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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆


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(374)勘違い

「ジャッ君。大丈夫だよね?結構な品が多数散乱している状況だけど、これ以上の被害は無いと信じて良いのかな?」


 クラブクィーンに慰められているミルバをよそに、ロイはスペードクィーンが少々怒っている事は分かるので被害が拡大しないか心配している。


 問いかけられたダイヤジャックは、近くにミルバやリンド子爵一家がいるのでジャッ君として回答する。


「ふはははは、全く問題ないぞ?ロイ君。しっかりと対策済みだからな。まぁ正直に言えば全てを吹き飛ばしてやりたい気持ちだが、そこは我慢しておこう」


「そ、そうして!是非そうして!」


 過去に建屋の屋根を容赦なく吹き飛ばしたダイヤキングなる存在がいたと思い出したロイは、間違ってもそのような事にならない様に必死になっている。


「しつこいようだけど、周囲に被害が無いようにね?未だに火種の元にいるタッシュ先生も大丈夫だよね?」


「・・・・・・大丈夫だぞ、ロイ君」


 ジョーカーがスペードクィーンと黒い存在を完全に隔離した事は把握しているが、内心ではあのまま巻き添えで始末してしまいたい気持ちがあるので反応が若干遅れるダイヤジャック。


 危機感のかけらも無いやり取りだが、その話しを嫌でも耳にしているリンド子爵一家は緊張がほぐれたのか少し余裕を取り戻している。


 ミルバは幸か不幸かダイヤジャックと日ごろ触れあっているおかげで無駄な耐性が付いており、黒い霧が出てきた時には焦ったが既に通常運転に戻っている。


 その他の有象無象は未だ壇上に視線が集中しており、中にはここで黒い霧の対処をすれば相対しているスペードクィーンに良い顔が出来ると思っている存在もいる。


「おい・・・お前はあの霧に対処できそうか?間違いなく株が上がるぞ!」


 この場の大半に当てはまる事だが、自らの息子にこのように告げる者は相手の力を計る力が皆無なので危機感が大きく欠如している。


 戦闘に関しても専門家と言っても過言ではない冒険者や騎士すらこのミューゼ王国では大多数が道具に大きく依存しているので魔力不足や故障を含めて道具が使えなくなった時点で素人集団に成り下がり、逆に言えば道具があれば如何様にでもなると思っている。


「お任せ下さい。これさえあれば恐らく問題ありません、父上!」


 何人かは常に安全を確保する為に防御や攻撃が可能な道具を装飾品として身に着けており、数人の貴族の子息はクィーンズに貸しを作りたいと思っているのでこの状況は願っても無いチャンスだと感じている。


 クィーンズの所作から貴族令嬢だと認識しているが、仮に貴族でなかった場合には立場上正妻にはできないが妾として手の内に入れようと邪な考えでいるのは共通の認識だ。


 先を越されてはたまらないと周囲の状況を確認せずに一気に走り出す者が数人おり、国王からの覚えを良くしたいのではなくクィーンズに貸しを作りたい気持ちで行動している為に無駄に普段以上の力が出ていた。


 忠誠も何もあったモノではなく非常に情けないが、コレがこの国の現状だ。


「お嬢さん。ここはこの俺・・・シュレンダに任せて下がっていてください。お嬢さんを危険に晒すことはできません!」


 一人を皮切りに似通った事を喚いている数人の貴族令息だが、敵の戦力を認識できないので本来は危機的状況のはずがまるで危機感がない。


「はぁ?お前は公爵家嫡男であるこの俺の邪魔をするのか?どこの家だ!正式に抗議してやるぞ!!」


 立場を笠に勝手な言い分で言い争っており、全力で対処しても間違いなく手も足も出ない謎の霧を前にして行って良い行動ではない。


 貴族達にとっては自らの実力を主張できるタイミングを得たと考えると幸運で逆にカードの者達にとっては鬱憤が溜まる状況だが、環境としてはジョーカーの魔法によって外敵である黒い存在は目の前にいるが完全に隔離されているので安全は確保されている。


「お前程度の力ではあの女性を守り切る事などできはしない!自惚れるな!!」


 ヒートアップしているが、その声が聞こえているゼシューは介入しようとはしない。


 本来の立場であれば圧倒的に優位で自らの権威と力を見せつける絶好のチャンスとも言えるのだが、これまでの状況を冷静に分析した結果介入できるレベルの戦闘ではないと珍しく正しい判断をしていた。


 この王城のホールであれほどの攻撃魔法を容赦なく行使して道具や装飾品を完全に破壊していたのだが、王族故に数ある品の中には破壊が不可能な逸品として展示していた品がある事を知っており、それを直撃ではなく余波だけで容赦なく破壊してしまった存在とその攻撃を避けた不気味な影・・・普通の感性があれば自ら足を突っ込んで良い場所でない事は分かるだろう。


「何故あれ程美しい女性が・・・ここまでの力を持っているのだ」


 疑問が口に出るだけで傍観している状況になっており、貴族令息達が子供の喧嘩の様に自分の力・・・道具の力を自慢し始めているのを黙って聞いている。


「立場など関係あるか!今この場ではあの女性を助けられる力があるか否かが最も重要だ!コレを見ろ!我が侯爵家の至宝だぞ!」


 黒の存在は霧状のまま人型を形作っており、目の前のスペードクィーンに対してどの様に攻撃するのが正解か・・・例えば明確には攻撃ではないが、ゼシュー相手でも不完全ではあったが乗っ取ってしまえばより強大な力を持つ存在を自由にできると思っている。


 互いに動かないのは、スペードクィーンはどのように料理してやろうかと考えていながらも完全に黒い霧状の存在を動けなくしている為に余裕があるからであり、一方の黒の存在は相手が攻撃姿勢になっていない事から警戒態勢を取っているのだろうと解釈し、作戦を考えているので自らが動けなくなっていると把握していないからだ。


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