致したタッシュが突然このような言葉を呟きながらロイの近くにいるスペードクィーンに近接し、跪く。
「え?」
スペードクィーンはロイが目の前にいるのでそちらに意識が向いている為に一切反応しないが、反射的にロイが反応してしまう。
タッシュは自らの意識がありつつも何もできずに最悪は痛みを感じながら徐々に消される運命なのかと絶望していた所、自らの悪意で召喚してしまった黒い存在を分離して消滅させた事実を結界内部で見ていたのでスペードクィーンが女神に見えていた。
「このような下賤な存在ではありますが、何卒女神様の配下の末席に!」




