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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆


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(365)ゼシューの焦り

 自らの腰巾着でもあり最大の協力者でもあるタッシュ失踪に加えて王族としての伝手でミルバやダイヤジャック、更には校長を含めた学校関連の者に対する罰を与える依頼も全く上手くいっていないので焦りが隠せないゼシュー。


 事前調査費用としてある意味手付金ともいえる費用を支払っているのだが、一向に行動を起こしたと連絡がないばかりか事実学校でミルバや最初のターゲットであるダイヤジャックも普通に生活しているのを嫌でも自ら目にしているので、計画通りになっていないことは報告がなくとも理解できてしまう。


 業を煮やしたゼシューは再び店に訪れるのだが・・・


「はぁ?」


 店の扉には張り紙があり、そこには諸般の事情で休業とする旨が書かれているだけで再開はいつか、そもそも再開するのかも全くわからない状況になっている。


「持ち逃げか!あれだけ偉そうなことを言っておきながら!!」


 怒りが隠せないゼシューだが、過去には相当な依頼を難なくこなした実績があることからなぜこのような状況になっているのかがわからない。


 実力的には申し分ないはずがまるで逃亡するかのようにこの場から一切の痕跡を残さずに消え去っているので、考えられる事と言えばダイヤジャックが何かしら強烈な反撃をしたのかと思っている。


 現実的にそのような事は一切なく、ダイヤジャックの対応を命じた店員と突然連絡が取れなくなった時点で異常事態と判断し、少しの油断が致命傷になることを知っていた店長の即断によってミューゼ王国を捨てる事にしていた結果だ。


 長く活動して王族からも指名依頼を受けている状況にまで知名度が上がったが、逆に言えばそれだけ敵も多くなっていると同義なのでそろそろ頃合いかと思っていたところに後押しをするかのように店員の失踪が起きたので、これ幸いと即座に行動している。


 まさに状況を一変させるに至った店員ムーギはしっかりと本来の女性としての装いでパーミアの助手をしており、名前も本来の名前であるコームに戻して活動している。


 さすがに髪の毛については長さを一気に変えることはできないので、パーミアがウィッグを準備して色まで変えている。


 事情はパーミアがハルバン伯爵の手の者でヨーレイを保護しているところを除いてヨーレイにも説明しているので、時折魔力分野のクラスの会合に参加している。


 魔力分野のクラスも今では一つの教室が満席になっているのだが、ミルバ、ロイ、ダイヤジャックと担当教官のヨーレイは時折放課後に集まって食事会を実施している。


 そこにコームを引き連れてパーミアが紛れ込み楽しい時間を過ごしている中で、ロイとしては過剰な助力はするべきではないとの考えを変えていないので・・・仮にコームに命の危険がある場合には知らない人物ではないので対処するつもりだが、今のところ軽く調査させた時点では元所属組織は王国を出ていると情報を得ていたのでこれ以上動くつもりはない。


 ゼシューからしてみればいつの間にか増殖してしまった魔力分野の生徒がいるおかげでそう簡単にクラスを排除できなくなった上に、こちらもいつの間にか現れているパーミアの助手が楽しく生活をしているように見えるので非常に面白くない。


「陛下。タッシュ不在の今、我が国の発展は永続的ではないと確信しています。何故か魔力分野に関心持つ民が増え、実際に学校に入学する生徒も増えております。ここは改めて何かしらの楔を打ち込む必要があるのではないでしょうか?」


 頼れる配下(タッシュ)がいなくなっているためにゼシューは父親である国王ステヴァンにこう告げているのだが、当然単独で来ているわけではなく子飼いの配下であるボッシュ伯爵を伴っている。


「ゼシュー王子のご意見に私も賛同致します。このままでは無能のミルバ王子が再び台頭してしまう可能性もあります。そうなると、力を得たミルバ王子が反逆してくる可能性もあるのではないでしょうか?」


 ミルバ本人が全くそのようなことを考えていなくとも事実これまでミルバをある意味迫害し続けている国王やゼシュー、そして貴族達なので、ミルバが王位を継いでしまえば相応の報復があると自分達基準で物事を考えて納得してしまう。


「なればどうする?当然何らかの案を持っているのだろうな?」


「直接的な攻撃は今までの情報を鑑みますと避けたほうが良いかと思います。そもそも現在魔力分野が盛況なのは市井の者が大量に在籍しているせいですので、そこに対してミルバ王子が無能である・・・王族としての力を持ち得ていないと知らしめれば良いのです」


 ボッシュ伯爵はゼシューでは国王の質問に対して碌に回答できるはずがないと理解しており、自ら説明を始めている。


「前回のパーティーのような形で実力不足を知らしめる方法が良いのですが、何も制限がなければあちらの独壇場になる可能性が高いでしょう」


 本来エスコートする相手がいないので無様を晒すはずだった早朝に行われたパーティーでもクィーンズが国王やゼシューすら虜にしてしまったのを知っているので、普通のパーティーでは目的を達成することは不可能だと知っているボッシュ。


「ここは我らゼシュー王子を擁する貴族の絆を改めて確認するとともに、ミルバ王子派の力が大きく劣っていることを認識させる形にするべきです。つまり・・・」


 こうして再びミューゼ王国で国家主催のパーティーが開催される運びとなり、王侯貴族は必ず出席する義務があると何故か民にも広く告知される。


「ミルバ君。これって・・・」


「これだけ学校にも情報が広まればロイ君も知っているよね。相変わらずだけど、どう考えてもタッシュ先生失踪の損失を埋めるためにゼシューが何か企んでいる以外には考えられないよ。本当に呆れるけどね」


 コームがゼシューの命令でダイヤジャックやミルバの命まで狙っていたとは知らないのだが、大人しくしているわけがないと思っていたのでいつかは何かしらの行動を起こすと確信していた兄のミルバ。


 その手元には学校の掲示板に張り出されている内容よりも具体的な記載がある招待状が握られており、王侯貴族は必ず出席する旨が書かれているところは同じだが、ミルバの招待状には王族は必ず自らを推挙する貴族の当主を同行させるように記載があった。


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