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暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
284/303

(283)学校へ①

 ハルバン伯爵からの書状を持って、役所と同じく学校に向かったロイ。


「あの・・・今日試験があるとの事で訪問させて頂きました」


 オッドアイではなく白髪でもない生徒もいる事から、特段目立つ事も無く事務所に到着したロイは書状を目の前の女性に渡す。


「はい。役所から連絡を受けています。保証人は・・・あぁ、そうですか。彼方の教室へどうぞ」


 明らかにハルバン伯爵からの書状を見て態度が悪い方に一変したのを感じたのだが、取り敢えず言われた通りに指定された教室に向かうロイ。


 理由など聞かず共この学校、事務所の職員も含む大半が第一王子派を嫌悪していると推測するのは容易い。


「第一王子の人となりは分からないけど、少なくともハルバン伯爵は良い人だと思うんだけどなぁ。事情は詳しく把握しているわけではないけどさ?教育にかかわる人材が生徒に対して露骨に態度を変える。それで良いのかは別の話しだよね?」


 理想を呟きながら指定の教室に到着すると、数人同じように試験を受けると思われる面々が黙って座っていた。


 ロイは誰とも近くなく遠くも無い位置の席に座ってその時を待っているのだが、周囲の年齢も性別もバラバラの人達が何か勉強しているように見えるので少しだけ不安になっている。


 慎重に数人を観察していると何やらブツブツ呪文のようなものを唱えながら机の上に置いてある素材を加工しているように見えるので、この国では最も有用で重要と思われている錬金能力を必死に上げようとしているのだと判断した。


「勤勉なのは良い事かな?」


 試験直前の短い時間で技能が上がる訳も無いので、変に足掻くよりも素直にこのままぶつかった方が良いとロイは気持ちを落ち着けながらその時を待つ。


「この緊張・・・鑑定を行った時以来かな?」


 ロイの後には誰も入室する事が無かったので、試験官が来るまで人間観察をして勝手な想像で人物像を作っていたロイ。


 やはり見かけ豪華な服を着ているのは貴族で、一般の民は少しでも良い立場で学ぼうと今この時も必死に技能を伸ばそうと修練し続けている・・・と、独自で正しい判断が出来ていた。


 やがて教室の扉が開いて眼鏡をかけた男性が入ってくると、教室にいる六人を軽く見まわして人数を確認したように見えるのだが何故か不機嫌になっている。


「今日は編入試験の日だ。一人無能派閥の紹介を受けている異大陸からきた異分子がいるようだが、気にせず試験に臨んでもらいたい」


 どう考えても自分の事を言っていると理解したロイは眉が寄ってしまうが、このまま放置しては最近ではめっきり大人しくなってくれたカードの者達が暴発しかねないと小声で足元のスペードキングに伝える。


「俺は大丈夫。変に動くのは禁止!」


 この対応に意識が向くので心のモヤモヤが晴れるのも早く、試験官からすれば露骨な嫌味を受けても全く意に介する事の無い生意気な存在と映る。


 折角万屋や商会の名が広まっていない場所に来たのだから、背後に隠れている強大な存在が無い素のままのロイとして生活してみたい気持ちでいる。


 万屋の力を知ってしまっているハルバン伯爵一行はとんぼ返りのように再びソシケ王国の辺境伯領を目指すと聞いていたので、そこから情報が洩れる可能性は少ないだろうと思っている。


「では試験を始める。不正が出来ない様にこの私がしっかりと監視しているからな。先ずは最も重要な道具作成、錬金術の試験だ」


 不正の話しの際にロイだけを睨むようにして説明していたのだが、ロイは正直錬金術など何もできないので不正のしようがないと半ば呆れている。


 試験官は一人一人の机に何かの素材を置いているのだが、何故かロイの机の上に置かれた素材だけは少々色が異なっていたので去っていく教官を追いかけるように席を立つ。


「えっと、俺・・・僕の素材だけ他とは違うようですが?」


「はっ、それは無能だからそれに合わせた素材にしてやったんだ。感謝して欲しいな!」


 これは何を言ってもダメなパターンだと思ったロイは黙って席に座ると同時に周囲の面々に視線を向けると、五人全員が目の前の素材に意識の全てを持って行っているのが分かった。


 そこまで錬金術が重要視されている事に驚き、また受験生の意気込みに感心している。


 如何せんそれ以外にできる事が無いのだがはたから見れば余裕の態度である為に、試験官は内容を説明した直後に露骨にロイの近くに近接してじっと手元を眺めている。


 他の受験生には目もくれていないのでロイ以外は不正を行いたい放題の状況だが、誰もが真剣に錬金術を行使している。


 机の上に置いてあった道具が時間を計測していたようで、部屋中にベルが鳴り響く。


「はっ、所詮は無能だな。何も手を付けることができない。やはり何かしらの不正を行おうとしていたのだろう?予想に反して監視が厳しかったので素の実力を出す他なかった。このままだとお前は魔力分野のクラスが決定しそうだな」


 勝ち誇った表情で他とは明らかに色の違っていた素材を直ぐにでも回収したいのか手を伸ばしたところ、ロイは試験監督よりも早くその素材を手に取る。


「何をしている!今更何かを作ろうが試験の結果は変わらないぞ!」


「そうですね。その通りだと思いますよ?でも、この素材が本当に公平だったのかは第三者に確認していただきます。人にはしてもいない不正について無駄に熱く語っていた方が、まさか自ら不正を行っているはずがないでしょうけど?」


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