(367)予定外!
魔力分野の教室で授業を受けている面々は、休み時間になるとダイヤジャックやミルバがロイの方に集まり始める。
そもそもこの三人は常に近接して座っているので、クラスの面々はこれまでの信じられない実績を叩き出しているダイヤジャックに話しをすると必然的にロイやミルバとも話しをする事になっている。
話しかけて来る生徒達について誰が誰だか未だに分からない三人は雪崩の様に人が押し寄せて話しかけられている状況になっているのだが、ロイとダイヤジャックは入学試験時に篩が掛けられて悪意がない事は事前に確認済みなのでそこは安心できている。
ミルバはそこまでされているとは知らないながらもロイやダイヤジャックが普通に対応している事から、同じように周囲の生徒と話しに花を咲かせている。
このクラスは立場を取り去って公平に学ぶことをモットーとしているので、誰もがミルバを王子と認識しているが普通に接している。
「ミルバ君。その・・・言いにくいけど、私の耳にも入ってきたの。例のゼシュー王子が絡むパーティー?実は私も強制的に参加させられるのだけれど、良ければ一緒に行きたいと思って・・・」
とある女子生徒がミルバに話しかけており、この口ぶりから間違いなく市井の民ではなく貴族の令嬢である事がわかる。
まさか貴族令嬢が魔力分野のクラスに入学しているとは知らなかったミルバはマジマジとその女性の顔を見てしまうのだが、立場が悪く通常時のパーティーにも参加できていなかったミルバでは誰なのかは分からない。
「私も参加しなくてはならないと思っているけど、仮に貴方・・・」
「シェーンです。シェーン・リンドです」
相手が名乗った為にこの女性が先日話題になったリンド子爵家の人物だとは理解できたが、そもそも父親のリンド子爵自身がミルバとパーティーに参加する事を許可しているのかは不透明である為に確認している。
「シェーンさん。確認だけど、リンド子爵は私と共にパーティーに参加する事は御存じなのかな?パーティーの位置付けを理解すれば私と参加した後に他の貴族達からどの様な扱いを受けるのか・・・どう考えても良い方向にはならないのは理解していますか?」
何も知識がないままミルバを誘っているのであれば子爵家に多大な迷惑が掛かる事は間違いないので、真実を告げて様子を見ている。
「はい。前回の一件、道具が一切稼働しなくなった際に誰も手助けをして頂けなかったばかりか匿名希望の方によって改善された畑についても結果的に荒らされてしまったので、結局ゼシュー王子を支持しても庇護下に入れるわけでは無いと痛感しているところなの」
形だけはゼシューを支持しているが面と向かって抗えるわけも無いので中立を明確に宣言できずにいた結果であり、本来はこのような王族の問題に巻き込まれたくないと思っているリンド子爵家。
子爵家の状況を理解したが、だからと言ってやはり国王や未だに力を持っているゼシューに反抗する形を明確に示してしまえば邸宅も破壊されかねないと危惧しているミルバなので、素直に同行すると言えない。
「少し考えさせてもらっても良いかな?」
ミルバが悩んでいるのは自らの家の事を真剣に考えてくれているからだと理解しているシェーンなので、即答されず共落ち込む様子はない。
「わかった。待っているね?」
予想しない所からパーティー参加可能になる救いの手が差し伸べられた事は幸運だが、そのまま受け入れられるのかは全く別の話しである為にこの話しはここで終わりになっており、その後は他愛もない話しに移行してその日は終了する。
その後夜になってダイヤジャックもカードに戻った後、スペードキングからロイにとある情報が伝えられる。
ロイの安全の為に軽く周囲の状況を把握しているが、異大陸に来てからは過剰に行動するのは禁止されているのでカードの者達基準で控えめに行動し続けている中で、一瞬ではあるが膨大な力を感知した為に報告している。
「我が主。一瞬ではありますが相当な力の奔流を感知しました。魔力の波動から・・・正直な所自分でも信じられませんが、タッシュと名乗っていた教官である例の男が発した可能性が高いです」
「え?行方不明になっているタッシュ先生だよね?たしか魔力が少ないので補填する道具を作っていたはずだから、その道具が暴走したのかな?行方不明になっている事と何か関係があるのかもしれないね」
実際には召喚した存在に乗っ取られているので全く体を制御する事は出来ないままかろうじて意識は残っているのだが、乗っ取った側からすればこの肉体がどうなろうが知った事ではないので強制的に自らの魔力を使って鬱憤を晴らしていた。
乗っ取った時点でタッシュの魔力と波長が合致してしまう為に、スペードキングはタッシュが発した魔力と判断していた。
「何故全く道具が見つからないのだ!おかしいだろう!!」
結構な時間自分と同格の存在を召喚する為に道具を探し続けていたのだが、既にカードの者達によって消滅させられているので一つも見つける事が出来ずにイライラしてダンジョンから出た際に運悪く視界に入った魔獣に対して攻撃魔法を行使して始末していた。
「忌々しい。だが無いものはいくら探しても無いからな。時間の経過と共に風化してしまったのだろう。こうなったら私だけでもこの世界を楽しまなくてはならないな!」
意識だけが残っているタッシュとしては道具の補助がなく自らの魔法だけで魔獣を始末できるとは思っていなかったので歓喜する部分はあっても、現実は体の制御が全くできないのでぬか喜びであり、どの様にすれば召喚した存在を追い出せるのかを考えている。
何か案が思いついて実行しようにも・・・道具を使用するにも体の制御が出来ずにより一層歯痒い思いをする事になっており、最早出来る事と言えば心の中で何かを思う程度の事しかなくなっているので現実的には無駄な事を真剣に考えている。
「精神的に・・・追い出す様に心の中で戦うのはどうだ?」




