(282)新たな大陸
船長から説明を受けたロイは、書状を持って言われた通りに町の中を移動している。
「分かり易いなぁ。コレが道具を活用するって事か。何も道具は過剰な能力が付与されていなくても良いんだね」
日本で言う所の道案内の看板が多数あり、迷う事無く一つの建屋に到着したロイ。
「あの・・・これを渡すように言われたのですが」
ここは役所のようで、この大陸では珍しい金髪に一瞬目が向いた受付は書状を受け取って中を読み進めるとゆっくりと立ち上がりロイに向かって一礼する。
「ハルバン伯爵のご紹介ですね。ようこそミューゼ王国へ。では、ロイ様の拠点となる宿と学校についてご説明させて頂きます」
「え?伯爵?・・・は、はい。宜しくお願いします」
あの船長が伯爵と聞いて海洋生物が襲ってきた時以上の衝撃を受けていたのだが、右も左もわからないこの国・・・ミューゼ王国と言うらしいこの国での活動を始める為に素直に従っている。
「ふぅ・・・疲れたな」
今は全ての説明を聞いて疲れ果てているロイが船着場からは相当距離はあるが学校からほど近い場所にある宿におり、窓から何となく外の景色を見ている。
「結構眺めは良いよね」
高台なので遠くに船着き場も見えており、自分が乗って来た船も見えている事から何故か楽しくなっている。
「いやいや、そうじゃない。試験が明日なんて聞いていないよ!全く・・・ハルバンさんは物忘れが激しいのかな?」
部屋からは見えないが廊下に出ればそこにある窓から学校が見えているので、多数の生徒が行き来しているのが分かる。
事前に言われていた通りに老若男女がいるようで、服装から判断するに貴族や一般の民も混ざって学んでいる様だ。
同じ学校に通っているからと言って平等かと言えばそうではない可能性の方が高い事を知っているロイなので、この考えは政治的な不安定・・・王位継承権の争いが起こっている時点で異大陸でも変わらないだろうと確信している。
「あおりを食らうのは、何時も何も関係の無い人なんだよね」
バミュータはこうなる事を予想しており心優しいロイであれば民を思って何かしら行動を起こすだろうと確信しながらも、無理のない範囲で正しく動けるようにとの気持ちでアドバイスをしていた。
「とりあえずは学校に行ってから色々と調査しないと。折角バミュータさんからアドバイスを貰っているからね。それにしても服装が自由で助かったかな。明日試験で明後日転入なんて、有り得ない日程だもんね」
明日と聞いては情報を集めて勉強しても何も変わらないと素直に気持ちを切り替える事が出来たので、宿を出てブラブラ散歩している。
船着き場・・・下り坂方面に向かわないのは体力が無いからであり、主に学校の周囲を散歩しながら生徒と思われる人々の観察も行っている。
時折聞こえるのはどこそこのクラスの誰それの自宅が何らかの襲撃に有って暫く休学していると言う恐ろしい内容だったので、まさか学校の中でも政治的な思惑で一般の生徒が被害に遭っているのかと愕然としていた。
当然その日の夜にダイヤキングにその旨話し、その時点で敢えてジョーカーを顕現して作業する事で遠距離にあるソシケ王国を含む各箇所にいるカードの状態やロイの魔力の調査を行いつつミューゼ王国内の情報収集が行われる事になった。
ロイ自身や顕現済みのカードの者達に関しては何も問題ないと判断され、ジョーカーが集めてきた情報からは学校内部も想定していたほど危険ではないと安堵したロイ。
「そっか。そのどこそこの貴族の方は突然海から自宅が何らかの攻撃を受けはしたけど、被害は多少のケガをしただけなんだね?」
軽い感じで話して良いレベルの内容ではないし攻撃した存在が不明故に対策も取られていないので再び惨事が起きる可能性があるのだが、襲撃場所が貴族の家と聞いた瞬間にロイは気持ちが楽になっていたのも事実だ。
今回の騒動は間違いなくこの国の今の状態を如実に表しているので王侯貴族特有の争いが起きている査証とも言える為に自業自得の部分があると考えており、被害場所が第三者のいる学校や一般人ではなかった時点で正直に言えば興味が無くなっていた。
二度目の襲撃が学校ではない保証はどこにもないとは考えが回らないのだが、現実的にそのような事は起こらない。
なぜならば・・・襲撃を行ったのはロイが乗っている船を操作された状態で襲った海洋生物であり、報復する様にハートクィーンに言われた通りに僅かな魔力の痕跡を辿って攻撃を行っていた。
陸に上がれないので遠距離攻撃になるのだが、その際にハートクィーンから第三者への攻撃は厳禁と釘を刺されていた為に、仮に今後改めて復讐を行う際にも余計な二次被害は起きないだろう。
その貴族は第一王子を推している唯一の貴族であり船長でもあるハルバン伯爵を消そうと一家揃って画策して実行したのだが、いつの間にか襲撃を受けた上に無傷の船とハルバンを確認していた。
このおかげで第二王子派では第一王子派には奥の手がると勝手に思われた為に、今は束の間とも言える平穏が訪れている。
仮に第一王子が国家として非常に重要な錬金関連の能力が高かったとしても、周囲から傀儡にし易いと敢えて持ち上げられて自尊心の塊になっている第二王子が大人しくしている訳も無いのだが、結果的に第一王子は魔力だけが高い無能であると認識された瞬間に第二王子派が一気に台頭しているのが現状だ。
第一王子に加えて第二王子も通う学校にロイが向かうのは、クラスは未定だが二日後だ。




