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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆


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(368)希望

 本来の精神は表に出る事が出来なくなっている状態のタッシュは、そのまま学校に戻っている。


 乗っ取った際にタッシュの記憶、技術は全て把握しているので周囲の生徒や教官からは驚かれているがタッシュらしい対応をしている。


「少し道具に必要な素材を取りに行っていた。もう少しすればしっかりと授業に反映するので、楽しみにしておけ!」


 敢えて目立つように生徒に対してはプレッシャーを与える様な言葉を吐いている。


 教官に対しては立場もある為に無断で欠勤になった事を謝罪するにとどめ、今は私室に入りこれからの行動について検討している。


「差し当たり、ジャッ君に対して何か行動を起こすのが面白そうだな」


 タッシュとして相当辛酸を舐めさせられた記憶が残っているので、久しぶりに召喚されたこの世界で遊ぶには丁度良い相手だと思っている。


「タッシュ先生!陛下から呼び出しがかかっております。至急王宮にお越しください!」


 どのようにダイヤジャックに対して攻撃を仕掛けてやろうか気分よく考えているのだが、突然意識を現実に引き戻すかのような言葉が投げかけられる。


 タッシュの記憶を読み取ればこの私室に容赦なく侵入できる存在は学校内では校長以外にはいなかったはずだが、現実的には相当立ち位置が下がっている上に国王からの呼び出しでもあったことから事務方が遠慮なく侵入していた。


「藪から棒に・・・」


「申し訳ありません。急ぎの連絡である上に何度かノックをしたのですが・・・」


 本当に久しぶりにこの世界に呼び出された上に丁度よく乗っ取れたので、妄想にふけってしまった事実を思い出して少しだけ恥ずかしくなっている。


「わかった。直ぐに行こう!」


 道中なぜ呼び出されたのかを考えているのだが、魔力を吸収してしまう道具を持ち出した件以外では何ら落ち度はないと理解できているので余裕がある。


「来たかタッシュ。待っていたぞ」


 謁見の間には国王だけではなく学校の生徒であり第二王子でもあるゼシューも同席しており、タッシュを見下ろしている。


「全ての事情はゼシューから聞いたぞ。余はお前の実績を認めているのでな。ポッと出のジャッ君とかぬかす人物の暴走の被害を受けた事に心を痛めておる」


 一瞬何のことかわからずに改めてタッシュの記憶を洗い直したのだが、確かにしでかした実績は有ってもダイヤジャックの暴走による被害・・・多少はあるが、敢えて国王がここまで言う程の被害を受けた事はない。


 どのように反応するのが正解なのか、この時代のこの国ではどのような常識なのかについて改めて記憶を読み直し始めている為に何も反応が無いと感じたゼシューは、助け舟を出す。


「タッシュの気持ちは良く分かるぞ。これだけの貢献を行っていたのだが、ジャッ君に唆されて秘蔵の道具まで使用せざるを得なくなった。結果的に短期間ではあるがこの国の機能が麻痺した事は事実だが、その責がお前にある訳も無い」


 具体的にゼシューが国王に何をどのように話したのかは不明ながらも、全ての失策の原因をダイヤジャックに押し付けた事だけは理解できる。


「身に余るお言葉です」


「謙虚であるな、タッシュよ。しかしお前が受けた被害を理解せずにいる貴族がいる事も事実。今回暫く不在にしていたようだな?その行動が逃亡ととられたのだ。従って、お前がしっかりとこの国に戻っている事を改めて世に知らしめる必要がある」


 何をするにも立場や権力を得ていた方がある程動き易いし無理も効くので、国王の言葉を黙って聞いている黒の存在に乗っ取られているタッシュ。


「余もあの麗しいクィーンに会いたいのでな・・・道具復活祭と銘打ったパーティーを開催する。その場でタッシュが健在である事を知らしめるのだ!」


 前半部分は小声で誰にも聞こえていないが多分にクィーンズに会いたい欲望があるので、ゼシューからタッシュが戻ってきたと聞いた際にボッシュが企画したパーティーを更に拡大して催す事にしていた。


 まるで相手にされなかった過去があるのだが、そこを踏まえてももう一度会いたいと思わせるほどの美貌の持ち主であった為に普段ならば即決できない事も決断できている。


 公にした目的が達成できるのかは未知数だが、再び無駄なパーティーが開催される運びになる。


 前回とは異なって誰しもが道具再起動によって生活環境が以前の通りになり快適なので、無駄に汗をかく必要も無く自ら望んで参加の希望を出している。


「ロイ君。また招待状がきたよ」


 教室では増加したクラスメイトがいるので個人的な話しが出来ないからか今では放課後にヨーレイの私室に集まるのが習慣化しているロイ達は、ミルバが呆れた様な表情で差し出した手紙を読む。


「え?王族は貴族当主との同伴必須で参加の案内が来たばかりでしょ?」


「そうだけど、名目上は道具が使用できるようになった祝いとしてロイ君達も招待客に含まれているよ。正直何故今更招待客を増やしたのかに関しては目的が何なのかは分からないけど、絶対に何か企んでいるよ。王族が貴族当主同伴の部分は排除されていないし」


 ロイ、ダイヤジャックが追加で招待されており、必ず学校の関係者以外の同伴者を連れてくるように何故か太字で書かれているのでパーティーの真の意図が読み取れずに不安そうなミルバ。


 以前のままであれば同伴者を準備できない無様な王族とこき下ろす事が簡単に予想できたのだが、今回はそこにも当てはまらないので・・・国王の邪な考えは把握できなかった。


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