(285)学校へ③
眼鏡をかけている錬金の試験官から見ればロイが突然暴走したように見えるので、強引に止めようとするのだが止まらない。
つかつかと魔力の担当教官の近く・・・今は錬金の担当教官も近くにいる場に向かって濁っている素材を提示する。
「お前!何を突然わけのわからない・・・」
「あっ、ちょっと黙ってもらえますか?今俺はこちらの先生に話しをしているのです。人の会話を邪魔しちゃいけないって、子供の頃に学びませんでしたか?」
未だかつて最も重要な学問である錬金術の担当教官である自分に対してこれほどの態度をとる人物がいなかったこともあって、耐性が全くないために怒りと恥ずかしさで赤くなったまま小刻みに震えて何も言えなくなった隙に話は進む。
「え、えっと、私の知識の範囲内での回答になりますが、これは錬金術を何度も試して最早使い物にならなくなった素材ですね。普通はゴミとしても引き取ってもらえないので、むしろ廃棄する際にはこちらが費用をお支払いして捨てている品です。何故これを持っているのですか?」
「いや~、どこかの偉そうなクソ眼鏡教官がこれを使って錬金しろって言ってくるんですよ?それも偉そうに目の前で観察しながら。酷いですよね?そのうえ、このゴミに対価を求めて黄金を懐に入れたのですよ?」
まさか目の前の錬金術担当教官のことを言っているとは思っていないので、魔力担当教官は本心がそのまま口に出る。
「そ、それはあり得ないですね。錬金術を行う者でなくとも、普通の人としても最低の行為です。恥ずべき行為の更に上を行っていますよ?あ、相手がわかっているのであれば黄金は絶対に返してもらうべきです!」
「ですよね?」
ニヤニヤしながら錬金術担当教官を見ているロイは、周囲の受験生が目撃者であることになるので未だに震え続けている教官により近づき、徐に小さな袋を取り上げる。
「な!お前!!」
これだけしか反応できないうちにロイは袋の中身をぶちまけると、そこにはついさっきロイが渡した黄金がカラカラと音を立てて床に落ちた。
「あぁ、これは俺が証拠保全のために支払わざるを得なかった黄金です。しっかりと回収させていただきますよ?人として最低の・・・誰でしたっけ?ははははは」
ダイヤ部隊の力を使えばこの程度の袋すら瞬時に作れるほどの技術を持っているので、このような人材が教師を務める分野の教育を受ける気にはなれないので黄金だけを取り返すと同じようにスペードキングに小声で命じて瞬時に収納させる。
ロイの素の力でこの袋の存在と中身の把握ができたわけではないのだが、ロイは異大陸に来て万屋や商会のバックがない状態で見分を広げよとしたところ、のっけからあり得ない対応をされたことで少々強気に出ている。
「え?え?」
何が起きたのかわからない魔力担当教官ヨーレイは動揺したままだが、これ以上は分が悪いと思ったのか錬金術の教官は生徒五人を強引に連れ出して教室から出ていく。
「はっ、どうせまともな素材があっても錬金ができない無能異分子だからな。授業料を先取りしていただけだ!」
言い訳にもなっていない勝手な言い分を残して五人を少々強めに教室の外に押し出すようにしているのだが、五人のほうも嫌がる様子は一切見せずにすぐにこの場から消えていった。
少々放心気味の魔力担当教官をどうすべきか悩んでいるところに知能系統の試験官が教室にきて受験者がロイしかいないことに一瞬だけ驚き、そしてすぐに飽きれの表情に変わった。
「またタッシュ先生が勝手に連れて行っちゃったのかしら?」
「そ、そうです。私が止める間もなく、五人連れて行きました」
「は~、本当に困ったわね。何時ものことと言えば何時ものことだけれど、常にこうだと困っちゃうわ」
「あの・・・それで、成績のほうはどうなるのでしょうか?」
教官二人が愚痴を漏らし始めたので嫌でも事情は分かってしまい、国の指針である以上は仕方がないのか学校の中でも錬金に関する先生が幅を利かせているようだが、そのままロイが放置されるのも違うので通常の流れに戻そうとするロイ。
少し照れながら素の状態で話している知能系統の教官と、残っているのはロイだけなので特段ほかの面々との比較の資料を作る必要がないのかそのまま成績を告げようとしている魔力担当の教官。
「あ、そうだったわね。ごめんなさい。えっと、あなたはロイ君で合っているわよね?」
「そうです。一応今回ハルバン伯爵の紹介をいただいて受験しています」
明確にハルバン伯爵の名前を改めて出し、態度が悪い方向に変わるのであれば最早この学校には用はないと思っているロイ。
「そうよね。一応念のために確認させてもらったの。自信満々に赤の他人の成績を公開しちゃったら教官として大問題になるのよ?そこは理解いただけると助かるわ」
「・・・そうでしたか。それで、成績ですか?どうでしょうか?」
思った以上に好意的な状態が維持されているので、ありえない存在はタッシュと呼ばれていた錬金術の担当教官だけなのかと思い始めているロイ。
「えっと、ロイ君の成績なんだけど・・・歴史や錬金、政治に関する部分が全く回答できていなかったのね。他は素晴らしい考察だったけれど、やっぱり異なる文化の政治や歴史は厳しかったようね」
「実は仰る通りで、正直歴史に関しては問題を見てそんなこともあったのか?と思っていました」




