不穏な招待
今どき手書きの手紙なんてそうそう受け取ることはない。誰からだろう。
良くないものだったらどうしようと、震えながらポストを開ける。なんの変哲もない白い封筒を手に取って来縁は息を呑んだ。
裏に書いてある宛名は──。
「っ……!? 柊花村!?」
最近よく聞く、村の名前が住所として書かれていた。
「でもなんで……。柊花村には知り合いなんていないはずなのに……」
縁もゆかりも無いはずの場所からの手紙が届く。それなのに、宛先はちゃんと森来縁様と書いてある。
誰から知れない相手から、自分の名前、住所が知られている事実に体が震えた。思わず手に力が入って、手紙がくしゃりと音を立てた。
「それに誰……ニ継 矢切?」
聞き馴染みのない名前が、差出人として書かれていた。何度も自分の友達関係かと思ったが、そんな人いない。
それがさらに来縁を混乱させて、心臓が嫌な音を立てる。
「………………」
しばらく手紙を手に持ったまま、立ち尽くしていた。
でも、そのままでは埒が明かない。意を決して、封を切ると中には一枚の便箋と、地図が入っていた。
「拝啓、突然のお手紙をお許しください……」
その書き出しで始まった手紙には、とてもきれいな字で流れるような文章が綴られていた。
「私は柊花村の長を務めております、ニ継矢切と申します。この度は、来縁様に折り言ってご相談があり筆を執った次第です……って、私に相談?」
長、とはかなり地位が高い人からの手紙だ。
けれどそんな人から手紙をもらう身に覚えがない。
来縁は益々分からなくなって、読むのをためらった。
恐る恐る、来縁は続きを追いかける。
「ご存じないかもしれませんが、来縁様は我が本家の佐櫂にとって重要なお方です。出来ればすぐにでも、柊花村へお越しいただけませんでしょうか……えっ…………」
それは招待状だった。見ず知らずの人から、名前も最近知った村への誘い。
それなのにすぐに来てほしい、と言われても戸惑いしかなかった。
胡散臭さも感じる。このまま放置するのが最善手かもしれない。
本来、そうするべきだ。危険に自ら飛び込まないほうがいい。
けれど、最後の一文に来縁の目が止まった。
「来縁様のお母様、お父様について知りたくはありませんか?」




