(300)面目と事実
大々的に盗品について説明して自らの功績であると認知させるための今回の発表会では、かろうじて道具の機能を証明する事はできたのだが実使用には大きな問題があると認識された。
「タッシュ先生。確かに素晴らしい道具ですが、魔力の流れをしっかりと把握する時間が取れないのではないですか?それに校長先生レベルの力を持っている方でこの時間しか起動できないのであれば、一般の生徒に対して使うことはできませんね」
学問的な話しになればしっかりと意見が言える存在はまだまだいるので、当然の意見が出てくる。
「私もそう思いました。起動した瞬間に可視化が行われたのは素晴らしいですが、その分魔力の消費が激しいのかもしれませんね。多少可視化が遅れても良いので魔力の消費を削減するのは如何でしょうか?」
だんだんと道具の改善にまで話しの内容が進んでしまい、全くこの場をコントロールできなくなっているタッシュ。
「例えば部分的な可視化から始めるのもアリかもしれませんね。全体の中で異常な部分を把握すれば、その後は部分的な可視化のみで改善対策が行えると思いますが?」
実行できるかは別にして、どのようにしてこの道具を有効に活用できるか教官らしく活発な意見が出されていた。
「タッシュ、タッシュ!もうこの場はお開きにしておけ!」
「そ、そうですね。私もそうするべきだと思っておりました。それでは私の方から終了宣言で宜しいですか?ゼシュー王子」
「構わん。特に余が言わずとも問題ないだろう」
これ以上白熱してしまうと何時迄に改善品ができるのか問われかねないと思った二人なので、揃ってこの場から逃げることにした。
何とか椅子に座って肩で息をしている校長の手から道具を奪い返すと、二人は白熱している教官達を完全に無視して講堂から去って行く。
「だがタッシュ。もう少し簡単に使えるように改善する必要はあるぞ?あれほど大々的に公表した結果ある意味不具合と認識されてしまったのだ。逆に言えば改善すれば今以上に高い評価を得られる良い機会だ!死ぬ気でやってみろ」
「承知しました」
色々と試した結果全く歯が立たずに今回の強制的な発表に至っているのだが、そこを完全に無視した形の命令が下されて否とは言えずに苦悶の表情で一応肯定の意を示しているタッシュ。
最悪は逃げることも頭をよぎったのだが、なぜ自分が魔力分野の連中のせいでこの立場を捨てて逃げる必要があるのかと逆にやる気が漲り始める。
「ゼシュー王子!この程度の道具を改善するのはこの私の頭脳をもってすれば容易です。魔力分野の連中より劣っているなどありえませんから!」
「そうだ。その気概が大切だ。楽しみにしているぞ!」
全く分析の足掛かりすら見つけられなかったことは時間が不足していたからだと自らに言い聞かせ、強制的に奮い立ち道具を手にズンズン自らの研究室に戻るタッシュ。
彼は学校内で私室の他にも研究室まで持っており、最近は研究室に出向く頻度は激減していたのだが今日から暫く籠ることになる。
幸運だったのはこの一連の流れを他の教官から好意的に解釈されたことで、道具の改善の議論が白熱している内にいつの間にか当事者のタッシュが不在になっていたのだが、おそらく自分たちの改善案を聞いて早速動き始めたのだろうと思われている。
校長が犠牲になってあり得ないレベルの可視化をその目で見ていたので、道具の性能はタッシュが自信満々に言っていた通りだと理解したこともその推測を確信に変えていた。
その中にはヨーレイと仲の良い知能分野担当教官のパーミアも含まれており、普段の態度や教育に対する姿勢を好ましく思っていないながらも実力は認めていたので、仮に改善品が世に出ればヨーレイの学問の助けになるとも考えている。
夕方・・・授業が終了する直前にパーミアはヨーレイの教室を訪問して発表会の事を話し始める。
机を近接させてヨーレイも生徒三人と共にその輪に加わる形で授業が行われていたので、そこにパーミアが割り込む形で椅子に座る。
今日の授業はダイヤジャックが供給した道具が優秀すぎたおかげで実地を含めて終了しており、明らかに雑談をしていたので遠慮なくパーミアも輪に加わる。
「ちょっと聞いて?今日タッシュ先生が急に教官を集めて発表会をしたの。ヨーちゃんのことも伝えたけど、あの性格だからさ?で、私が聞いてその時の説明をすれば良いかと思ったのだけど正直今回は驚いたわ!」
「すみません。具体的な内容を聞く前に、俺の予想を伝えても良いですか?」
多少興奮気味のパーミアだったので通常であれば具体的な内容を告げていない状態でも内容に興味がわくのが一般的であるところ、ヨーレイを含めて極めて反応が悪かった。
挙句ロイが話しを聞く前に内容を当ててみせると言わんばかりの態度であったため、なんとなく冷静になったパーミア。
「え?うん。じゃあお願い」
「ありがとうございます。その発表会を間違いなくタッシュ先生が開いたとするならば、発表の内容は魔力可視化の道具ですよね?それも以前の品とは大きく異なって色の濃淡で魔力の濃さがわかる品。違いますか?」
「え?え?ロイ君はあの場にいたのかな?それとも、遠くの話しを聞き取れる能力でも持っているの?」
パーミアの態度から予想を外さない行動に出たと理解したのか全員が呆れの表情になっていた為に、パーミアだけが困惑していた。
「えっと・・・皆、どうしたの?」




