(301)魔力分野のクラス
タッシュとゼシューの行動は簡単に予想できていたのだがまさかそこまではしないだろうと淡い期待を抱いていたヨーレイ、ミルバ、ロイだが、残念ながらその期待は簡単に裏切られた。
目の前に座っているパーミアから発表会の話しを聞き、参加者に関して明確にヨーレイが除外されている時点で内容を聞かずとも何が起きたのかはわかってしまったので自らその内容を当ててみせたロイ。
「パーミア先生。あの道具はジャッ君が準備してくれた品ですよ。その品を奪って教室から去ったと思いきや、自分の品だと言って偉そうに公表する神経が信じられませんね。その道具を使用した時に校長先生も居ましたけど、立場もあって何も言えなかったのでしょう」
「何だか軽く言っているけど、それって大問題じゃない!教官としては絶対にあってはならないことよ!人様の努力の結晶を奪って自分のものにするなんて!」
憤慨しているパーミアだが、現実が厳しいことも知っている。
「だけどあの二人であればそれができちゃうのよね。あの品がジャッ君の物だったと証明するのは難しいでしょう?校長先生の証言があったとしても・・・悔しいけど、今の学校内ではこれが現実なの。私もどうにかしなくちゃいけないとは思っているけど難しいわね」
「私の弟が申し訳ありません、パーミア先生!」
権力があるので不条理がまかり通っていると言われているので、権力の源であるゼシュー王子の兄であるミルバが謝罪している。
「ちょ、ちょっと!ミルバ君が謝ることじゃないわよ。むしろ学校のことを改善できない教官である私が謝罪することよ?でも何故貴方達はこんなに落ち着いていられるの?私が言うことじゃないけど、名誉を含めて全てを奪われたのよ?」
本心からの謝罪なのだが、あれほどの品を奪われて成果も強奪されているのに平然としているこのクラスのヨーレイを含めた四人を心底不思議そうに見ているパーミア。
「パーミア先生。さっきロイ君が伝えたとおりに予想できていたことです。それに、ジャッ君によればあの道具は間もなく壊れるそうなので、成果を証明する品はなくなります。逆に言えば中途半端に成果を見せて再度証明できない事態に陥っているのですから、此方としては楽しみが増えたくらいの感覚ですよ?」
「あはははは、ミルバ君も言うね!その通りだよ。次にあの連中が来たとき、何を言い出すのか期待しちゃうほどだよね?」
「ふはははは、ミルバ君とロイ君の言うとおりだな。あのゴミを持って自信満々に発表会?心底笑わせてくれる」
「確かにその通りかもしれないけどさ?壊れている可能性が高いとしても、道具は向こうにあるんだよ?」
「そ、そこも大丈夫ですよ。私には良くわかりませんでしたが、ジャッ君は奪われることを想定してあの道具を準備してくれたのです。そ、その上に私の授業に必要な品はもっと高品質のモノを準備していただけました」
徐にポケットから一つの道具を出して手に持ち軽く魔力を供給すると、発表会の場で見た魔力の可視化よりも鮮やかに詳細まで理解できる状態となる。
「え?すごっ・・・ナニこれ?ジャッ君!ちょっと君が準備したのでしょ?ちょっとすご過ぎよ!これこそ大々的に発表するべきじゃない?」
教室に入ってきた時以上に興奮しているパーミアは、ダイヤジャックをグイグイ攻める。
普段攻めることはあっても攻められた経験は皆無なので、勢いに飲まれているダイヤジャックをロイが助ける。
「あの、パーミア先生?そこも皆で話し合っています。今の魔力分野のクラスは非常に力が弱いじゃないですか?そんな状態でこれだけの発表をしてしまうと、それこそタッシュ先生のような存在に成果を強奪されたと言われかねません。事実がどうあろうが、押し通される可能性もありますから」
「そ、そうね。その通りだったわ。知能担当教官として恥ずかしいわ。でも悔しいわね。何とかあいつ等の伸びきった鼻をへし折ってやりたいわ!」
見かけによらず攻撃的なパーミアだが、自分勝手な考えで暴走して迷惑をかけるようなことはない。
「大丈夫ですよ!ヨーレイ先生が伝えたじゃないですか。あの道具は壊れるって。不完全ながらも道具の機能を大々的に宣伝した以上、改善後の状態の二度目を求められるのは当然ですよね?俺たちはその時を黙って待っていれば良いのですよ」
「私たちがジャッ君の道具について新たな発表をしてしまうと論点が盗難にすり替わる可能性がありますし、最悪はその道具を破壊した犯人に仕立て上げられる可能性すらありますからね。現状維持が最善です。これが私たち魔力分野のクラスの総意です」
最後の締めは王子であるミルバが行い、過去にないほど結束しているクラスだと肌で感じたパーミアは素直に引く。
「そっか。そうだよね、わかった。私も余計なことはしないけど、次の発表を含めて面白いことが起きそうな時にはすぐに教えてあげるね?」
勢いがついている権力者を相手に実行できる対応ではないのだが、あまりにも自信満々に、そして平然と言い切るロイ達をみて毒されたのか楽しく感じているパーミア。
こうなると意識は新たな道具に集中し、やはり教育者らしくその機能に興味が集中する。
「ジャッ君。私にもその道具、試させてもらっても良いかな?」
「む、当然だ」
道具を渡された後に意識して魔力を供給しなければ何も反応しない時点でタッシュが作成した品とは異なっており、これだけでも道具の性能の差が明らかだが・・・能力を発動するために自然と魔力を消費しているだけの一般人とは異なり、魔力の供給を意識して実行できるのはヨーレイやパーミアに実力があるからだろう。
因みに校長もその実力を備えているのだが、未だに魔力枯渇による体調不良で寝込んでいる。
「本当に凄いわね。これなら能力発動時にどのように魔力が消費されているのか、より詳しく理解できるわ。効率的な魔力の使用方法が視覚によって学べるのね」




