(313)その頃のロイ
会議室で紛糾しているのだがその内容はこの場に侵入しているスペードクィーンからカードのダイヤキングに飛び、そこからロイの足元にいるスペードキングと対面にいるダイヤジャックに飛んで今日は休みの為に宿にいるロイに伝えられている。
「はぁ・・・やっぱり問題になったか。何処にでも平穏を脅かす人は居るよね?ダイヤジャック。場合によっては会議室に乗り込んでヨーレイ先生の身の潔白を証明してもらう事になるかもしれないけど、大丈夫?」
ロイとしてもあの授業が受けられなくなる事は許容できないし、パーミアを交えた飲み会も想像以上に楽しかったので環境が変わる事も許せない。
「はっ。問題ありません、我が主。あれ程素晴らしい先生に対しての暴言は絶対に許されてはなりませんので、ご命令頂ければタッシュと言う無能をその場で裸にひん剥いて逆さ吊りにして御覧に入れます」
流石に主であるロイと二人の状態でダイヤキングが扮する万屋のような口調になれるわけもないので、冷静な口調で話している。
ダイヤジャックとしてはロイの意思・・・殺生は好まない部分を最大限に配慮した上で過去の実績も含めた結論を告げるのだが、対面にいるロイの表情は芳しくない。
「わ、我が主?如何されましたでしょうか?」
「いや・・・その裸にする考えも一旦置いておこうよ。誰が得をするんだ?って話しにもなるでしょ?俺としてはヨーレイ先生の無実が証明される事、パーミア先生も含めて環境が変わらずに楽しく授業が受けられる事が達成できれば良いからさ?なるべく穏便にしないとね」
ダイヤジャックが全教師の前でタッシュに力業を行使すれば、その原因がタッシュに有ろうが一生徒であるダイヤジャックの暴挙と判断されて退学になる可能性が高い。
そうなると結果的に再び魔力分野の生徒は二人になってしまうので、校長は過去クラスの存続を明言したが恥をかかされたタッシュがどのような行動に出るのか分からない。
次回も同じように生徒の追加であれば顔が似ている他の部隊のジャックを対象には出来ないが、一般のカードを使えば対応できる。
ただ・・・次回も全く同じ条件でタッシュが攻めて来るとは思えずにどう考えてもゼシューを含めて更に対応し辛い条件を出してくる可能性が高いので、なるべく穏便に解決したいと思っているロイ。
中途半端な力で解決してしまえばダイヤジャックの退学とその後の対応に不安があり、過分な力で対応すると万屋だのが設立されそうなのでそこも許容できない。
そう考えているとダイヤジャックが現状を報告し始め、事態は好転していると安心したロイ。
「ご指示に従います。今のところはヨーレイ先生の機転で上手く事が運んでいるようです。タッシュとか言う無能教官は自らの錬金の能力では手も足も出ない道具を改善したと宣い、その品の大きさや外観を公開しました。特に大きさは性能上小さくできないと明言したのです。既にヨーレイ先生にお渡ししている道具は以前の道具と比べて一回り小さくなっておりますので、冤罪をかけられる事はないでしょう」
「直にそのような対応が出来るのって、相当優秀だよね?俺だったら焦って何もできないと思うんだ」
「そんな事は有りません、我が主。我らの能力は我が主のお力です。万物の頂点に立てるほどの力をお持ちなのです!」
ロイが自らを卑下してしまったので本能から否定したダイヤジャックと、この流れの行きつく先は商会設立になる可能性が捨てきれないので直に話題を変えるロイ。
「そ、そうかもしれないね。ところで、改めて会議の様子はどうかな?ヨーレイ先生とパーミア先生のタッグであれば、タッシュ先生一人をあしらうのは問題ないと思うけどさ?一応常に情報を仕入れておかないと」
正に今別件に注視する必要があると意識を誘導し、ダイヤジャックは即座にカードのダイヤキング、そこから現場にいるスペードクィーンに指示が飛んで直に現状報告が上がってくる。
「我が主。タッシュは有りもしない道具の練成について具体的に熱く語り始めているそうです。正直全てをそのままお話しすると笑ってしまいそうなので、そこはご容赦頂けますでしょうか?」
「え?そこまで凄い事を言っているの?一応確認だけど、二人に害はないんだよね?」
「はい。今お二人は非常に落ち着いており、時には笑いを堪えている様子が確認されておりますので全く問題ございません」
今の報告であればダイヤジャックが会議室に乗り込む必要はないはずなので、力の秘匿についてアレコレ悩む必要が無くなったと思っているロイ。
「状況が大きく変わるか会議が終わったらまた教えてくれる?その間は、今までに学んだことを試してみたいのだけど?」
最も、そして唯一と言って良い程に改善しなくてはならない事は、ロイの魔力が必要以上に消費されて全てのカードを顕現すると魔力枯渇症によってロイの意識が飛んでしまう事だ。
差し当たりの対策としてはダイヤ部隊特性の魔力供給具があれば全く問題ないのだが、できれば自分の力で制御できた方が良いとの思いがあるロイなのでダイヤキングからの道具作成の申し出は今の所断っている。
「俺の右手はやっぱりカードを取り出す時に集中的に魔力が消費されるから、普段もここが過剰に消費している事がわかったじゃない?だからさ、対策としてカードを取り出した際にも右手の魔力消費を抑えるか補完する為に動く魔力を、能力を維持できる範囲で最小限に留める必要があるよね」
「そこはヨーレイ先生の持論と合致しております。最近では随分と魔力消費が抑えられているように見受けられますので、そろそろ頃合いかもしれません」
魔力総量を計測する道具を以前に渡されていたが・・・今では改善した魔力可視化の道具によって修練を積んだ結果、ダイヤジャックの言う通りにカードを顕現した際にも魔力の消費は過去と比べると相当低くなっていたので返却している。
「おっ、我が主。道具のありかは継続調査として会議が終了したようです!」




