(287)学校へ⑤
初見だが王族と知っていても本当に気楽に話すことができる存在だったことから、同年代の友人としてフランクに接しているロイ。
「本当に久しぶりに共に学べる友人が来てくれて嬉しいよ。もう知っていると思うけど、お恥ずかしながらこの学校は・・・国自体の方針として錬金術が全てだからね。ロイ君が来る前はこの教室も少しガタが来ていたのだけど、何とか改修し終わったところだよ。そう言った意味では丁度良かったね?」
ロイの事前の想像とは異なって重要度が最も低い分野の教室も真面だと感心していたのだが、実はそのようなことはなく第一王子の権限を使ったのかは不明だが最近改修していたようだ。
「そ、そっか。でもさ?これからは俺が一緒に学べるから、絶対に楽しい学校生活になるよ?」
その後はそのまま流れで国の常識や生活様式、特産を含めた話しで盛り上がっており、ロイも相手が王族であれば自分がソシケ王国から来たと絶対に把握していると思い、祖国独自と思われる事象を紹介していた。
「お、おはようございます!」
そこに昨日同様多少オドオドしている担当教官のヨーレイが入ってきた。
「「おはようございます!」」
二人揃って気分が高揚しているのか非常に元気が良く少しだけ仰け反っていたヨーレイだが、直ぐに笑顔になって授業を始める。
「さ、早速授業を始めます。このクラスは魔力のクラスなので、ミルバさんには同じ内容の説明になってしまいますが基本的なお話しをさせて頂きます」
このような教室で教師から友人とともに何かを教わった経験がないロイなので、目がキラキラしている。
「お二人は魔力が相当あります。一般的には全ての人に魔力は存在していますが、計測できない程に微弱な人が大半です。更に・・・その魔力をしっかりと使いこなせる能力がなければ正直魔力は宝の持ち腐れと言えるのですが、能力がある人は稀なのが現実です」
納得できる内容であり、現時点で自らの魔力が体を覆っている程度は把握できるようになっているロイはウンウン頷いている。
「じ、実は私、炎魔法を使うことができます。これで能力の発動と魔力の関係について、実際に見ていただきます」
何やら道具を取り出して魔力を供給したのか、そこから淡い光がヨーレイを照らした直後に空中に何かが漂っているのが見えるようになった。
特にヨーレイの体の周りには空中にある何かとは明らかに異なる・・・何となく濃い状態のモノが漂っている事が見て取れる。
「こ、これは、タッシュ先生がこの国で初めて開発に成功した魔力可視化装置です。周囲に漂っている魔力は大気中に存在している微弱な魔力で、私の周りにあるのは私自身が生成している魔力になります」
非常に分かり易い授業だが、ロイはタッシュと聞いて昨日の嫌な体験が思い出されて思わず質問してしまう。
「あの・・・すみません、先生。あの眼鏡の人って優秀なのですか?」
「タ、タッシュ先生ですか?この道具は正直私たち魔力を使用する人にも非常に有用な道具なので、錬金・錬成の分野では相当優秀であると言えますね」
「他の分野、特に一般常識を含めると屑である・・・と」
非常に小声で呟いたロイだが隣にいるミルバには聞こえていたようで、必死に笑いを堪えている。
国で最も重要と思われている錬金術を教える立場である教官に対して、当人を前にしていないとしてもここまで直球で悪口を言える人はそう多くない。
命知らずか色々と干されても問題ない財力、権力、知力を持っているかに限られるのだが、学生の立場で物言える人物は皆無と言って良いだろう。
「そ、それでは、早速私が炎の魔術を使用します。右手の人差し指から軽く炎を出しますので、魔力の変化に注目してください」
可視化されている魔力は炎が出現している指先に近い部分だけが薄くなり・・・そこを補うように緩やかに指を覆っていた魔力が移行しているように見える。
「ご、ご存じの通りに魔力を消費して発現した魔法能力を行使することになるのですが、この道具が世に出る前はそのプロセスは明らかになっていませんでした」
そう言いながらヨーレイは魔法の威力を少し上げて、焚火程度の炎を発現させている。
「あ!見た感じですけど、魔力を補う範囲が指だけではなく右手全体にまで広がった気がします。でも・・・なんとなく肘の周辺の魔力の移動?スムーズではない気がしますね」
「さ、流石ですね!ロイさんの指摘の通りです。何も意識しなければ魔法を発動している箇所の魔力を消費し、その消費を補うように近くから魔力を補おうとします。そ、その際に魔力の移動がスムーズに行えなければ効率的な魔法を発動できません」
こう話しながら、ヨーレイは大きさは同じだが魔力消費が小さい・・・つまり、少し前の炎と同程度の魔力消費量で見かけ上焚火程度の大きさの炎を出している。
これだけでも相当な制御能力なのだが、ロイ自身は一般的な魔法を行使できないので凄いと単純に感心している。
「こ、これは脅しにしか使えませんが、炎の外側だけをしっかりと再現している炎魔法です。炎の威力としては先ほどの指先程度の力しかありません。ま、魔力の可視化ができる人物がいるとするならば、魔法本来の持っている力も明確に判断することができるのです」
消費量によって魔法の威力が変わるのはすんなりと頭に入ってくるので、消費量自体が把握できれば魔法の質を把握できるのは当然だと納得のロイ。
「と、当然逆もできるわけです。見かけ上は小さく威力がないと思わせ、その実内包されている威力は高い魔法です」




