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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(295)交渉②

 授業中に勝手に襲来し、明日までに新たなクラスメイトがいなければ魔力分野のクラスを解散させると言い切ったタッシュ。


 彼個人にそのような権限は一切ないが、王位継承に極めて近い存在の第二王子ゼシューの力を借りてこのような暴挙に出ている。


 校長も納得いかない部分があるので表情は暗いが、現実的に未だ何も益を生み出していないしこの分野を学ぼうとする人材も減少し続けているので正直に言えば仕方がないと思っている部分も多少ある。


「あれ?ペテン先生。試験を受けなければ入学できませんよね?明日までと言われても、今日試験を受けなければならないと考えると・・・単純な算数もできないのですかね?」


 これは看過できる範囲を超えているとロイが介入し、試験と入学の関係から誰でもわかる日数計算すらできないのかと煽っている上に敢えて呼び名も間違えている。


 ロイとしてもヨーレイからの教えは非常に面白くためになるし、唯一のクラスメイトで友人のミルバとこのような理由で袂を分かつのは絶対に許容できない。


「君は・・・ロイ君だったね?その通りではある。従って今回に限り試験は免除とするが、明日までという期限は変えられない。方法としては他のクラスから勧誘する手段・・・」


「ダメだ!試験免除は認めてやるが、余の権限で他のクラスから引き抜くことは許さない!この無能教師は知能分野担当教官と仲が良いからな。そこから一時的にでも移動させる可能性がある。姑息な連中の考えることなどお見通しだ!」


 校長が妥協案を捻りだしたところ、ゼシューがこの学校から引き抜くことを明確に禁止した上に更なる条件を告げる。


「試験の免除は認めてやるが、有象無象が来るのは認めない。しっかりと廃れた学問である魔力分野にふさわしい無能・・・魔力が相応にある人物しか認めない。魔力についてはこの可視化の道具で判断する以上は得意のイカサマはできないぞ?」


 そもそもこの国で全く重要視されていない上に無駄と思われている魔力分野の学問なので、魔力が膨大だとしてもロイのように異大陸からの来訪者でもない限り望んでこのクラスに入るような人材はいない。


 試験免除を許可したとしても今から明日の朝までに新たな生徒を加入させるなど、この国の常識(・・)で考えれば不可能だ。


「こちらからは以上だ。明日のこの時間にこの教室を訪問する。そこで一人でも増えていなければクラスは解散。申し訳ないがヨーレイ先生も担当教官の地位からは外れてもらうことになる」


 ミルバに関する件は王族であるために自分の範疇を大きく逸脱しているので何も明言できないが、ヨーレイに関して言えば担当教官の立場を失ってクラスも解散となれば間違いなく失職だろうと考えているタッシュ。


「はははは、明日が楽しみだ!」


 嫌な笑顔の二人と何とも言えない表情の校長は教室から出ていくとミルバは悔しそうに下を向いており、ヨーレイは茫然としている。


「クソッ・・・なぜ錬金術の能力がないだけで、ここまでされなくてはならないんだ!」


「わ、私、一生懸命勉強してきたのに、ここで終わっちゃうのかな?」


 もう二人は打つ手は何一つなく絶望の淵にいるかのようになっているのだが、ロイだけは違う。


「あのー、一人入学すれば良いのですよね?魔力があれば良いと言っていましたから、ちょっと俺に心当たりがあるので信じて任せていただけますか?」


 異大陸から単身で来た上に数日しか経過していない為にロイに伝手があると言っても信じることはできない二人だが、おそらく少しでも気を楽にして貰いたいロイの優しい気持ちだろうと考えた。


「そ、そうなの?ありがとう、ロイさん。じゃあ気を取り直して授業を続けましょう」


「申し訳ない。ハルバン伯爵が出航していなければそこから何とか手を回せたのだけど、既に出航したと聞いているので私では何もできない」


 結局何とも言えない雰囲気になってしまい、ヨーレイも動揺が隠せなかったのかフワフワした授業で一日が終わる。


「ダイヤキング!」


 夜、スペードキングから全ての情報が入っているはずなので、宿で多少怒りの感情が収まらないままダイヤキングを顕現して前段なしに対策を話すロイ。


「錬金術が異常なほどに重要視されているから、ダイヤ部隊の誰かに俺と同じクラスのクラスメイトとして入ってもらおうと思っている。ただ、キングは全体の統括があるだろうから他の人でお願いするよ?」


 全体統括も事実だが常にダイヤキングを顕現した場合に再び万屋や訳のわからない商会を作りかねないという不安があるので、持ち上げつつ拒否しているロイ。


「承知しました、我が主。しかし・・・何を行うにも魔力が必要なのは周知の事実。そこを無視して魔力分野の学問を否定し、排除するとは考えられません。正直我らですらこれまでの授業を拝聴し、ヨーレイ殿から学ぶことは多数あると感じております」


「だよね。俺が倒れた魔力不足に関する対策もできそうだし、このままクラスが消滅して授業が受けられないと困るからね。で、誰にする?」


「ある程度の力があり、そしてクラスの雰囲気から考慮すれば男性が良いでしょう。従ってダイヤジャックを推薦いたします、我が主」


 確かにあの場にダイヤクィーンを連れて行った場合には、ミルバが惚れて授業にならない可能性があるので素直に受け入れる。


 逆にダイヤジャックであれば担当教官のヨーレイが・・・と思わなくもないが、そうなってしまった場合には都度考えようとダイヤジャックを顕現するロイ。


「俺とジャックは・・・この町で知り合った人。ちょっと苦しいけどこれで押し通すよ?それと堅苦しい話し方は完全に禁止。ミルバ君と同じ立ち位置と言えば理解できるよね?これからクラスメイトとして、よろしくね?」


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