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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(309)全員の会議③

 真偽すら確かめていないままだが、全く取っ掛かりすらなかった道具に関して素材の一部が判明したので何も考えずに本能の赴くまま素材採取に向かうタッシュ。


 練成に必要な素材は部下に指示を出すか外注によって補い研究を続けていたので自ら足を運んだ経験は皆無だが、立場がある程度盤石になって時間が出来た際に色々な素材について更に知識を得ようと学んでいた時がある。


 その際に赤兜については文献から知識を得ており、赤い兜を被っているように見える魔獣で好んで草むらに生息している所までは知っている。


 ついでに言えば非常に希少な個体である事も知っているのだが現実は人が足を踏み入れられる範囲に生息している個体が希少だと言うだけで、そこを考慮すれば外敵が多い場所に生息しており応分の強さを持っている証明になるのだがそこまでの知識はない。


 相当な強さを持っている事が分からないので、今の自分の力・・・錬金術を行使して作り上げた各種道具を駆使すれば容易に発見できるし、素材も入手できると信じて疑っていない。


 その後は即手持ちの破壊している道具と明言された道具と共に練成することで、容易に修復する事が出来ると考えていた。


 非常に甘い考えだが、仮に練成が出来たとしてもこの素材で修復できる状態なのか確定していないし練成できる実力を持っている保証もない。


「これで何とか乗り切れた。この私がここまで追い詰められるとは、やはり無能クラスは少しでも早く解体しておくに限るな」


 明日に迫っている教官会議は絶対に乗り切れると無駄な確信を持っているので余裕がでており、周囲に誰もいないので何を言っても問題ないと思ったのか余計な言葉を漏らしてしまう。


 実はこの呟き、ロイが慌ててタッシュの命を守るべく指示をした事で緊急的に出動しているスペードジャックに聞かれており、そこからロイを含む面々に伝わっている。


「我が主。やはりあのゴミはそのまま放置で如何でしょうか?何なら赤兜と素のままで対峙させても良いかもしれません。既にジャックは対象の魔獣を発見しておりますので、対面させるのにそう時間はかかりません」


 スペードキングは、ジャックから上がってきた情報を聞いて珍しく感情的になっている。


「止めておこうよ?結局素材を入手しても練成できないのだよね?できたとしても直せないのでしょ?だったら中途半端に解決策が見えているのに達成できないわけだから、より歯がゆくなって面白い状態が見られるかもしれないしね」


 何もせずに放逐は出来ないと思っているのはロイも同じだが、カードの常識を思い出した今となっては何も制限を設けずにこのまま許可を出しては凄惨な未来が確実に待っているのでタッシュの命に危険がない範囲で対処する意思を示したロイ。


 明確に対応するとロイが伝えている以上はその意を違える事は出来ないが、無罪放免ではないと明言しているので怒りも収まるスペードキング。


「承知しました。では先にご指示いただいた通りに対応いたします!」


「それでお願いするよ」


 スペードキングが熱くなる前に顕現させているカードの者達に指示を出していたロイなので、その通りに動くと宣言したスペードキング。


 赤兜からすればとんだとばっちりでその命を散らせているのだが、発見している個体の中で人里に最も近く危険になり得る存在を刈り取る様に指定されていた事から別動隊としてスペードクィーンが動いていた。


 あくまでスペードジャックはタッシュの護衛の位置付けの為に遠くの気配を察知しても本心では嫌だが護衛対象から離れるわけには行かないので、初めからクィーンも顕現している。


 立ち位置的にジャックよりも強い力を持っているクィーンなので赤兜の一体はかろうじて生きている状態で運ばれており、タッシュが向かっている方向から想定される目的地に放置されている。


 自力で動ける状態ではなく、ある意味被害者である事を考慮してスペードクィーンの力によって意識を飛ばしている状態になっている赤兜。


 放置した場所はカード状態のダイヤキングを介してタッシュの護衛をしているスペードジャックにも伝わっており、タッシュの向かう先が若干でもズレた際には強制的な風によって方向を修正している。


「何故今日はこれほどに風が強いのだ!それも右から左から・・・と、厄介な!」


 まさか進む方向を調整させられているとは知らないタッシュは、折角気分が上昇しているのに思う通りに進めない事に苛立ちを覚えている。


 右に寄っては左に戻され、左に寄っては右に戻されながらなんとか進むと、今までとは明らかに草の高さが低くなっている一区画に赤い兜が見えた。


「誰か倒れているのか・・・いや、あの色であれば標的か?」


 実物を見た事が無いので、仮に人が倒れているのであれば周囲に危険な存在がまだいるのかもしれないと無駄に各種道具を起動する。


 道具の起動には魔力が必要である為に魔力を補填する道具も起動しているので、まるで錬金術師による道具の見本市の様な状態になっている。


「特に危険な存在は居ない様だな。だとすると既に息絶えている人なのか、はたまた赤兜なのか・・・このような所に赤い兜を被っている存在が寝ている可能性の方が低いからな。何やら流血している様なので恐らくどこかで襲われてここで力尽きたか?流石はタッシュ様だ。労せず素材を入手できたな」


 周囲の生物・・・植物以外の生物を探知する道具も起動しており、自ら作成した道具に絶対の自信があるタッシュは危険な存在は存在しないと確信しているのだが、実際にはその道具では全く察知する事の出来ない格上の存在であるスペードジャックが嫌そうな表情を隠しもせずに護衛をしている。


 安全だと頭で理解しながらも初めての生の素材、それも魔獣の素材を目の前にしているので恐る恐る近接して赤兜だと把握すると、やはり道具を使用して直に素材を入手したタッシュはそのまま急ぎ研究室に戻って行った。


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