(360)放逐?
ダイヤジャックの指摘は当たらないとばかりにとぼけながらも、何かしらの情報を得るか継続した接触可能な環境を構築するべく会話を続けているムーギ。
「良いだろう。それではヨーレイ先生、ミルバ君、ロイ君。所用が出来たので少しだけ失礼する。ホレ、ついてこい!」
ダイヤジャックの態度は仲間に接する態度ではなく少々攻撃的である事から、これまで嫌と言う程実力を見させられてきたヨーレイやミルバは一受験者と認識しているムーギが多少心配になっている。
「ロイ君。ムーギ君?・・・は大丈夫かな?ジャッ君の態度から無事に済むとは思えないのだけれど?」
「わ、私もそう思いました。ですが、今日の試験ではムーギさんの数値は高くないのですよ?ジャッ君の道具に異常があるとは思えませんから、じ、自信過剰な方なのでしょうか?それ故にジャッ君が少々怒っているのかもしれませんね」
ヨーレイは今日の試験結果一覧を取り出してムーギの数値を確認すると、この程度の情報はダイヤジャックであれば容易に把握できる前提で話しをしている。
「うーん、どうでしょうか?気になるのであれば確認してきますけど、幾らジャッ君が怒っていたとしても大惨事にはなりませんよ?一受験生相手にむきになる程ではないと思いますけど?多分彼の状況を確認して応じた提言をするだけですよ。具体的には、軽く説明をするレベルです」
ロイもミルバの言葉を内心では完全に否定できないが、口に出してこのように説明しておけば足元のスペードキングからカード状態の者を通してダイヤジャックに話しが行くと知っているので敢えて口に出して伝えている。
これまである意味超常現象を目の前で見る羽目になっているミルバとヨーレイなので、ロイがこのように言うのであればそうなのだろうと半ば考えることを放棄して納得する流れができつつある。
その頃のダイヤジャックは・・・ロイの想定通りにカード状態のダイヤキングから指示が飛んで本来の行動を修正する必要があると考えながら歩いている。
流石に魔獣を準備したり裸にひん剥いたりする予定はなかったのだが自ら作成してヨーレイに渡した道具が導き出した結果はしっかりと把握しているので、背後についてきているムーギには明確な悪意があると判断していた為にダイヤジャック基準で少々躾が必要だと考えていた。
「むぅ、多少教育すれば終わりのはずが・・・どうすべきか。この程度の雑魚であればいくら騒いでも問題ないので目的を聞く必要はなかったはずが、予定が狂った」
ロイからの命令でムーギの状況を確認する必要があるとダイヤキングから伝えられたため、相手にダメージを与えずに悪意についての調査を行うにはどのような手法をとるべきか考えている。
「ジャッ君?」
あまりにも意識をロイの命令の解決手段に向けすぎていたのか、普段であれば周囲を警戒していなくとも気配を察知できるはずが声を掛けられるまで知能分野担当教官のパーミアの近接に気が付かなかった。
「む?パーミア先生。どうしたのだ?」
継続してロイの命令に意識が多く割かれながらも多少の驚きをもって対応するダイヤジャックは、続くパーミアの言葉に驚く。
「この子・・・ジャッ君の道具によって合否判定された結果、本来の能力以上の減点があったのでしょう?」
ロイにのみ教えている道具の効果を言い当てており、これが一般的な第三者であれば警戒すべき人物と認識されて場合によっては監視対象になるのだが、パーミアを信頼しているので賞賛の言葉が出てくる。
「ふははは、流石はパーミア先生だな。参考までに何故その考えに至ったのかを聞いても良いだろうか?」
「ジャッ君?私の専門分野は何かしら?」
「成程。状況だけで真実に到達できる頭脳。知能分野担当教官だけあるな。このジャッ君も正直驚いたぞ?」
勝手な話しで盛り上がり始める二人だが、入学試験に落ちてその理由を知るためにここまで来ているムーギにしてみればふざけた会話を聞かされている。
教官の言葉を鵜吞みにすれば、入学判定基準になっているはずの魔力量や技術に関しては到達していた可能性が高いからだ。
「・・・そろそろ説明をしてもらっても良いですかね?」
どうしても攻撃的な感情が少なからず表に出てしまっているが、在りえない力を持っていると認識しているダイヤジャックだけではなく普通の教官に見えるパーミアすら全く様子が変わらないので僅かな違和感を覚えている。
この察知能力が長けていることもあってここまで生き延びることができたムーギは、逃走も視野に入れて僅かながらダイヤジャックとパーミアから距離を取りつつ周囲の確認を行っている。
「あら?随分と腰が引けている受験生ね。難題が見えた瞬間に逃げるようでは、仮にこの学校に合格しても生き残れないわよ?」
僅かなムーギの動きすら把握したパーミアなので、ダイヤジャックは彼女を相当な実力者だと感心するだけだがムーギは違う。
「お前、何者だ?」
被っていた猫を完全に取り去り、露骨に警戒態勢をとっている。
「ふふふ。この学校を受験したくせに知らないの?知能分野担当教官のパーミアよ?」
「そんなことは知っている!お前の本当の正体はなんだ!」
ここまで言われるとダイヤジャックも気になるのでムーギが害を与えようと行動するならば介入するつもりだが、現時点では静観して成り行きを見守っている。




