(315)調査の前の偶然①
タッシュから事情聴取を行い盗難に遭ったと主張している道具の外観についても詳しく情報を得る事が出来たので全体会議は終了となるのだが、だからと言ってこのまま放置はできない。
明日には通常の授業が行われるために生徒が登校するので、生徒を使って道具が持ち出されては流石に守衛でも全員の荷物を完全にチェックできる可能性は低いし第三者が紛れ込むのも容易になる。
現在有り得ない程の機能を有している魔力可視化の道具を持っているのは、学内ではヨーレイのみ。
ミルバは城に持ち帰ると不安があるとの事でダイヤジャックが預かっており、当然ロイの分も収納しているが、ヨーレイは今後の授業にどのように活用できるのかをもう少し調査したい気持ちから個人で持ち続けている。
仮に道具が発見されても全教官が集合している場で道具について説明をしているので、外観や重さ、その全てが全く異なる品である為に盗難品と言われない可能性は高い。
タッシュの性格を考えれば素直に認めるとは思えない部分はあるのだが、最低限の保険はかけられている状況だ。
「ヨーちゃん。今は何処にあるの?」
かなり仰々しい対応になっているので、潔白の証明はこの場で出来たが未だに不安が残る為に小声で道具のありかを聞いているパーミア。
「え、えっと、私の部屋です。場合によっては、都度ジャッ君に返却した方が良いかもしれませんね」
余計な軋轢がこれ以上発生してしまうとただでさえ立場の低い魔力分野のクラスに圧力がかかる可能性があるので、本当は生徒達の為にどのように活用すれば良いのか自分を実験台にして色々と試しておきたい気持ちがあるのだが現状を考慮すると暫くは我慢だと思っているヨーレイ。
そうこうしているうちに、校長からこの場にいる教官全員に対して指示を出される。
「では、事情聴取も終了した為に対策を伝えます。私と被害者であるタッシュ先生、そして本来はここまでする必要はないと確信していますが、一瞬だけ疑われてしまったヨーレイ先生で全ての教室、研究室、私室を調査します」
この言葉を聞いたタッシュは現実ではありもしない道具を公表せずに済んだと安堵するところだが、今は感情が高ぶっているのか本当に道具が盗まれたと思っているのか嫌な笑顔を浮かべている。
校長もタッシュの変化に気が付いており、少し前までは道具を改善・・・新規で作ったような口ぶりに変化していたが、高い確率で実行できていないだろうと思っていた。
しかし今のこの態度を見れば本当に盗まれたと思っているように見えてしまうので、本当に僅かではあるがヨーレイに再び疑いを向けていた。
「では残った先生方は大変申し訳ないが、暫くはこの会議室からは出ないでいただきたい。そして必ず三人以上の前で各自の持ち物・・・道具による収納品も含めて、魔力可視化の道具がないのかを確認しておいて下さい。皆さんが潔白だと改めて証明するのに必要な作業ですから、申し訳ありませんがよろしくお願いしますよ?」
こうして会議室から消えて行く校長、タッシュ、ヨーレイであり、ここまでがロイに概略として報告されていた。
「校長先生。一先ず私の疑念を晴らす事、ヨーレイ先生の潔白を証明する為に行動しましょう!」
タッシュはヨーレイの部屋を調査すべきだと提言しており、校長も順番はどうあれ結果的には調査する事になるので同意する。
「分かりました。では行きましょうか?ヨーレイ先生」
「は、はい」
何時もの通りと言えばいつもの通りだが、このオドオドした態度も証拠が見つかるかもしれないと言う恐怖によるものと思えてしまうのだから不思議だ。
「こ、こちらです」
ヨーレイが扉を開けて二人に入室を促すとタッシュは既に見たので変化はないが、あまりにも快適な環境に変化している事に驚いている校長。
「ヨーレイ先生?随分と・・・素敵な部屋になっていますね」
「あ、ありがとうございます。せ、生徒達が力を貸してくれました」
「はっ!無能が幾ら力を貸してもここまでにはならないでしょう?ひょっとしたら私の研究室から他の道具を盗んで売却し、その利益を使って改修したのではないですか?」
「タッシュ先生!」
流石に憶測の域を出ないと校長がタッシュを諫めるのだが、確かに言い分は一理あると思う程に立派に改修されていた。
「そ、それではどうぞ」
ヨーレイの言葉を待たずにタッシュは部屋の内部にズカズカと侵入し、引き出しを開けてひっくり返しては有りもしない道具を探している。
調査後に元に戻す事は一切考えていないので、校長が止める間もなく部屋は一気に乱雑になってしまう。
「あ・・・あの、もう少し綺麗に」
ヨーレイの必死の懇願はかろうじて耳に入ったタッシュだが、当然聞こえないふりをして続行している。
やがてヨーレイがダイヤジャックから借りている道具を仕舞っている棚に設置してある引き出しが引き抜かれてひっくり返されるのだが・・・何もないのでタッシュは継続して部屋を荒らしながら調査し、一方のヨーレイは唖然としていた。
「タッシュ先生。ヨーレイ先生の部屋に無い事は確認できたでしょう?やり過ぎですよ?」




