表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴走能力を持つ主の苦悩  作者: 焼納豆
278/335

(277)異大陸へ⑤

 船内を先導されながら歩いているロイは、周囲の人々がやけに鍛えられているなと感じている。


 長距離の船乗りは体力が必要になる上、航路上でのあらゆるトラブルに対処できなくてはならないので暇さえ合えば自分自身を多角的に鍛えている。


「先ずはロイ殿の部屋に案内するが、その部屋を起点として生活に必要な場所を案内しよう。船と言っても広いから一回では覚えられないかもしれないな」


 言われている通りに相当大きな船なので迷う事もあるかもしれないと思っているが、複雑な経路・・・迷路のようになっていない所だけは助かったと思っているロイ。


「ロイ殿の部屋はここになる」


 何度か階段を上がって到着した部屋に入ると、想像よりもはるかに広く窓からの眺めも良い事に驚く。


「こ、こんなに素晴らしい部屋で良いのですか?」


「あぁ。遠慮なく使ってくれるとありがたい」


 一瞬異大陸での政治的な争いに巻き込まれる可能性が頭をよぎったのだが、出向前にアレコレ考えていても仕方がないと切り替えている。


「荷物は置いてくれても構わない。継続して生活に必要な各所を回っても良いか?」


「お願いします!」


 最終的に一度で覚えられなくとも、足元にいるスペードキングであれば間違いなくこの部屋に戻って来られるので焦る事はない。


 食堂、浴場、体を動かせる大きな部屋、最後に船長の部屋に案内されるロイ。


「ここが船長の部屋になる」


 徐に開けて中に入って行くのでオズオズと後ろをついて行くと、今まで案内してくれていた男性は笑顔で振り向き手を差し伸べる。


「私が船長のハルバンだ。数週間・・・海の状態によって前後はするが結構な長旅になる。よろしく頼む、ロイ殿!」


 適当にその場に見える中で指示をしている立場の男性に声をかけたのだが何と船長だったようで少し驚いているロイと、その姿を見て悪戯が成功したかのように笑顔になっているハルバン。


「こちらこそ、宜しくお願いします!」


 今のところは順調な滑り出しだが、国家として騒動が有ると分かっている場所にカードの者達と共に向かうのだから何も起こらないわけがない。


 最近はロイの体調に意識が向いているおかげで暴走が収まっているせいか、ロイも相当油断して普通に初めての船旅を楽しめると心躍らせている。


 その後は自由にして良いと言われて船内を歩いているロイは、下に行けば行くほど騒音やら振動やらが大きい事に気が付いた。


「そっか。エンジンがあるからこうなるのか」


 何気なく漏らした一言だが、ロイ自身も何故このような知識があるのか分からずに不思議そうにしながら改めて自室に戻る。


 すると船内全体に船長の声が聞こえた。


「間もなく出航する。今の時点では特段荒れる様な事はなさそうだが、海は毎日表情を変える。全員油断なく、経験を活かしてしっかりと活動する様に!」


 この声が聞こえたロイは直に窓際に移動し、今か今かと船が動くのを待っている。


「あっ!動いた!!」


 興奮冷めやらぬロイに対して、足元のスペードキングがそっと情報を流す。


「我が主。我が主から見て右手の方向にバミュータ殿とシルハ殿が来ております」


「え?どこ?来なくていいって言ったのに・・・正直嬉しいけどさ?」


 昨晩別れを告げていた二人が夫々店主と辺境伯の関係者からの相談を受けている最中にロイについて問われ正直に話したところ、仕事は後で良いので直ぐに見送りに行って良いと追い出されてこの場に急いで来ていた。


 何かを叫んでいるように見えるが遮音性が高い部屋にいるのか何も聞こえないが、スペードキングの力でしっかりと内容は伝わっている。


「本当に・・・あの二人にも幸せになって欲しいよね?」


 全てがロイに感謝する言葉、そして今後の幸せを願う言葉と激励の言葉だったので、ハイス子爵家以外の人・・・それもバミュータに至っては血の繋がりがある兄弟から温かい言葉をかけられて少しだけ涙ぐんでしまう。


「良し!嬉しい見送りもあったし、未来は明るいぞ!!」


 こうして船は徐々にスピードを上げて行き、やがて祖国であるソシケ王国がある大陸が米粒のように見えている。


「別の方向の景色も見てみたいかな?」


 部屋から出て階段を上り、やがて甲板に到着する。


「絶景だ!風も気持ち良いし、最高だ!いつかは姉ちゃん(リーン)にもこの景色を見せてあげたいな」


 穏やかな船旅だからこそ言えるセリフであると気が付くのはもう直ぐなのだが、今のところは本当に気持ちの良い場所だと思いながら周囲を見回している。


 米粒の様な大陸以外には海しか見えないが、時折魚が飛び跳ねているのが見えてこれだけで少し興奮している。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ