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一応今回のパーティーの目的の内の一つであるタッシュが健在である事を知らしめるべく立ち上がった国王ステヴァンは、ここで道具に関して自国が優れていると殊更に主張する事でクィーンズの意識を集める事が出来ると信じている。
「おぉ、待っていたぞタッシュよ!皆の者、我が国の生活基盤を確立したタッシュが復帰した。どこぞの有象無象による悪意ある行動の影響もあって一時期道具が使用できなかったが、すべて解決した今!道具をより一層発展させる存在が輝き始めるのだ!」
この場にいるロイの関係者やリンド子爵一家以外は全て国王やゼシューの派閥であり、割れんばかりの拍手に包まれている。
国王の言葉には悪意ある行動を行った有象無象に対する具体的な説明は無いのだが、ステヴァンの視線はダイヤジャックを見ているので事実か否かはさておいて説明されず共誰の事を指しているのかは理解できる。
事実無根である為に具体的な行動の中身等知る由も無いが、そもそもミルバと行動を共にしている時点で彼等の敵になるのでそこはどうでも良いと思われている。
「ロイ様、こちらは如何でしょうか?」
一気に沸き上がった会場の為に間違いなく一般人では雰囲気に呑まれてしまうのだが、全く意に介さずに自らの世界にいるクィーンズは多少動揺しているロイをフォローするかのように三方向からお勧めの食事を我先にと口元に持って行く。
壇上にいる国王達からその様子は嫌でも目に入るので、国王ステヴァンの思惑は完全に外れて改めて自分達は完全に意識の外に追いやられている事を知り憤慨し始める。
「くっ・・・どこまでも不敬な!有り得ない事態だ!!」
ステヴァンの背後にいるミルバは攻撃の対象がロイに向きかねないと何かしらのフォローを即座に考えるのだが、何故か強制的に視線がダイヤジャックの方に向くと軽く首を振られる姿が視界に入る。
高速思考を持っているので、どの様にして自分の視線を強制的に向けさせたのかは分からないながらもダイヤジャックの意図している事はそれだけで理解でき、余計な事はするなと釘を刺されたと正しく認識して開きかけた口を閉じている。
口を噤んだミルバを見てダイヤジャックが軽く頷いた仕草を見せた為に自らの考えは正しかったと思いながらも、目の前にいて怒りのオーラを発している父であり国王でもあるステヴァンの動向が気になる。
「陛下。彼方の美しい女性三人と不遜な態度の男一人・・・相当な力を持っているようですね。私が行う道具の研究には応分の魔力が必要ですが、その供給源として活用できるかもしれません」
「・・・待て。あの男はどうなろうと知った事ではないが、女性三人については余の方でしっかりと管理すべき存在だ。その前提を覆さないのであれば、タッシュの研究に関して援助をするのも吝かではないぞ?」
最早クィーンズは自らの手に入っているかのような勘違い発言だが、黒い存在に乗っ取られているタッシュはダイヤジャックを制御出来れば全く問題ないと考えているので異を唱えない。
本来の人格であるタッシュは国王の言葉に相当焦っており、余計な騒動に巻き込まれて自分自身の肉体が消滅してしまう可能性に思い至っていた。
現状も全く納得できないし理解も出来ないが何をどう考えても召喚した存在に体を乗っ取られて好き勝手にされており、中途半端に意識だけがある分余計に質が悪いと苦悩している。
本来であればダイヤジャックを始末するだけで国王からの研究の助力など有り得ないと考えているのだが、ゼシューが追随するかの様な言葉を発してその通りに事が進みそうなので焦りはあるが何もできないまま話しが更に進んでいる。
「それでは陛下。このゼシューがしっかりと立場を分からせてまいります」
壇上からツカツカとクィーンズ達がいる場所に向かうゼシューは、これだけ周囲に立場のある味方がいれば多少無理な話しでも強引に進める事が出来ると謎の自信に溢れている。
「おい。今回我が国は短い期間ではあるが相当な危機に陥った。再び同じ環境に陥らない様に対策するのは王族としての務め。その一助として、貴様には彼方にいるタッシュの研究補助を行える栄誉を与えてやろう!そちらの麗しい女性三人はステヴァン陛下が庇護される上で研究を行う事になる」
ある程度立場がある者にはありがちな勘違いだが、誰しもが自らの言葉を喜んで受け入れる前提で話しをしている。
ゼシュー近接は意識せず共把握できてしまうカードの者達なので、現時点でロイの口は何かを頬張っているリスの様にパンパンに膨れ上がって何も言えない状態にされている。
「ふはははは、お前はアホか?何かしたければ自分でやれ!あのタッシュとか言う無能に対する助力など無駄な時間だ」
ゼシューを睨んだ後に壇上にいるタッシュに視線を移したダイヤジャックは、嫌でも意識がタッシュに向く。
こうなると何もしていない状態よりも詳細な情報を得てしまう為に、何とも言えない違和感を覚えていた。
「クィーン。あのタッシュ・・・おかしいぞ」
自分よりも力があるクィーンズであればより詳細情報を得られると思い、ゼシューを完全に無視してこう告げた。
ゼシューがここまで近接して偉そうな言葉を垂れ流していても全く反応を示さなかったクィーンズだが、ダイヤジャックの言葉を聞いて三人が揃って壇上のタッシュへ向けて同時に視線を向ける。
「む・・・流石はゼシューよ!余の意向がしっかりと伝わったようだな」
三人の視線が近くにいるタッシュに向いているとはわからない国王ステヴァンは自らを見ている様に感じているので機嫌が良いのだが、その視線を受けているタッシュ・・・侵食している黒の存在は一瞬で血の気が引いている。
蛇に睨まれた蛙の様に指一本動かせなくなってしまい、何故あれ程の美しい女性三人の視線を受けてこうなっているのか理解できないでいる。




