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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
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(289)ミルバと

 通常は自分の能力を自ら公にすることは無いと言って良いのだが、その常識を覆すように収納の能力持ちであると告げたロイ。


 普通の能力ではなく何も収納できない部分も含めて直ぐには呑み込めなかったミルバとヨーレイだが、ロイが噓をついているとは思えないので今までの経験と知識から何かを考え始める。


「そ、そうです!逆転の発想で、魔力の流れが良すぎるので能力発動に対して必要以上の過剰な魔力供給を行っているのではないでしょうか?」


 右手の部分の魔力の流れが異常に良いということはロイが必死に能力発動の修練を積んだとも読み取れてしまうので、教師らしく改善策を提案しているヨーレイ。


「そうだよ!きっとそうだ。流石はヨーレイ先生!素晴らしいですよ」


 その案にミルバが同意し、ロイとしてはここまで真剣に自分のことを案じてくれている人に対して少しだけ後ろめたい気持ちになっている。


「えっと、ありがとうミルバ君。ヨーレイ先生もありがとうございます。俺は色々事情があるので、能力発動に関しては特に何も思っていません。本当ですよ」


 本心からの言葉だが魔力の消費量に関しては意識したことがないので新たな視点だと思い、今後仮に全てのカードが顕現した際に倒れることが無いように消費量の制御を含めて検討する必要があると思っている。


 ロイの表情が晴れやかなことからこれ以上この話しをするべきではないと思ったのか、ミルバは自分のことを語り始める。


「私は魔力が多いのは自覚できているけど、どうしても能力発現に至ってくれないんだ。少なくとも錬金術を行使するような修練を積まされていたけど全く発動しなかったから適性がないと思っている。それで、この魔力を使用した能力は何なのか・・・そのあたりの解決もできればと思い学校に通っているんだ」


 ロイ程ではないが、可視化の道具を使用した際には相当な密度の魔力が体を覆っているように見えたので、本人としてはどうしても何らかの能力が発動してほしいと切に願っているのが良くわかる。


 一瞬暗くなりそうになったのでヨーレイがパンと手を叩いて視線を集める。


 話しが盛り上がってきてからは教壇ではなく生徒の席に移動して椅子に座り、まるで雑談のように会話をしていた。


 内向的な性格なのか、何とかこの雰囲気を変えなくてはならないと反射的に行動した結果、何を言って良いのかわからずに言い淀んでしまう。


「え、えっと・・・お、お昼はどうしましょうか?」


「プッ・・・あはははは、ヨーレイ先生。まだ授業が始まったばかりですよ?流石にまだ私のお腹は空いていませんけど。ロイ君はどう?」


「正直俺もだね。ヨーレイ先生は見かけによらず食いしん坊ですか?」


 ミルバとロイはヨーレイの配慮であったことはわかっているが、楽しい雰囲気を壊さないように敢えてこのような話題に乗っている。


―――ガラガラ―――


 そこに・・・一応今の時間は授業中なのだが、無遠慮に誰かが容赦なく入ってきた。


 ヨーレイと仲の良い知能分野の担当教官であるパーミア関連かと思ったのだが、残念ながら最も来てほしくない存在が来ている。


「はっ、流石は最底辺の分野だな。とても授業中とは思えない。学んでも活かす場はないし、有益ではないのだから仕方がないか?」


 眼鏡を直しながら三人を睨みつけているのは錬金術担当教官のタッシュ。


 ロイを含めた三人は嫌でもその方向に視線が向くと、タッシュの後ろには一人の生徒が同じように見下すような視線を向けていた。


「こちらがミューゼ王国の未来を担うお方、ゼシュー王子だ。どこぞの底辺とは異なり、真の王族だと言えるだろう。ゼシュー王子。無能が無能に授業をしている所を見ても得るものは何もありませんよ?そもそも授業の体を成していないではないですか?」


「はははは、確かにその通りだな。まったく・・・肥溜めに新たに蛆が湧いたと聞いて来てみれば、想像以下の存在だったとはな。無駄な時間だったな」


「あ、あの・・・私の生徒を馬鹿にしないでください!」


 一瞬ロイとミルバは相当嫌な気持になって反撃してやろうかと思ったのだが、まさかヨーレイが庇ってくれるとは思ってもいなかった。


「はぁ?お前・・・最底辺の教師のくせに、王子である余に意見するのか?」


「まったくだ。そんなことだから何時まで経っても底辺のままなんだ。何も得ることのない学問とも言えない分野にしがみ付く見苦しい存在は、一刻も早く消えるべきだ!」


「わ、私のことは何と言っても良いです!でも、生徒は一生懸命学びに来ているんです!そこを馬鹿にするのは許しません!」


 圧倒的な体格差もある上に立場も上、そして恫喝まで加わっているのに引く気配を見せないヨーレイの態度に感動すらしているロイとミルバ。


「許さなければどうするんだ?無能のために無職になるのか?あぁ、その方が国の利益になるのでありがたいな。何なら余のほうから手をまわしてやろうか?」


「それは素晴らしいですね、ゼシュー王子!学園の退職手続きは私のほうでもできますよ?その後の再就職は雇用主に対して迷惑が掛かるので、そこに手をまわしていただけると助かります!」


 圧倒的に権力や支持母体の力が弱くなっている第一王子のミルバだが、弟が折角楽しくなり始めた授業ばかりかクラスの存続すら危うくするような言葉を吐いたので迷いなく立ち上がる。


「おい!随分と不敬だな。学校は平等だから黙っていたが、身分や立場を笠にふざけたことを言うのであればこちらも黙ってはいられない」


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