(359)自信はあるが
ムーギは自ら魔力を有しており、且つ有効活用できると確信している。
当然能力を発動できるからであり、能力発動には魔力が必要である事は知っているので本心で言えば魔力の扱いに関しても有象無象と比べても比較にならないほど優れていると思っていた。
思っていたのだが・・・魔力分野担当教官が何をしたのかは不明だが、直接的ではないが自らも含めて同じ教室にいた受験者の中で魔力の扱いに長けている人物はいないと言われた為に少しだけ怒りの感情が出ている。
「少なくとも私は絶対に魔力の扱いに長けているはずです。そうでなければ生き残れない環境にいたのですから、命の危険など経験した事の無い有象無象と比較して優れていないわけがないですよ!」
他人には聞こえない程度の小声ながらも文句をブツブツ呟きつつ、騒がしくなっている一角に向かう。
合格と知って喜んでいる者、不合格となってその理由が分からずに怒っている者様々だが、確かにこの状況であれば不合格になれば怒るのも無理は無いと思いながら自らの名前が記載されている事を祈りながら見ている。
「・・・・・・」
上から下まで隅々まで見回しても全くムーギの名前は無く、どう考えてもヨーレイのミスだろうと学校関係者を探す為に大人しくこの場を後にしている。
ダイヤジャックが作成した道具による判別が行われているのだが、その道具を作ると決定した際にロイ以外には知らされていない一つの機能が追加されている。
希望通りに総魔力量と魔力運用の技能を数値化できる道具を作ったのだが、これだけ入学希望者が溢れてしまうとヨーレイの害になり得る存在が紛れる可能性が高いと判断され、普通の道具では判別不可能な害意についても数値化されて他の数値を大きく削除する仕組みを組み入れている。
仮に総魔力量と魔力運用技術が高かったとしても害意があればその二つの数値を自動で大きく削減しているので、出て来る表示は実力も魔力も低い存在として認識される仕組みだ。
ムーギが最も疑問に思っていた魔力運用技術も特筆する存在がいないと認識された部分は、害意によって本来出るべき高い数値が大きく削減された為だ。
第一のターゲットはダイヤジャック事ジャッ君なのだが、優先順位は後回しになっているが他のターゲットとして学校関係者も含まれているので僅かな害意を探知されていた。
ムーギは学校のどこに何があるのかは完全に把握しているので、迷わずヨーレイの部屋に向かっている。
「はははは、だから言っただろうミルバ君!ヨーレイ先生はしっかりとこなせるとな!」
部屋の中から楽しそうな声が聞こえてくるので、間違いなくヨーレイは部屋の中にいると確信してノックをすると返事を待たずに扉を開ける。
「・・・ど、どちら様でしょうか?」
想像通りにヨーレイがいたのだが、同時に最も危険でありながらも排除対象になっているダイヤジャック、その友人のロイ、第一王子ミルバがいるので当初想定していた多少攻撃的にヨーレイを責めるのは悪手だと少しだけ控えめに口を開く。
得体の知れない実力を持っているターゲットだけではなく目撃者となり得る人物がこれだけいるのであれば、自らの能力を行使して始末しようとした際に逃げられた場合に致命的になると判断している。
「今回入学試験を受けたムーギと言います。私は魔力量や魔力の扱いには絶対の自信がありました。内容は明かせませんが能力の発動にも至っているので、一般の方と比べるとどちらも優位に立てる自信があったのです。ですがヨーレイ先生の測定ではそのような結果になっていなかったようです。教室の中を多少ウロウロするだけでしっかりと計測できたのでしょうか?」
ダイヤジャック以外はここで初めて目の前のムーギと名乗った存在がどのような人物なのかを知ったのだが、余りにも具体的な説明であった為に道具の本当の効果を知っているロイは悪意がある人物なのだと理解していた。
直後に足元に潜っているスペードキングからも同じ情報がロイの耳に届き、半ば呆れた様な表情でムーギを見る。
一方で試験の結果に突然文句を付けられたヨーレイは激しく動揺しているのだが、これは元来の性格によるものなので仕方がないとダイヤジャックが立ち上がる。
「ムーギと言ったな?ヨーレイ先生は慣れない作業をここの所一生懸命こなしているので疲れている。そもそも一受験生の戯言に反応する必要性も義務も無いのでな。しかし納得がいかないのは理解できなくも無い。従ってこのジャッ君が詳しく説明してやろう」
何故一生徒が入学試験に関して説明を行うのか分からないが、今回のクレームが受け入れられなかった場合には同じクラスになってダイヤジャックの情報収集を行う事が不可能になるので好機と見たのか申し出を受ける。
「それは助かります。一応念を押しておきますが、私の能力は明かせませんので実演も出来ませんよ?」
「フム・・・なるほどな。余程暗い所が好きらしいな。新種の夜行性人類なのか?その程度のチンケな能力であれば実演は不要だと伝えておこう!」
「!?」
何故自らの能力が暗視である事を把握されているのか不明だが、ここで何らかの反応を示してしまえば立ち位置は悪化すると本能で理解したのか一瞬だけ眉が寄るが平静を装っている。
確かに能力の中には鑑定がある事は知っているのだが、魔力の流れで能力を発動したかは何となくだが理解できるし鑑定を受けた違和感を覚えないはずがないのだが・・・その一切が無いままに完全に自らの能力を把握されている。
敵対する第三者の魔力の流れも完全ではないが把握できる程に魔力関連の知識・技術が優れているのだが、流石に今回は相手が悪かった。
「意味が良く分かりませんけど、説明をお願いしますよ」




