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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
291/301

(290)教室にて

 ミルバにここまで対応されては一教師に過ぎないタッシュが反論できるわけもないが、王位を狙っている同格以上の立場になっているゼシューにしてみれば格下に反撃されたと感じている。


 明確に王族の争いが目の前で起き始めたので我が身が可愛いタッシュは少し前の態度とは打って変わって大人しくなっているが、ゼシューは止まらない。


「事実を突きつけられて逆切れか?・・・はぁ、見苦しい。そんなことだから長兄なのに王位が危うくなっているのだぞ?いや、もう確定していると明言しても良いだろうな。お前の事を認めている貴族は誰がいる?常に海上を無駄に漂っているハルバン伯爵以外には思い当たらないが、奥の手でもあるのか?」


 悔しいがゼシューの言っていることは正しく今のミルバはゼシューと比較すると力がないのは確実であり、故にヨーレイの強制的な失職についても止められる力もない。


「何を黙っているんだ?教師も生徒も無能。誰しもが知っていることだ。魔力に関する学問なんざ、結局使い物にならないんだよ!」


 勝負は見えたと感じたゼシューは追撃を入れたのだが、ミルバからくると思った反撃がヨーレイからきて少しだけ驚いている。


「で、ですが・・・何をするにも、錬金を行うにも魔力は使っているのですよ?」


「!?ははははは、確かにそうだろうな。で?それがどうしたのだ?無能教師!誰しもが持っている魔力を錬金術として活用できない無能が何を言いたいのか、余にもわかるように説明してくれないか?」


 この国ミューゼ王国の状態をカードの力なしにある程度把握できたロイは、単純に情云々ではなく授業が楽しかったこと、同年代と友人になって今後も新たな知識を教師としての実力が高いヨーレイから教わりたいことから介入を決意する。


「はぁ~、子供の喧嘩かな?ここが何処だかわかっていない王族と教師。そっちこそさっさと引退したほうが良いと思うけどなぁ」


 突然異分子からこれ以上ないほど攻撃的な言葉が聞こえてきたので、空気になっていたタッシュも息をふき返す。


「お前!無能のくせに何様だ!今日が初めての登校だからと言って看過できないぞ?」


「はいはい。試験の素材を勝手に変えた無能教師が何を言っているのですかね?そうだ!一個だけ余っているので、是非とも正しい錬金術を見せてくださいよ?」


 スペードキングによって一般的には素材ではなく廃棄物となる品、ダイヤキングが無駄に黄金にしていたが元に戻した・・・試験時にロイが渡された品が目の前に取り出される。


「・・・何処から出した?何の道具を使っている?」


 タッシュは二度目なのであまり驚かないが、ゼシューは初見の為に極めて常識的な疑問が口から出ているがロイはそっけない。


「全てが余計なお世話かな。で、ペテン師でしたっけ?この素材、俺の目の前でしっかりと錬金してもらいましょうか?まさか何も力を持っていない可能性が高い受験生に対して与えた素材、教師が全く加工できないなんてことはないですよねぇ~?」


 ゼシューの意識はロイの動きに集中しており、無能クラスにいる以上能力を持っているはずがないとの先入観があるために、自分でも全く動きを理解することのできなかった何らかの道具を使っている可能性が高いと思い注視している。


 少しでも長く観察しておきたいので、そのままロイの進言を言葉通りに受け取っている。


「タッシュ。お前ならば試験に使用するレベルの低い素材程度は直ぐに加工できるだろう?受けてやれ。その代わりお前(ロイ)もやってみろ!」


 目の前で錬金術を行使できるとは思えないが何らかの成果を見せつけるために再び同じ道具を使う可能性が高いと確信しているのか、敢えてタッシュにも作業をさせてロイの動きを観察することを選択していた。


 言われたタッシュは非常に焦っているのだが、第二王子であるゼシューが一度明確に宣言した言葉を翻した試しがないので絶対に何も変化が起きないと理解しながらも形だけでも錬金術を行使しているように行動し、そもそも素材が錬金できる品ではなかったと後から教えれば良いだろうと受け入れる。


「わかりました。おい、無能!その素材、半分にして私にもよこせ!」


 タッシュは焦りのあまりにすっかり失念しているが、この素材は再利用が全くできないほどの品である為に相当固く、強制的に潰すことはできなくもないが綺麗に切断するのは至難の業だ。


「はいはい・・・っと。楽しみにしていますよ?担当教官の錬金術ですからね。最も重要で最も価値のある技術。それは素晴らしいだろうなぁ。楽しみだなぁ」


 即座にスペードキングが影に持ち込んできっちり二等分して再び同じ場所に戻すのだが、一般人では一瞬で切断されたようにしか見えない。


 瞬き一つしていないゼシューだが、今の切断すら全く理解できないうちにいつの間にか綺麗に半分になっていたのが信じられないでいる。


「じゃあ、試験の時と同じようにじっくり見せていただこうかな?」


 半分になっている素材をタッシュの近くの机に置いて、その近くにある椅子を引いて座りながら敢えてニヤニヤしているロイ。


「な、ふざけた態度の無能が!お前も錬金術を試す必要があることを忘れたのか?これだから無能は!」


 ヨーレイとミルバから見ればロイは魔力に関する学問に真摯に向き合い決して横柄な態度をとらない真面目な生徒と認識していたので、これほどまでに国での立場が上の存在に対して平然と煽れるとは思っていなかった。


 特に王族のミルバは今後ロイの立場が悪化するのは確実だと考え、ヨーレイと同様に自らの力が及ぶ限り全力で庇護することを決意していた。


「俺の実力は知っているのでしょう?担当教官から見て無能と判断された俺のことは気にしなくて大丈夫ですよ?さっ、教師としての実力を見せてください!」


 こう言われても何も変化を起こせない事実を理解しているので、動けないタッシュだ。


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